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【特集】ソサエティ5.0の“秘密兵器”、「3Dプリンター」関連株に再脚光 <株探トップ特集>

IoTや人工知能(AI)などの先端技術で課題解決を図る「ソサエティ5.0」。高度な生産システム実現に際し、その一翼を担う「3Dプリンター」にマーケットの注目が集まり始めた。

―金属3Dプリンターの注目度上昇中、市場急成長でチャンスを捉える銘柄群―

 IoT人工知能(AI)といった先端技術を活用し、あらゆる課題の解決を目指す「Society5.0(ソサエティ5.0)」。安倍政権が掲げる成長戦略の重要なキーワードとなっており、この超スマート社会ではデジタル化によって高度な生産システムが実現することになる。その一翼を担うのが、開発工程のスピードアップにつながる3Dプリンター だ。一時期と比べてブームが落ち着いたようにもみえるが、最近では製品の試作以外でも用途が広がっていることから、今後の更なる成長が期待されている。

●医療向けなど用途拡大が需要を牽引

 3Dプリンターとは、3D-CAD(3次元コンピューター支援設計)などで作成された3次元データをもとに、スライスされた2次元の層を1枚ずつ積み重ねていくことによって、立体物を成形する機器のこと。複雑な形状を造形できるほか、少量生産・オーダーメイドに対応できるといった特長があり、高出力のレーザー光線を直接粉末状の材料に照射して焼結させる「粉末焼結積層造形方式(SLS)」や、液状の樹脂を紫外線で少しずつ硬化させる「光造形方式(SLA)」、熱で溶かした樹脂を積み重ねる「熱溶解積層方式(FDM)」など、さまざまな方式のプリンターがある。

 低価格機の登場などで一大ブームとなった2013~14年頃と比べてメディアに取り上げられる機会こそ少なくなったが、3Dプリンターは着実に社会に浸透してきており、産業技術総合研究所が壊れにくく患者に適した入れ歯を短時間で製造する技術を開発したり、アディダスジャパン(東京都港区)が3Dプリンターで製造したソールを搭載したシューズを発売したりといった事例が相次いでいる。

●ミマキエンジはMITの事業共同体に参加

 こうしたなか、FUJI <6134> は今年1月、誰でも簡単に電子機器を造ることができる装置「FPM-Trinity」を開発中であることを明らかにした。樹脂の造形や電子回路の印刷、部品実装を1台で行うことができ、あらゆるモノがネットにつながるIoTで使われる電子デバイスの製造などでの利用を想定している。

 このほか、1月にはMUTOHホールディングス <7999> 傘下の武藤工業が、エンジニアプラスチック(エンプラ)対応FDM方式の最上位機種「MF-2500EP2」を発売した。高温対応した新型ヘッドは300℃まで設定可能で、機械部品や電子機器の基幹部品として利用されるエンプラの溶解温度とされる250~300℃に対応。初年度の販売目標は年間100台を掲げている。

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)が立ち上げた事業共同体「ADAPT」に、創立メンバーとして参加しているミマキエンジニアリング <6638> に今後スポットが当たる可能性もありそうだ。「ADAPT」では同社製の3DプリンターがMIT内に設置され、AM(積層方式の3Dプリンターなど、材料を付加しながら造形する製法)技術とデジタル生産を融合した次世代製造技術の研究が行われるという。また、同社はフルカラー3Dプリンター「3DUJ-553」の販売強化を目的に、3Dプリンター出力事業を手掛けるJMC <5704> [東証M]と業務提携しており、両社の動向からも目が離せない。

●DMG森精機、ソディックなどにも注目

 3Dプリンターの材料は、樹脂やゴム、セラミックス、金属など多岐にわたり、それらを使う機器もさまざまな種類があるが、なかでも注目度が高いのが金属粉末をレーザーで溶融する金属3Dプリンターだ。現時点では材料コストや造形時間に課題があるものの、従来の機械加工や鋳造では困難な形状を造形することができ、部品の大幅な小型化につながることなどが注目点。更に、この技術は少量多品種生産に適しており、超スマート社会での“各種ニーズにきめ細かに対応し、あらゆる人が質の高いサービスを受けることができる”新たなモノづくりシステムの構築に寄与するとみられ、関心を集める要因となっている。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2月に公表したレポートによると、30年の市場規模は金属3Dプリンター本体が6500億円(17年比5.3倍)、金属粉末材料は5000~6500億円、出力した造形品は2兆円に膨らむと予想。造形品の業種ごとの市場規模は、金型・工具が8050億円、医療が5600億円、メタマテリアルが4000億円、航空宇宙が1100億円、ロボットが1000億円、オートモーティブが600億円と試算されている。

 主なプレーヤーは、装置技術ではDMG森精機 <6141> 、ソディック <6143> 、富士通 <6702> グループの富士通アイソテック、リコー <7752> など。三菱電機 <6503> は18年10月に従来よりも高い精度で金属を造形できる装置を開発し、20年度の製品化を目指しているほか、住友商事 <8053> は18年9月に金属プリンター技術を持つ米シンタヴィアに出資した。

 金属粉末材料は、神戸製鋼所 <5406> 、大同特殊鋼 <5471> 、山陽特殊製鋼 <5481> 、日立金属 <5486> 、三菱製鋼 <5632> 、日本軽金属ホールディングス <5703> 子会社の東洋アルミニウム、三井金属鉱業 <5706> 、DOWAホールディングス <5714> 傘下のDOWAエレクトロニクス、大阪チタニウムテクノロジーズ <5726> などが手掛けている。

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