【特集】“一億総活躍”へ、「障害者雇用支援ビジネス」で浮上するのはこの株 <株探トップ特集>
障害者雇用に関連する銘柄に再び関心が高まりそうだ。民間企業に高い需要があるほか、障害者雇用の水増し問題に揺れた省庁なども雇用拡大に動き始めており、関連銘柄の収益機会の拡大が予想されている。
―水増し問題に揺れた省庁向けや民間企業向けで商機、欧米にキャッチアップ図る日本―
昨夏以降、中央省庁や地方自治体などで、障害者雇用の水増し問題が相次いで発覚した。昨年8月末の時点で中央省庁での水増しは内閣府や総務省、国土交通省など全体の約8割に当たる27の機関で発覚し、雇用率は公表していた2.49%から1.19%に減少した。
これを受けて、株式市場では障害者雇用に関連する銘柄に注目が集まったが、現在では時間の経過とともに関心はやや薄まっている。ただ、民間企業の障害者雇用は拡大を続けており、今後もこの傾向は続く見通し。中央省庁・自治体も今回の問題発覚を受けて雇用拡大に動き始めており、関連銘柄のビジネスチャンスは拡大しよう。
●省庁の水増しにペナルティーの動き
障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)では、民間企業や国、地方公共団体に一定割合の障害者を雇うよう義務づけている。これを法定雇用率といい、現在の民間企業の法定雇用率は2018年4月に5年ぶりに引き上げられ2.2%。一方、国は障害者の雇用促進を促す立場にあることから、法定雇用率は2.5%となっている。「平成30年版 障害者白書」では、国の行政機関で働く障害者の数を17年6月1日現在で約6900人(雇用率2.49%)として、当時の法定雇用率(2.3%)を達成したとしていた。
企業の場合、法定雇用率を下回ると、不足数1人当たり月額5万円の納付金が求められるが、行政機関にはこれまでこうしたペナルティーがなかった。そこで厚生労働省は、法定雇用率を達成できていない省庁に対して、備品購入などに当てる庁費を減額する案を検討しているとされ、今後、法運用の厳格化が進むとみられている。
●障害者の法定雇用率引き上げへ
一方、民間企業では、障害者の雇用が拡大している。「障害者白書」によると、企業における障害者の雇用状況は、17年6月1日時点で約49万5800人、雇用率は1.97%になり、当時の法定雇用率2.0%にほぼ沿った形となった。16年6月1日時点の約47万4400人(雇用率1.92%)に比べて2万人以上も雇用が増えたことになり、14年連続で過去最高を更新している。
法定雇用率は21年4月までに、国・民間とも更に0.1%引き上げられる予定で、雇用障害者数は今後も拡大傾向が続くとみられている。この分野で日本は欧米先進国に比べてはるかに遅れているといわれていることから、雇用率の改善は急務といえよう。
特に、17年の雇用率を企業規模別にみると、50~100人未満で1.60%、100~300人未満で1.81%、300~500人未満で1.82%、500~1000人未満で1.97%、1000人以上で2.16%と規模が大きくなるにつれ雇用率が高くなる傾向がある。その分、規模の小さい企業は今後、雇用が進むとみられるが、人材確保のノウハウに乏しいところも少なくはなく、障害者雇用をサポートする企業の活躍余地につながっている。
●人材派遣大手はグループ会社で障害者派遣を展開
障害者雇用の関連銘柄としては、大手のリクルートホールディングス <6098> 、パソナグループ <2168> 、パーソルホールディングス <2181> をはじめ人材サービス各社が障害者雇用を専門に扱う会社を有しているケースが多く、これらが関連銘柄に挙げられる。なかでパソナは特例子会社パソナハートフルで、アートによる障害者の自立支援を目的に「アート村工房」を開設したほか、農業を通した人材の育成や野菜の販売を行う「ゆめファーム」などの事業を展開。あわせて企業に対して障害者の人材紹介やコンサルティングなどを提供している点が注目される。
また、 人材派遣中堅のウィルグループ <6089> もグループ会社のセントメディアで障害者の雇用促進サービスを展開している。同サービス「ぽじチャレ」には派遣登録者データベースからの抽出や、教育機関、障害者専門団体からの紹介などの集客手段により月間約1万人のアクティブユーザーが存在し、高い供給力を有しているのが強みだ。
●代表格のLITALICO、ウェルビーに注目
障害者雇用関連の代表格でもあるLITALICO <6187> は、障害者就労支援サービスとして「LITALICOワークス」を18年12月末時点で72拠点展開。19年3月期第3四半期累計決算では同事業は前年同期比17%増と高い伸びをみせた。会社側では19年3月期通期営業利益8億1600万円を見込むが、第3四半期累計営業利益は9億3700万円と通期予想を超過しており、上振れの可能性が高い。
また同社は、新規事業開発にも積極的であり、IT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」や発達障害ポータルサイト「LITALICO発達ナビ」なども展開。今年2月には障害福祉分野に特化した就職・転職活動を支援する新事業「LITALICOキャリア」サービスを開始したことも注目される。
ウェルビー <6556> [東証M]も同様に代表格的銘柄だ。同社は、就労希望障害者への職業訓練や求職活動支援、職場定着支援を行う就労移行支援事業として、就労移行支援事業所65センター、就労定着支援事業所44センターを展開(18年12月末時点)。業界でもいち早く就労定着支援に取り組んでおり、これが奏功して19年3月期第3四半期累計決算で同事業は前年同期比24%増と高い伸びをみせた。
会社側では19年3月期通期営業利益を12億9500万円(前期比28%増)と予想しているが、第3四半期累計時点で進捗率は92%に達している。追加出店に伴うコスト増を見込んでいるとしているが、上振れ期待は強い。
エスプール <2471> [東証2]は、障害者の就職支援のほかに、障害者専用の企業向け貸し農園の運営などを手掛けているのが特徴だ。障害者雇用を希望する企業に農園の区画を貸し出し、設備販売と障害者紹介などによる売り上げや管理収入を得る事業で、企業は障害者を直接雇用することで法定雇用率の達成を図ることができる。
また、知的・精神障害者の雇用支援を得意としていることも強みとされている。同社の障害者雇用支援サービスは、18年11月期までに売上高が4年で5.4 倍になったが、今期も前期比27%増を計画。19年11月期営業利益12億6000万円(同28%増)を見込んでいる。
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