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【特集】黄金の3年間突入で株価も“かっ飛ばしモード”の「スポーツ関連株」 <株探トップ特集>

今年9月のラグビーW杯を皮切りに日本は「ゴールデン・スポーツイヤーズ」に突入する。株式市場でも要注目のビッグイベントが続くなか、スポーツ関連は思惑高の宝庫に!?

―ラグビーW杯、東京五輪、ワールドマスターズとビッグイベント3連チャン! 狙いの銘柄は?―

 日本は、9月から開催されるラグビーワールドカップ日本大会を皮切りに「ゴールデン・スポーツイヤーズ」に突入する。いまひとつ馴染みのない言葉だが、前述した今年のラグビーW杯、2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」、そして21年の「ワールドマスターズゲームズ2021関西」といった3年連続で行われるスポーツのビッグイベントを指す。東京五輪ばかりに目が向きがちだが、そのほか2つの大会も世界的に知名度が高く、大きな経済効果も期待されている。当然のことながら、株式市場でもスポーツ関連株に関心が集まるところだ。加えて伊藤忠商事 <8001> によるTOBに「反対」意見を表明したデサント <8114> など業界を巡る話題は尽きない。関連株の現状と今後の行方を追った。

●「絶好のチャンス」とも……

 この3年間、日本列島はゴールデン・スポーツイヤーズと称されるビッグイベントに染まることになる。13年9月に東京五輪誘致に成功、日本経済は20年開催の東京五輪に導かれるように経済回復の一途をたどった。まさに、それは”失われた20年”と揶揄された長期低迷経済からの脱却の道程でもあった。ただ、スポーツのビッグイベントは五輪だけではない。ラグビーW杯は五輪、サッカーW杯に次ぐ世界3大スポーツイベントのひとつ。また、ワールドマスターズゲームズは、日本においては知名度こそまだ低いが、今回の大会では競技参加者数だけで5万人を目標に掲げる(国内3万人、国外からは2万人)生涯スポーツの国際総合競技大会だ。

 こうしたなか、スポーツ用品銘柄の決算が出そろったが、その内容はビッグイベントを前にしても、冴えないものだった。グローバル経済の不透明感、国内では少子化による競技人口の減少などによる影響がスポーツ用品業界に暗雲を漂わせる結果となった。ただ、足もとの業績内容だけに株価は左右されるものではない。ある準大手証券ストラテジストは「スポーツ関連の衣料や靴の需要というと、日本では地味なマーケットのようにも思われるが、そんなことはなく、米国などではスポーツ関連の利権がケタ違いに大きい。安倍政権もそれに倣ってスポーツ関連の産業を大きくしたいという意識を強く持っているはずだ。表向きには健康増進や医療費削減などのテーマとも相性が良い。そうしたなか、19年から21年にかけての3年間『ゴールデン・スポーツイヤーズ』は絶好のチャンスにも見える。スポーツ振興とそれに伴う消費の喚起は、日本国民だけでなく、当然インバウンド需要もターゲットとなる。業界もこの3年間を盛り上げる方向で宣伝戦略を駆使することは必至だ」と指摘する。

●ゴールドウインは業績好調、ラグビーW杯でも出番!

 業績を悪化させる企業が目立つなか、ゴールドウイン <8111> は8日の取引終了後、19年3月期の連結業績予想について、売上高を800億円から830億円(前期比17.9%増)へ、営業利益を91億円から112億円(同57.7%増)へ、純利益を63億円から82億円(同58.5%増)へ上方修正し株式市場での注目が急速に集まった。アウトドア関連ブランドの販売が予想を大きく上回っていることが要因という。株価は急騰し、1万円近辺から一気に1万3000円台に突入したが、さすがにきょうは上昇一服の状況にある。

 このゴールドウインだが、実はグループ会社の「カンタベリーオブニュージーランドジャパン」がラグビーW杯2019で協賛企業になっている。カンタベリーはニュージーランド生まれの世界的なラグビーブランドを展開、02年から日本代表チームのユニフォームを提供している。同社では「ラグビーでもサッカー同様に観客がナショナルユニフォームを着て応援する文化が根付いてきている。今年のW杯でも代表ユニフォームは刷新され、応援のためのレプリカ需要が期待できる」(コーポレートコミュニケーション室)。ラグビーW杯は9月20日から11月2日まで開催され、組織委員会ではスタジアムでの観戦者は最大180万人、訪日観光客は40万人に達する可能性があるとしている。日本戦だけでも多くの日本人観客の動員が予想されるだけに、まさに”特需”との期待も高まる。また、ロゴなどを使用しスポーツウェアを販売する権利も有しており「短期間で、大きい需要が見込まれると考えている」(同)と期待を寄せる。

●アシックス、厳しい業績も”五輪の主役”

 ゴールドウインと明暗を分ける形となったのがアシックス <7936> だ。同社は13日の取引終了後、18年12月期連結決算が、営業利益が前の期比46.3%減の105億1500万円、最終損益203億2700万円の赤字(前の期129億7000万円の黒字)と最終赤字に転落したことを発表。国内でスポーツウェアの収益性の低い商品群を縮小したことや米国の販売不振に加えて、直営店の出店拡大に伴う費用の増加や為替差損の計上、不採算店や海外子会社ののれんの減損損失などを計上したことが響いた。同時に発表した19年12月期予想は、売上高3900億円(前期比0.9%増)、営業利益120億円(同14.1%増)、最終利益50億円(前期203億2700万円の赤字)を見込む。この決算を受けて株価は急落したが、ここからの株価動向には注視が必要だ。同社は東京五輪のスポーツ用品カテゴリーで唯一のゴールドパートナーで、まさにスポーツ用品業界での”五輪の主役”。開催が近づくなか思惑買いを誘う可能性もある。

●TOBの行方に注目集まるデサント

 スポーツ用品業界を巡っては、伊藤忠商事のTOBを“蹴った”かたちのデサントの行方にも関心が集まっている。デサントは7日、伊藤忠商事の完全子会社であるBSインベストメントからのTOBに対して「反対」意見を表明。伊藤忠は先月31日、デサントに対する保有株比率を40%(現在30.4%)に引き上げることを目的にTOBを行うことを発表。TOB価格は2800円で、買い付け株数の上限721万株(下限設定はなし)とし、1月31日から3月14日まで買い付けている。「敵対的TOB」となることが鮮明となり、市場では今後のデサントの対抗措置などが注目されている。

 これについて、前出のストラテジストは、さまざまな背景はあるものの「ここからビッグイベントが続く3年間を、伊藤忠が“書き入れ時”とみているからこそ、デサントの企業価値を放置できなかった、という見方もできる」という。株価は、TOB価格にさや寄せするかたちで、1800円近辺から2月1日は一気に2771円まで買われ、現在は2500円近辺で推移している。

●ヨネックス、“大坂効果”はこれから

 “大坂なおみ効果”でさぞや好調かと思ったヨネックス <7906> [東証2]だが、7日に19年3月期の連結経常利益を従来予想の30億円から19億円に下方修正し、一転して減益見通しとなったと発表した。中国のバドミントン用品において在庫調整の影響が残ること、中国経済の減速懸念による先行き不透明な状況、少子化などの影響によるソフトテニス用品の減収が大きく、計画を下回る見込みだという。株価は12月25日の安値539円を底にジワリ切り返す。同社とスポンサー契約を結んでいる大坂なおみ選手が1月27日に全豪オープンテニスで優勝したことを受け翌日の28日には株価は急伸し51円高の780円まで買われる場面もあったが大引けは結局マイナスで引けた。現在は600円台中盤で推移している。

 同社では「期初に見込んだような大幅な回復には至らなかったが、回復基調にはある。広告宣伝費と販管費など絞り過ぎずに来期以降に向けて投入した。着々と施策は進めている」(IR部)という。また「大坂選手が優勝した全豪オープンでは、彼女以外にも契約選手が非常に活躍している。バドミントンは、1月に韓国のナショナルチームとも契約しており、テニスに限らず来期以降の布石を打っている」(同)と意欲を見せる。全豪オープンでは、チームヨネックスが15種目中8冠を達成し、全優勝者のラケット、ストリングの使用率がそれぞれナンバーワンを達成している。種まきから次の展開へ、”なおみ効果”と”次の布石”の影響はこれから発現されることになりそうだ。

●ミズノはワールドマスターズゲームズ

 ミズノ <8022> の業績も冴えない。8日大引け後に発表した19年3月期第3四半期累計の連結経常利益は前年同期比21.1%減の41億3600万円に減った。併せて、通期の同利益を従来予想の90億円から70億円に下方修正し、一転して13.6%減益見通しとなった。グローバルでのランニングシューズ市場の縮小や中国事業の不振、また国内において暖冬により秋冬物ウェアの販売が伸び悩んでいることが要因。ちなみに、同社は「ワールドマスターズゲームズ2021関西」でスポーツメーカーとしては唯一のメジャーパートナー契約を結んでいる。いまのところ日本において、けっして知名度の高い大会とはいえないが、東京五輪終了後に25年の大阪万博開催を前にして熱気あふれる関西圏でスポットライトを浴びることになりそうだ。ワールドマスターズゲームズは、4年に一度開催され、おおむね30歳以上のスポーツ愛好者であれば誰もが参加できる。第10回大会となる「2021年関西」はアジアで初めての開催となる。

●忘れちゃならないゼット

 こうしたスポーツ関連株の低迷を横目に、野球用品で知られるゼット <8135> [東証2]の業績は好調だ。12日大引け後に発表した、19年3月期第3四半期累計の連結経常利益は、前年同期比33.3%増の4億4800万円に拡大し、通期計画の6億円に対する進捗率は74.7%と順調だった。株価は薄商いのなか200円近辺でもみ合うが、スポーツ界のビッグイベントが続くなか再評価機運が高まる可能性もある。

 スポーツのビッグイベントで盛り上がる3年間、国内外から多くの選手・観客が集まるだけに経済効果も期待され、日本列島を覆う景気沈滞ムードを吹き飛ばしてくれそうだ。さあゴールデン・スポーツイヤーズ、まずは9月のラグビーW杯開催でスタートすることになる。

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