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【市況】植草一秀の「金融変動水先案内」

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

第5回 株価反発に一巡感

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

●年初までの株価下落背景

 昨年10月初から本年初にかけて内外株価は急激な下落を示しました。日米株価は20%内外の急落を演じました。株価下落の背景を筆者は、(1)米中貿易戦争、(2)米国金融引き締め、(3)日本増税政策であると指摘してきました。中国の 上海総合指数は昨年1月29日の3587ポイントを起点に1年間にわたって下落し続けました。本年1月4日に記録した安値が2440ポイントで32.0%の下落を記録したのです。

 日米株価は昨年1月末以降調整局面を迎えましたが、昨年10月に1月高値を更新しました。昨年1月末以降の株価調整はNY株価上昇の速度が速くなりすぎたことの反動で、FRBの議長交代に伴う不透明感の浮上が大きな背景になりました。FRBのパウエル新議長の政策運営を見定める必要が生じたわけですが、パウエル議長は市場の懸念を覆すようにタカ派色の強い政策運営を実行しました。その政策が9月利上げで一巡して日米株価が10月初に新高値を更新したと言えます。

 事態の変化をもたらすきっかけを与えたのは中国市場でした。国慶節での休日明けに中国人民銀行が預金準備率を引き下げたことを契機に上海指数が急落。預金準備率引き下げが中国経済の先行き警戒感を強める結果を招いたのだと考えられます。これを背景に NYダウの急落が始動したのです。上海指数は2016年1月安値の2638ポイントを下回りました。

 その後、年末にかけてFRBの金融引き締めが2020年まで維持されるとのFRB方針が示され、米中貿易戦争も悪化の一途を辿るとの見通しが強まり、グローバルな株価下落が進行しました。

●流れを変えたパウエル発言

 日本では10月15日に安倍首相が2019年10月の消費税率10%への引き上げを具体的に指示しました。消費税率が10%に引き上げられれば、日本の個人消費は激烈な冷え込みを示すことになると思われます。日本経済の先行き見通しに対する不安心理も増幅されることになりました。

 このなかで1月4日に発表された米12月雇用統計は雇用者増加数が30万人を超え(2月統計で22.2万人に下方修正)、FRB利上げ継続を後押しする状況が生じました。内外株価の一段の下落リスクが高まる局面でした。

 この局面でパウエルFRB議長が動きました。アトランタでの経済学会で発言し、金融引き締め政策を軌道修正することを示唆したのです。パウエル発言の効果は絶大でグローバルに株価変動が方向を転換したのです。上海総合指数も1月4日に転換点を形成しました。見落とせないことは、これと連動して米中貿易戦争の方向感が変化したことです。

 米国は中国の対米輸出2000億ドルに対する25%の制裁関税率を2019年1月から適用する方針を示してきましたが、12月初の米中首脳会談でこれを90日間先送りすることを表明しました。その後、中国ハイテク企業ファーウェイ幹部の逮捕などで米中間の緊張が高まりましたが、年明け後は米中間の通商交渉が大きく進展し、問題が軟着陸する可能性が浮上し始めたのです。これらの要因が相まって、グローバルに株価が反転する方向感が見え始めています。

●中国株価に反転の兆し

 NYダウは1月4日以降、急反発して2月13日には2万5625ドルの水準にまで到達しました。12月26日までの下落幅5239ドルの3分の2戻りを達成しました。 日経平均株価は2月14日に2万1235円に到達。12月26日までの下落幅5500円の半値戻り水準である2万1698円にかなり接近しました。

 2月4日発表の1月米雇用統計で雇用者増加数が30.4万人になりましたが12月統計が下方修正されたこと、1月30日 FOMC声明が利上げ政策の中断を示唆するものになったため、新たな不安心理が広がることが回避されました。

 中国では2月1日の財新(Caixin)発表の1月製造業PMIが48.3ポイントに下落しました。2ヵ月連続の50ポイント割れで3年ぶりの低水準を記録しました。また、欧州委員会は2月7日、2019年の域内経済成長率見通しを従来予想の+1.9%から+1.3%に下方修正するとともに、英国EU離脱と中国景気減速が欧州域内経済成長見通しをさらに悪化させることを警告しました。

 世界経済の先行きに対する警戒感が高まりつつあるのですが、興味深いことは、このなかで上海総合指数が反転の兆しを示し始めたことです。上海総合指数は2月11日に節目の2638ポイントを突破して、2月14日には2729ポイントにまで値を戻しました。

 中国経済の先行きに対する警戒感は強まっているのですが、中国政策当局が財政金融両面からの景気支援政策を本格化させているとともに、米中協議軟着陸に対する期待が強まっていることが背景にあると考えられます。

●3月末にかけて重要日程目白押し

 とはいえ、NYダウが3分の2戻りを達成し、日経平均株価が半値戻りに接近したことで、年初来の株価反発に一巡感が広がり始めているように見えます。これから3月下旬にかけて年度末という要因も加わります。目先は株価の気迷い気分が強まる可能性に警戒が必要であると思われます。

 米国では国境の壁創設をめぐる大統領と議会の調整が進展しましたが、新たにトランプ大統領が非常事態宣言を発する可能性が生じ、議会とトランプ大統領の関係再悪化が警戒されます。議会では下院過半数を民主党が奪還しており、とりわけ下院がトランプ大統領のロシア疑惑等に関する追及を強めることも予想されています。

 2月末にベトナム・ハノイで米朝首脳会談が行われ、その後に米中首脳会談が開催される可能性も浮上しています。米朝協議が進展すること、米中通商協議が決着することは株価上昇要因になると考えられますが、結果が判明するまでには、なお紆余曲折が予想されています。

 英国ではEU離脱に関するメイ首相の提案を議会が否決し、合意なき離脱というハードランディングに対する警戒が強まりつつあります。日本の2019年10月消費税増税に関する最終判断は3月中旬がタイムリミットで、安倍内閣がどう動くのかに関心が集まります。

 米国金融政策運営に大きな影響を与える次の雇用統計発表は3月8日になりますが、この統計注視も求められます。すべての組み合わせが問題解決、経済浮上推進に傾けば内外株価が反発地合いを継続する可能性があり、この点に留意が必要ですが、当面は重要日程が目白押しになるなかで気迷い気分の強い相場変動が持続する可能性が高いと思われます。

(2019年2月15日/次回は3月2日配信予定)

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