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【特集】自社株買い銘柄は、「後出しジャンケン」でもOK?
大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第10回
これについて、まずは自社株買いを実施した銘柄について、自社株買い発表日の前後の株価の推移を見たいと思います。下のグラフは、
・国内上場銘柄の中から
・過去3年間に発行済み株式数の3%を超える自社株買いを発表した667銘柄について、
・発表日の5営業日前から60営業日後までの株価リターンを平均したものです。
リターンは、TOPIXの相対(市場超過リターン)で計測しています。
当然ながら、自社株買いの発表日と翌営業日のパフォーマンスが最も強烈です。これは、買い取った分だけ物理的に需給がタイト化するので当然です。問題は、自社株買いを発表した後の株価の推移です。
驚くべきことに、発表後も緩やかに上昇の軌道を描いていることが分かります。素直に解釈すれば、自社株買いの発表を確認してから後出しで投資をしても、リターンを獲得できる可能性があることになります。
これが事実ならば、これほど簡単な投資法はありません。自社株買いの発表は、東証の適時開示や各種金融メディアに公表されますので、それを事後的、機械的に買うだけでよいことになります。
発表後でも期待できるのは中小型
しかし、実はこれには落とし穴があります。自社株買いの発表銘柄であれば何でもよいわけではなく、もうひとステップだけ必要です。時価総額(流動性でも可)の大小によるスクリーニングです。
以下のグラフは、前述の自社株買い発表日前後のパフォーマンスについて、集計対象を時価総額1000億円以上と未満の銘柄群で分けたものになります。
両者で明確な傾向の差異を見て取れます。時価総額が1000億円以上の銘柄群は、自社株買いの発表後は目立った傾向はなく、ほぼ横ばいの状態が継続しています。一方で、1000億円未満の銘柄群は、自社株買いの発表後も安定して上昇基調を描きます。
つまり、時価総額が1000億円を下回るような中小型銘柄であれば、自社株買いの残存効果を取れる可能性が高いといえます。そして、この残存効果発生の有無の背景も、シンプルで納得感があります。
一般に、大型株は流動性が高く、自社株買いをしても物理的に計算可能な押し上げ分が瞬時に織り込まれるだけで、実際の購入時にインパクトが発生することは稀です。また、マクロ、アクティブ、イベントドリブンといった世界中のあらゆるスタイルの巨額な資金が入り混じり、需給要因が株価に大きな影響を与えにくい面もあります。
一方、中小型銘柄は事情が異なります。発表直後の動きは大型と同じですが、その後に実際に企業が自社株買いを実施する際に、特に流動性の低い銘柄は需給インパクトが発生します。
自社株買いは、一度で一気にすべてを買い切るわけではなく、混乱を与えないよう期間中に分散して執行されるため、中長期的な株価の押し上げ要因として作用します。また、投資スタイルが複雑な大手の機関投資家は中小型株には手を出しにくい上、大型株と比較すると内需主体でマクロ環境の変化に左右されにくいため、需給の影響が株価に色濃く反映されます。
こうした背景から、中小型株の自社株買いは、発表後もそのポジティブな影響が継続しやすいのです。
後出しOKな銘柄候補は?
冒頭述べたように、世界の景気及び株式市場は不安定な動きが継続しています。このような環境下では、「後出しOKな中小型株自社株買い投資」という低リスクかつ安定リターンを得られる戦術の存在意義が際立ちます。
最後に、参考までに2019年初に自社株買いを発表した中小型株の銘柄リストを添付しておきます。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
これについて、まずは自社株買いを実施した銘柄について、自社株買い発表日の前後の株価の推移を見たいと思います。下のグラフは、
・国内上場銘柄の中から
・過去3年間に発行済み株式数の3%を超える自社株買いを発表した667銘柄について、
・発表日の5営業日前から60営業日後までの株価リターンを平均したものです。
リターンは、TOPIXの相対(市場超過リターン)で計測しています。
当然ながら、自社株買いの発表日と翌営業日のパフォーマンスが最も強烈です。これは、買い取った分だけ物理的に需給がタイト化するので当然です。問題は、自社株買いを発表した後の株価の推移です。
驚くべきことに、発表後も緩やかに上昇の軌道を描いていることが分かります。素直に解釈すれば、自社株買いの発表を確認してから後出しで投資をしても、リターンを獲得できる可能性があることになります。
これが事実ならば、これほど簡単な投資法はありません。自社株買いの発表は、東証の適時開示や各種金融メディアに公表されますので、それを事後的、機械的に買うだけでよいことになります。
発表後でも期待できるのは中小型
しかし、実はこれには落とし穴があります。自社株買いの発表銘柄であれば何でもよいわけではなく、もうひとステップだけ必要です。時価総額(流動性でも可)の大小によるスクリーニングです。
以下のグラフは、前述の自社株買い発表日前後のパフォーマンスについて、集計対象を時価総額1000億円以上と未満の銘柄群で分けたものになります。
両者で明確な傾向の差異を見て取れます。時価総額が1000億円以上の銘柄群は、自社株買いの発表後は目立った傾向はなく、ほぼ横ばいの状態が継続しています。一方で、1000億円未満の銘柄群は、自社株買いの発表後も安定して上昇基調を描きます。
つまり、時価総額が1000億円を下回るような中小型銘柄であれば、自社株買いの残存効果を取れる可能性が高いといえます。そして、この残存効果発生の有無の背景も、シンプルで納得感があります。
一般に、大型株は流動性が高く、自社株買いをしても物理的に計算可能な押し上げ分が瞬時に織り込まれるだけで、実際の購入時にインパクトが発生することは稀です。また、マクロ、アクティブ、イベントドリブンといった世界中のあらゆるスタイルの巨額な資金が入り混じり、需給要因が株価に大きな影響を与えにくい面もあります。
一方、中小型銘柄は事情が異なります。発表直後の動きは大型と同じですが、その後に実際に企業が自社株買いを実施する際に、特に流動性の低い銘柄は需給インパクトが発生します。
自社株買いは、一度で一気にすべてを買い切るわけではなく、混乱を与えないよう期間中に分散して執行されるため、中長期的な株価の押し上げ要因として作用します。また、投資スタイルが複雑な大手の機関投資家は中小型株には手を出しにくい上、大型株と比較すると内需主体でマクロ環境の変化に左右されにくいため、需給の影響が株価に色濃く反映されます。
こうした背景から、中小型株の自社株買いは、発表後もそのポジティブな影響が継続しやすいのです。
後出しOKな銘柄候補は?
冒頭述べたように、世界の景気及び株式市場は不安定な動きが継続しています。このような環境下では、「後出しOKな中小型株自社株買い投資」という低リスクかつ安定リターンを得られる戦術の存在意義が際立ちます。
最後に、参考までに2019年初に自社株買いを発表した中小型株の銘柄リストを添付しておきます。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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