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【特集】「中国リスク修正相場」は到来するか ヤマ場迎えた米中貿易協議<株探トップ特集>

中国経済の悪化は世界経済へも大きく影響を与える。中国景気の減速懸念は株式市場でも上値押さえの要因となってきたが、ここにきて相場は過剰に中国リスクを織り込んでいるとの見方も強まってきた。

―中国の景気悪化シグナル点灯も、経済対策への期待が株価の下支え要因に―

 18日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比263円高の2万666円と急反発した。この株価押し上げ要因となったのが、米中貿易摩擦の緩和期待だ。中国の構造改革を巡る米中協議は3月1日の期限が迫り、いよいよ佳境を迎える。一方、警戒感が深まるのは中国景気の行方だ。中国景気の悪化は世界経済の停滞を呼び起こすことが懸念され、株価の上値を押さえてきた。しかし、市場からは「相場は中国リスクを過剰に織り込んだ状態にあり、ここから一段の修正高が見込める」との声も膨らみ始めた。

●「対中関税撤廃」報道を好感しアジア株式市場は軒並み高

 18日は東京市場のほか、中国・上海、香港、韓国・ソウルなどアジアの株式市場が軒並み高となった。きっかけとなったのは、米ウォール・ストリート・ジャーナルによる17日の「ムニューシン米財務長官が中国の輸入関税の一部または全部の撤廃を提案した」との報道だ。トランプ政権は、3月1日までに2000億ドル相当の中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げる方針を示している。米国と中国は90日間の協議期間に入っており、米中貿易協議に対する警戒感が高まっている。

 しかし、米トランプ大統領は「交渉は非常にうまくいっている」とツイッターに投稿するなど、足もとでは楽観的な観測が浮上。市場には「少なくとも対中関税の25%への引き上げは見送られそうだ」との見方が広がり始めている。トランプ米大統領は昨年秋からの米株式市場の下落で支持率が低下することを懸念しており、米中協議が決裂することで株式市場が再び不安定な状態に陥ることを避けたい意向が強い、ともみられている。

●対中強硬路線と融和策の路線対立、月末の閣僚級協議に視線集中

 ただ、今回の報道の発信源とされるムニューシン財務長官は対中穏健派とみられているのに対し、米中協議の主導権を握るのは対中強硬派の代表格の1人と目されている米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表だ。このため、市場には依然として同協議の不透明感を指摘する声は少なくない。

 こうしたなか、今後の関心は30日から31日に予定されている米中の閣僚級協議に集中している。上田ハーローの山内俊哉取締役は「最後はトランプ氏が、対中強硬路線と融和策のどちらの側につくかで決まるのだろう」と指摘する。米中協議は「1月末だけではなく、2月も何回かは行われると思う」とみられており、その動向に市場が左右される展開が続きそうだ。

●中国景気減速の指標相次ぐ、21日に10~12月期GDP発表

 更に、中国の景気動向への懸念も高まっている。中国の12月購買担当者景気指数(PMI)は49.4と好不況の分かれ目となる50を約2年半ぶりに下回った。12月の中国貿易統計は、輸出が大幅な落ち込みとなり、輸入も減少した。また、18年の中国の自動車販売台数は28年ぶりに減少に転じた。

 特に、21日には中国10~12月期の国内総生産(GDP)が発表される予定だ。市場には前年同期比で6.4%成長との予想が出ており、7~9月期の6.5%成長からの一段の景気鈍化も予想されている。中国経済に対しては、先行き警戒感は強い。しかし、その一方で経済対策への期待も高まっている。

●中国景気対策への期待強い、上海総合指数も下げ止まり局面

 具体的な中国の経済対策としては、銀行からの融資を促すための預金準備率引き下げや、個人や中小企業向けの減税が見込まれている。第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは「中国には景気対策の余力はある」と指摘する。この景気刺激策なども視野に、来週に予定されている10~12月期GDP発表も「6.4%前後の成長なら市場の反応は限定的ではないか」と同氏は予想する。中国株式市場では、上海総合指数は18年1月高値の3559から今年1月安値の2464まで約3割下落したが、足もとでは2600近くへと反発している。「景気対策への期待が中国株の下支え要因となっている」(中国株アナリスト)という。

●日本電産の下落も限定的、当面は中国関連株に反騰余地も

 一方、東京市場に目を転じれば、日本電産 <6594> が17日に中国要因で業績下方修正を発表したが、18日の株価は売り一巡後は下げ幅を縮小させた。同様に安川電機 <6506> も業績の下方修正を発表したが、株価への影響は限られた。

 アイザワ証券の清水三津雄ストラテジストは「株式市場は昨年末までの下落の過程で中国リスクを含め、悪材料はだいぶ織り込んでいる」と指摘し、当面は 中国関連株を含む巻き返し相場の可能性もみている。コマツ <6301> や日立建機 <6305> 、商船三井 <9104> やファナック <6954> など中国関連株は反騰への期待が膨らみそうだ。ただ、「中国の景気減速懸念は払拭できないし、米中貿易協議も本質的な解決は難しく、その落としどころは見えていない」(清水氏)と中長期的な警戒局面は続くことを予想している。

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