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【特集】時代遅れ“日本の人事”が変わる? 導入待ったなし「HRテック」関連株に飛躍の時 <株探トップ特集>

深刻な人手不足、優秀な人材の活用――。人的資源活用の効率化を手助けする「HRテック」への注目が高まっている。

―求められる「人的資源活用テクノロジー」、深刻人手不足も普及に拍車―

 現在、国会では外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が審議されているが、この背景にあるのがさまざまな業種で深刻化する人手不足だ。

 企業は人手不足の解消にさまざまな知恵を巡らせているが、その一環として近年、「HRテック(HR Tech)」への関心が高まっている。人手不足や企業間競争における「人材」の比重が高まりつつあるなか、いかにして優秀な人材を獲得し、活躍し続けてもらうかに貢献する「HRテック」の関連銘柄に注目したい。

●人事領域の業務改善を支援するソリューション

 「HRテック」は、「Human Resources」(ヒューマン・リソース:人的資源)と「Technology」(テクノロジー)を組み合わせた造語で、クラウド人工知能(AI)ビッグデータ解析などを駆使し、採用活動や人材育成、人材配置、人事評価、給与計算などの人事領域の業務の改善を行うソリューションを示している。

 HRテック先進国のアメリカでは、早くからSAPやオラクルが提供する大企業向け人事管理システム(HRMS)が市民権を得ていた。一方、日本では新卒一括採用、年功序列、終身雇用などの独自の慣例から人事に関するソリューションへの関心が低く、HRテック導入にも消極的といわれてきた。

 しかし近年では、雇用の流動化が進んでいることに加えて、グローバル化の進展などで多彩な国籍・文化背景を持つ社員の割合が増えつつある。こうした環境下では人事管理のデータ化や可視化が求められるようになっており、これがHRテックの導入・活用につながっている。また、働き方改革の推進により、企業の労務管理や人事業務の効率化が求められている点も普及に拍車をかけている。

●エンゲージメントの取り組みで離職を防止

 HRテック関連サービスは多岐にわたるが、特に注目されているのが、人事データの一元管理・可視化・分析、定型業務の削減・オペレーションの効率化、従業員とのコミュニケーション円滑化による従業員満足度向上の3つといわれている。

 そのなかでも、最近注目されているのが「エンゲージメント」と呼ばれる分野で、社員の会社に対する愛着心や、やる気を数値化し、それを改善することで離職防止や適切な人材配置、生産性向上につなげるというものだ。

 例えば、リクルートホールディングス <6098> では、AIを使って退職の可能性がある人を数値化し、管理職が相談に乗る取り組みを実施している。また、電通 <4324> は、パソコンにログインすると自動的に表示される質問に直観的に回答するだけで、その日のコンディションを客観的に知ることのできるシステムを導入している。

 これらの試みは、社員の定着に貢献するだけではなく、労働環境の改善にもつながる。今後、働き方改革が浸透するなかでさらに広がるとみられ、関連する企業のビジネスチャンスは広がりそうだ。

●WEVOXで問題を可視化するアトラエ

 関連銘柄として挙げられるのは、まずアトラエ <6194> だ。同社が2016年5月に提供を開始した「WEVOX(ウィボックス)」は、同僚や上司との関係や健康状態などに関する5から20程度の質問で、部署やチーム単位で社員のエンゲージメントを可視化し、どこに問題があるかを診断する。回答はリアルタイムで集計、項目ごとに点数化され、人事担当者や組織の管理職は個人の回答は閲覧できないが、評価を部署や役職などのグループごとに把握できる仕組み。18年8月現在で400を超える企業・組織が導入しており、回答データは300万件を突破した。

 また、Fringe81 <6550> [東証M]は、従業員同士が少額の成果給「ピアボーナス」や感謝の言葉を送り合い、モチベーションや組織へのエンゲージメントを高めるサービス「Unipos」を展開している。同サービスはクルーズ <2138> [JQ]やgumi <3903> 、メルカリ <4385> [東証M]でも利用されており、社員アカウント数、流通金額ともに順調に拡大している。

●従業員同士でポイントを送り合うベネ・ワンの「RECOGインセンティブ」

 リンクアンドモチベーション <2170> は、社員が複数の設問に回答するだけで組織の状態を可視化・数値化するクラウドサービス「モチベーションクラウド」を展開している。回答結果を偏差値表示した「エンゲージメントスコア」は3840社、90万人のデータを蓄積した組織の“モノサシ”であり、同社ではこれをもとに組織状態の把握から、改善プランの実行までを支援している。

 ベネフィット・ワン <2412> [東証2]は17年11月、シンクスマイル(東京都港区)と提携し、同年12月から「RECOGインセンティブ」の提供を開始した。ベネ・ワンの優秀な成績を残した従業員にポイントを付与する報奨制度「インセンティブ・ポイント」と、シンクスマイルが運営する、従業員同士が仕事に対する称賛や共感のメッセージを送り合うアプリ「RECOG(レコグ)」を融合。称賛や共感のメッセージに「インセンティブ・ポイント」を付与し、従業員同士で送り合うことができるサービスで、従業員のエンゲージメントやモチベーション向上を支援する。ベネフィット・ワンは10月31日に発表した第2四半期累計(4-9月)連結決算が32%営業増益と足もと業績も好調だ。

●三菱総研、ODKなども注目

 エンゲージメント以外にも、従来の人事システムになかったサービスが続々と誕生しており、HRテックは関連企業の裾野をさらに広げそうだ。

 AIの活用で企業の採用活動に関わる意思決定を支援する「エントリーシート優先度診断サービス」などを展開する三菱総合研究所 <3636> や、デジタル面接プラットフォーム「HireVue」を展開するタレンタ(東京都渋谷区)とHRテック分野での国内展開を共同で実施するODKソリューションズ <3839> [JQ]、16年11月にクラウド労務管理サービス「Gozal(ゴザル)」を展開するBEC(東京都渋谷区)とHRテック分野で資本・業務提携したきちり <3082> なども関連銘柄として挙げられる。もちろん、前述のオラクルの日本法人で、クラウド型人材管理システム「Oracle HCM Cloud」を展開している日本オラクル <4716> にも注目したい。

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