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【特集】窪田朋一郎氏【不安定な地合い、ハイボラ相場の行く先を探る】(1) <相場観特集>

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

―18年相場も終盤突入、強弱感対立のなか次の一手は―

 週明け22日の東京株式市場では、朝方に日経平均株価は安く始まったが、後場に入りプラス圏に浮上する展開。ボラティリティは高いもののトレンドは定まらず、下値リスクに身構えると上値追い態勢に切り返し、逆に上値期待が高まるとにわかに売り圧力が増して下落する、といったパターンが続く。気がつけば11月相場入りが目前で、2018年相場も終盤に入りつつある。年末に向けた相場とどう取り組むべきか、先読みに定評のある市場関係者にその見解を聞いた。

●「米長期金利上昇を警戒、レンジはやや下値余地が大きい」

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

 全体相場は強弱感が対立しやすく、日経平均はもみ合い圏にあるが、どちらかといえばやや下値リスクに対する警戒感の方が強いといえそうだ。結論を先にすれば当面の日経平均のレンジは下値2万1000円近辺、上値は2万3500円近辺を想定している。

 米経済は引き続き堅調といってよく、これが株式市場の拠りどころとなっている。ただ、一方で長期金利は上昇しやすい環境にあるといえる。加えて直近、トランプ米大統領が中間選挙前に所得税減税を打ち出す方針を表明したことは、サプライズ要因として金利押し上げに働く。早晩その規模がどのくらいのものになるかが明らかになると思われるが、それによる投資家のセンチメント改善は期待できるにせよ、相場にとって怖いのはさらなる金利の上昇だ。

 米長期金利の上昇はレパトリエーション(米国本国への資金回帰)を促し、事実、新興国の通貨安や株安を引き起こしている。さらに米中貿易戦争の余波で中国経済の減速懸念が浮き彫りとなっており、これは既に中国新車販売の低迷や設備投資関連の輸入減少に反映されている。米10年債利回りで3.3%を超えてくるようだと、株式市場もかなりざわめき立つことになりそうだ。NYダウは長期金利の動向次第で2万5000ドル台を再び割り込む展開もあるだろう。

 一方、今週から日本でも主要企業の4-9月期決算発表が始まるが、為替の円安メリットによる業績予想の増額期待も、実際に通期予想を引き上げる企業は少ないのではないかとみている。機械セクターなどにみられる足もとの受注減少傾向が懸念視される。また、マーケットが気にしているのは今期の着地点だけでない。来期の業績に対する不安感が漂い始めており、仮に今期見通しを上方修正しても、来期にその反動で収益伸び率の鈍化、もしくは減益になることへの恐怖感の方か先に立つケースも出てくる。したがって、企業決算への期待はあるものの、同時にガイダンスリスクにも注意しておく必要がある。

 物色対象について考えた場合、貿易摩擦や中国景気減速の影響を勘案すると機械株や海運株などは向かい風が強い。比較的有利なのは食品や鉄道などの内需のディフェンシブセクター。また、米長期金利の上昇傾向が強まった場合、全体相場はリスクオフの流れになると思うが、メガバンクや生保などの金融株は相対的に優位性を発揮することが予想される。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。

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