【特集】ケアネット Research Memo(1):製薬企業向け医薬営業支援サービスが好調持続、新たな成長施策の取り組みを開始
ケアネット <日足> 「株探」多機能チャートより
■要約
ケアネット<2150>は、インターネットを使った製薬企業向けの医薬営業支援サービスを主力事業として展開している。医師・医療従事者向けに様々な医療情報を無料で提供するWebサイト「CareNet.com」を運営し、同サイトに登録した会員の属性やニーズなどを収集し、製薬企業に対して医薬品のマーケティング活動支援を行うビジネスモデルとなる。登録医師会員数は2018年6月末時点で14.1万人と医師数全体の約4割をカバーしている。
1. 2018年12月期第2四半期累計業績
8月10日付で発表された2018年12月期第2四半期累計(2018年1月-6月)の連結業績は、売上高が前年同期比12.4%増の1,420百万円、営業利益が同15.8%増の239百万円となり、期初会社計画(売上高1,315百万円、営業利益170百万円)を上回る好決算となった。主力の医薬営業支援サービスの受注が既存顧客並びに新規顧客向けに好調に推移したことが主因だ。製薬企業で販売する新製品でスペシャリティ医薬品の品目が増えるにつれて、マーケティング活動も従来のMRによる人海戦術から、より効率的なeプロモーションを活用する例が増えていることが背景にある。
2. 2018年12月期業績見通し
2018年12月期の業績は、売上高で前期比5.1%増の3,000百万円、営業利益で同10.3%増の450百万円と期初計画を据え置いている。第2四半期までの営業利益の進捗率は53.2%に達しているものの、最需要期である第4四半期の動向がまだ流動的なためだ。ただ、第3四半期に入っても受注は順調に推移していることから、会社計画を上回る可能性は高いと弊社では見ている。なお、親会社株主に帰属する当期純利益のみ前期比36.4%減の295百万円と減益となる見込みだが、これは繰越欠損金がなくなり実効税率が正常化することによる。
3. 今後の成長戦略について
同社は今後の成長戦略について、新たな取り組みを進めていく計画となっている。医薬営業支援サービスでは競争力強化のため、新たに専門医向け新メディア「Doctor's Picks」を立ち上げ(2018年10月正式オープン予定)、専門医の登録会員数を増やしていくことで、スペシャリティ医薬品のプロモーション案件の受注拡大につなげていく戦略となる。また、臨床開発段階も含めた幅広い支援サービスを展開していくため、2018年5月にヘルスケア分野で異なる事業を行う6社が参加するコンソーシアム「SSI(Successful Support for Innovator)」を設立し、同コンソーシアムでワンストップソリューションとしてサービス提供していく取り組みを開始している。同社は従来のサービスに加えて、「CareNet.com」の会員パネルを活用して治験に参加できる患者を製薬企業に紹介するサービスを提供していくことになる。また、医薬コンテンツサービスでは動画コンテンツを月額定額サービスだけでなく、2019年12月期からは付加価値の高いコンテンツのPPVでの配信も開始する予定にしている。また、新分野として「遠隔集中治療」※分野への進出も開始する。遠隔集中治療支援の普及を図るベンチャー企業の(株)T-ICU、及びビデオ会議システム等を提供するブイキューブ<3681>と業務提携し、2019年4月以降、全国の集中治療室を持つ医療施設に導入を進めていく予定となっている。医師不足により医療の地域間格差が広がるなかで、「遠隔集中治療」に関してのニーズも高いと見られ、今後収益貢献する事業に育つものと期待される。
※インターネット等の通信技術により遠隔から集中治療専門医が現場の医師等に適切な治療方針を助言することで、患者の予後悪化を防ぐ仕組み。集中治療室は全国で約1,100室あるが、このうち約800室は専門医が在籍しておらず、専門医ではない医師等で賄っているのが現状で、遠隔集中治療が普及すれば、地域間の医療格差解消にもつながることになる。米国では20%の集中治療室で遠隔システムが導入されている。
■Key Points
・インターネットを活用した製薬企業向け営業支援サービスが主力
・スペシャリティ医薬品の増加に伴い主力のeプロモーションサービスの受注が拡大、2018年12月期第2四半期累計業績は期初計画を上回る増収増益に
・専門医向けメディア「Doctor's Picks」をオープン、新分野として「遠隔集中治療」にも進出し、2019年12月期以降の更なる成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SF》
提供:フィスコ