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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆イビツ観強まる◆

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより

〇負の決算ラリー、市場にイビツ観〇
丁度、2ヵ月前、米WSJ紙は「四半期ごとの業績見通しをやめよう」と呼び掛ける記事を掲載した。投稿したのは、投資の神様ウォーレン・バフェット氏と金融界の重鎮・JPモルガンCEOのジェイミー・ダイモン氏。「業績見通しを出すようになったことで、短期的な利益ばかりに目が向けられるようになり、企業の長期的戦略や成長が犠牲になっている」と主張した。

それを思い起こさせる様な決算ラリーになっている。昨日は午後2時発表の大成建設(1801:4-6月39%経常減益、通期見通し28%減益据置)が一時14%急落、他の大手ゼネコン株も4~5%連れ安し、建設セクターは-2.40%、第2位の下落率となった。銘柄は様々だが、減益で売られ、業績見通し据置で売られ、増益でも市場予想を下回ったとして売られる銘柄が目立つ。

東証空売り比率は7月23日(日経平均300円安)以来の45.2%の高水準、東証一部新高値銘柄数23に対し新安値121銘柄に達した。インデックスは横ばい圏ながら、空売り勢が跋扈する歪な市場になっている。
時系列で追っていないが、東証一部2105銘柄中、成長力が乏しいと看做されるPER10倍未満(株価収益率:東証一部平均14.96倍)が330銘柄、解散価値を下回るPBR1倍割れ(株価純資産倍率:同1.31倍)は820銘柄、予想配当利回り3%以上(同1.71%)は252銘柄に達する。売り崩しの被害が広がっている印象が強い。

大成建設は上記指標に該当しないが、建設株には該当するものが増えている。東京五輪需要のピーク観、人手不足や資材高の圧迫、リニア関連などの不祥事があった業界だけに、先行き不透明感の強い地合いでは売り込み易いのかも知れないが、短兵急な動きは一般投資家を大いに惑わし、市場離れを招きかねない。
売り方が必ず成功しているとも言い難いので、先日取り上げた化粧品株もそうだったが、事業環境の変化が激しいことや米中摩擦などグローバルな不透明感増大心理が影響していると考えられる。

以前だと、割安株ファンドや高配当利回り株ファンドなどが設定されていたと思うが、今はそういう動きも見当たらない。
売り残が溜まれば(米国市場と日本市場の差の一つに、売り残のスケールの差が指摘されることがある)、何処かで買いエネルギーに転換するので、全体の状況次第と言えなくもないが、売り方の狙いは信用買い残の投げなどと見られ、回転は早いと思われる。
大口投資家のETF傾斜の裏返し的要素と見られなくもないが、短期的には材料待ち、自律反発しかないので、企業の意識改革による地道な情報開示、株主還元策を求める流れになるものと思われる。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/8/7号)

《CS》

 提供:フィスコ

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