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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4):◆秋に向け、欧州の重荷感◆

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

〇ハードブレグジットなど警戒感滞留〇
9日の米株式市場でナスダック指数は小幅高ながら8連騰、17年9~10月以来の記録となった。7月下旬のフェイスブックやツイッター暴落などによる波乱から見れば、予想以上に強い展開だ。
終値は7891.782で、7900ポイント台に戻り待ちの売りが控えている可能性がある(Wトップ形成パターン)こと、他市場の弱さの裏返しの可能性があることなど、それほど強気には見られないが、当面の世界の株価安定の柱との位置づけだ。

市場の最大焦点は米中攻防にあるが、秋の欧州波乱を睨む動きも米国集中を呼んでいる可能性がある。NY為替市場で英ポンドが約1年ぶり安値を付け、ユーロもジワリ安い展開で、為替市場から波乱となるリスクがある(ポンド円の影響は小さいが、ユーロ円では125-130円維持が前提条件と考えられる)。

9日、英財務省は「合意なき離脱(ハード・ブレグジット)に備え、金融サービスの規制案を準備する」と明らかにした。3日、カーニーBOE総裁がハード・ブレグジットの蓋然性が「不快なほど高い」と述べ、4日、英国際貿易相は「EUと合意できずに離脱する確率は6割」と発言した。メイ英首相は「ひどい合意よりは合意なしの方がましとの考えに変わりはない」との姿勢。
問題は主に通商問題、北アイルランドとアイルランドの国境問題だが、実際の混乱がどうなるかは未知数。相場では黒雲の段階で売り仕掛けされ易い状況が続く。

離脱は来年3月だが、EUとの離脱交渉の実質的期限は10月。その前の9月20日のEUサミットが大きなヤマ場と見られている。その前の9/4-13日が英議会再開、後ろに英労働党大会(23-26日)、保守党大会(30-10/3)が控える。交渉期限の12月先送り案や英議会の倒閣運動→総選挙説なども飛び交い、混迷度を測るニュースになろう。

EU側も安泰でない。2日発表の独世論調査でメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の支持率が過去最低の29%に落ち込んだ。移民反対のAfD(ドイツのための選択肢)は過去最高の17%(混迷が始まった17年9月の連邦議会選挙時は32.9%対12.6%)。
10月14日のバイエルン州議会選挙に向けCSUの危機感が高まっており、ドイツはブレグジットで安易な妥協ができない状況にある。
また、9月予算編成のイタリア情勢などが混乱を招くリスクがある。

欧米金融機関は五月雨的に大陸シフトを進めている様だが、英国はロンドン・シティーによる欧州市場アクセス継続を要求している。
英誌によると投資ファンド7000社が影響を受ける可能性があるとしており、できるところはドル資産にリスク回避している可能性が想像される。
9日発表のECB(欧州中央銀行)定例経済報告では、保護主義の高まりや米関税引き上げで世界経済リスクが高まっているとしたが、域内の成長は堅調、短期的な経済指標は広範囲で底堅い拡大を示しているとした。景況感の失速につながらない限り大波乱リスクは小さいと思われるが、英・EU交渉は夏相場後半の焦点の一つと考えられる。



以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/8/10号)

《CS》

 提供:フィスコ

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