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【市況】S&P500 月例レポート ― 記録的な企業利益、強気相場は過去最長を更新へ! (3) ―


●トランプ大統領と政府高官

・トランプ大統領は退任するアンソニー・ケネディ判事(82歳)の後任として最高裁判事(終身制)にブレット・カバノー氏(53歳)を指名し、上院の承認を得るための政治的な駆け引きに乗り出しました。金融業界はカバノー氏を保守派と見ており、企業に対する連邦政府の規制や義務の拡大には反対すると考えています。そして、現在の上院の構成から判断すると、同氏が承認されると予想しています。

・米国環境保護局のスコット・プルイット長官は、倫理規定に対する抵触疑惑を受けて辞任しました。

・トランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議に出席しました。大統領の強硬な主張に配慮し、米国以外の加盟国は国防費を大幅に増額することで合意し、これに対し大統領はこれまで通りNATOへの関与を継続することを明言しました。

・米商務省は中国の通信サービス大手ZTE(ZTCOY)に対して、イランや北朝鮮との商業取引を理由に課していた制裁措置を、預託金4億ドルの納付、罰金10億ドルの支払い、取締役会と経営陣トップの刷新を条件に解除しました。

・トランプ大統領はロシアのプーチン大統領とヘルシンキで2時間にわたって会談を行いました。最近のEU首脳との会談とは対照的に、両首脳の会合は和やかで友好的な雰囲気の中で行われた模様です。しかし、大統領が示した「友好的な姿勢」や「受容的な態度」に対する米国国内の反応は大半が批判的なものでした。市場は今回の会談に対して無反応でした。

・アルゼンチンで2日間にわたり開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議は合意に至らないまま閉幕しましたが、関税に対する懸念が表明されました。

・トランプ政権は現在の貿易関税問題の影響を受けている農家に対して120億ドルの支援を行うことを明らかにしました。

・トランプ大統領は前提条件なしにイランの大統領と会う意思があると発言しました。

●貿易 ― 戦争と平和

 トランプ大統領は中国からの輸入品340億ドル相当に対する追加関税を発動しました。これに対抗し、中国も報復措置として340億ドル相当の米国製品に追加関税を課しました。さらにトランプ大統領は5,000億ドルの中国製品に関税を課す用意があると警告を発し、2018年9月に発動が予定されている2,000億ドルの中国製品に対する追加関税リストを公表しました。中国の対米貿易黒字は過去最高の289億ドルに達しており、対米輸出は5.7%増、米国からの輸入は4.0%増となっています。

 報道によると、EUは米国が自動車に対して懲罰的関税を発動した場合には、米国製自動車に追加関税を課すことを検討しているものの、同時に関税率を引き下げることも検討しています(交渉は継続中)。トランプ大統領は欧州委員会のユンケル委員長と会談を行い、両者は自動車を除く工業製品に対する関税の引き下げに向けて取り組むことで合意しました。またEU側は米国からの液化天然ガスの輸入拡大に合意しました。貿易障壁の削減に向けた協議の継続が計画されていますが、米国とEUの双方が現在課している関税は引き続き適用されます。こうした合意内容を受けて、米国の株式市場は力強く上昇しました。

●利回り、金利、コモディティ

 米国10年国債利回りは6月末の2.86%から上昇し2.96%となりました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。英ポンドは6月末の1ポンド=1.3205ドルから1.3123ドルに下落し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは6月末の1ユーロ=1.1685ドルから1.1693ドルに上昇しました(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は6月末の1ドル=110.68円から111.84円に下落し(同112.68円、同117.00円)、人民元も6月末の1ドル=6.6225元から6.814元に下落しました(同6.5030元、同6.9448元)。

 原油価格は6月末の1バレル=74.31ドルから下落し68.43ドルで月末を迎えましたが、5月末の66.93ドルを上回りました(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、6月末の1ガロン=2.913ドルから2.911ドルに小幅下落しました(同2.589ドル、同2.364ドル)。金価格は6月末の1トロイオンス=1,254.40ドルから下落して1,232.90ドルで月を終えました(同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 VIX恐怖指数は6月末の16.09から低下して12.84で7月を終えました(同11.05、同14.04、月中の最高は18.08、最低は11.44)。

●各国中央銀行の動き

 2018年6月12-13日開催分(この会合でFRBは今年2回目の利上げを実施)の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録からは、FOMCが向こう1年間で政策金利を、経済成長を刺激しない水準まで引き上げる計画であることが示されました。パウエルFRB議長は半期に一度の議会証言で、FRBは段階的な利上げを行う意向であると述べました。これとは別に、トランプ大統領はFRBの利上げを批判し、利上げは停止されるだろうと発言しました。FRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)では景気に対する見方が若干後退し(2018年7月9日時点)、「控え目から緩やかなペース」という表現が使われるとともに、関税が製造業に与える影響に対して多少の懸念が示されました。

 トルコの中央銀行は政策会合で、インフレに対応するため100bpの利上げを決定するとの大方の予想に反し、政策金利を据え置きました。日銀は政策金利を据え置き、「極めて低い」金利の水準を維持すると述べました。月末(7月31日)には2日間のFOMC会合が始まりますが、今回の会合では利上げは予想されていません。

 S&P 500指数は7月に3.60%(配当込みのトータルリターンはプラス3.72%)と大きく上昇し、これで4カ月連続の上昇となりました(4月は0.27%上昇、5月は2.16%上昇、6月は0.48%上昇で、合計で6.67%上昇)。過去3カ月間では6.35%(配当込みのトータルリターンはプラス6.87%)、年初来では5.34%(同プラス6.47%)、1年間では14.01%(同プラス16.24%)上昇しています。S&P 500指数はこれまでの上昇を受けて、2018年1月26日の終値での過去最高値(2872.87)を1.97%下回る水準に付けています。長期に及ぶ強気相場は今月(8月22日で113.4カ月)に過去最長を更新する見通しで、これまでの上昇率は316%、配当込みのトータルリターンはプラス407%となっています。

 市場では好決算を織り込む動きが進んでおり、企業は減税を背景に過去最高益の更新が容易となり、利益の一部を増配と自社株買いを通じて株主に還元しています。約75%の企業が決算を終えた段階で、失望的な決算も少数ながら散見されており、グロース銘柄は決算が期待外れに終わった場合により大きなリスクにさらされているようです(Facebook、Twitterなど)。まもなく小売セクターの決算が始まり、市場では個人消費(消費者が節税分を消費に回しているか否かとその使途についても)や新学期前のシーズンに注目が集まるでしょう。

 7月は相場のボラティリティが低下し、1%以上変動した日数は5月の3日(上昇が2日、下落が1日)に対して、21営業日中ゼロとなりました(6月は2日で、上昇が1日、下落が1日)。ただし、平均日中値幅(高値と安値の差)で見たボラティリティは、5月の5.69%から6月に3.70%に低下した後、7月は5.52%に上昇し、1年平均の5.38%に近い水準となりました。出来高は6月から17%減少し、1年平均を13%下回りましたが、こうした落ち込みは例年夏の始めに見られるもので、7月は前年同月比では2%増加しました。

 相場の上昇が続く中、セクター間のリターンの格差は続いたものの、3カ月連続で縮小しました。7月はパフォーマンスが最高のセクター(資本財・サービス)と最低のセクター(不動産)の騰落率の差は6.25%と、6月の7.13%、5月の9.41%、4月の13.81%から縮小しました。この騰落率の差は1年平均では10.33%、年初来では22.63%となっています。

 7月は2017年11月以来初めて11セクター全てが上昇し、6月の8セクター、5月の7セクターを上回りました。この結果は広範な企業業績の伸びを反映しており、好調な決算が貿易をめぐる不透明感を上回りました(ただし、警告を発する企業も少なからずありました)。7月は資本財サービスセクターが6月の3.43%下落(全セクターの中で最低)の後、7.25%上昇と反発し、最も高いパフォーマンスを上げました。同セクターは年初来でも1.25%上昇とプラスに転じ、米大統領選以降では28.44%上昇しています。ヘルスケアセクターも7月は6.48%上昇と非常に好調で、年初来では6.54%上昇しています。金融セクターも5.15%上昇し、年初来では0.02%の下落と、騰落率がプラスに転じるまであとわずかとなっています(ただし、大統領選以降では39.82%上昇)。

 情報技術セクターはFacebookとTwitterの失望的な決算が響き、2.04%上昇と騰落率は平均を下回りました。ただし、年初来では12.41%、大統領選以降では55.51%(全セクターの中で最高)上昇しています。不動産セクターはパフォーマンスが最低でしたが、それでも1.0013%上昇し、電気通信サービスセクターの1.0028%上昇をわずかに下回りました。年初来では不動産セクターが0.03%上昇と騰落率がプラスに転じた一方、電気通信セクターは9.92%下落(全セクターの中で最低)と騰落率はマイナスとなっています。

 消費関連セクターではパフォーマンスのばらつきが続き、一般消費財セクターが1.71%上昇し、年初来で12.71%の上昇となった一方、生活必需品セクターは3.88%上昇したものの、年初来では6.43%の下落となっています。

 7月は値上がりした銘柄数と値下がりした銘柄数の差が拡大しました。値上がりした銘柄数は381銘柄(平均上昇率は5.65%)と、6月の284銘柄、5月の279銘柄を上回り、そのうち54銘柄(6月は32銘柄)が10%以上上昇しました。値下がりした銘柄数は124銘柄(平均下落率は4.57%)と、6月の221銘柄、5月の226銘柄から減少し、そのうち15銘柄(6月16銘柄)が10%以上下落しました。年初来では、値上がりした銘柄数と値下がりした銘柄数の差は逆転し、値上がりした銘柄数が上回りました。値上がりした銘柄数は289銘柄(平均上昇率は15.49%、6月は245銘柄、5月は230銘柄)で、そのうち154銘柄(6月は121銘柄)が10%以上、58銘柄が25%以上上昇した一方、値下がりした銘柄数は216銘柄(平均下落率は9.83%、6月は260銘柄)で、そのうち85銘柄(6月は114銘柄)が10%以上、16銘柄が25%以上下落しています。


[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。

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