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【特集】3Dマトリック Research Memo(4):2018年4月期の止血材売上は計画をやや下回るも前期比では2倍増に拡大

3DM <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

1. 2018年4月期の業績概要
スリー・ディー・マトリックス<7777>の2018年4月期の連結業績は、事業収益が前期比62.9%減の228百万円、営業損失が1,874百万円(前期は1,240百万円の損失)、経常損失が1,767百万円(同1,270百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が1,866百万円(同1,392百万円の損失)となった。前期に計上した契約一時金収入が無かったため事業収益は減収となったが、製品売上高だけで見ると前期比113.4%増の228百万円(研究試薬販売4百万円含む)と着実に増加した。止血材が欧州向けで同62.2%増の153百万円、アジア・オセアニア向けで同11倍増の68百万円とそれぞれ伸張したことが要因だ。

費用面では売上原価が止血材の売上増に伴い前期比で75百万円増加したほか、国内での止血材の臨床試験費用、欧州での次世代止血材の臨床試験に向けた準備費用の増加等により研究開発費が同92百万円増加した。また、販管費についても、止血材の販売促進のため欧州を中心に販売プロモーション活動を積極的に行い、営業人員を増員したこと等により同78百万円増加した。この結果、営業損失は前期比で634百万円拡大する格好となった。営業外で連結子会社が保有する外貨建て資産等にかかる為替差益109百万円を計上したことにより、経常損失については同496百万円拡大した。

なお、期初会社計画比で見ると製品売上高は75百万円下回った。アジア・オセアニア向けは主力のオーストラリア向けが好調で計画を3百万円上回ったものの、欧州向けが66百万円下回ったほか、中南米向けも17百万円下回ったことによる。欧州向けについては販売代理店契約を締結したPENTAX向けの出荷が想定よりも遅れたことに加えて、スペインや英国の販売代理店が事業売却や事業承継、製品戦略変更など相手先の理由により稼働しなかったことなどが影響し、当初計画よりも販売の進捗が半年ほど遅延したことが影響した。代替策としてサウジアラビア等の中東諸国で販売を進めたが、売上規模は小さく影響は軽微にとどまった。中南米向けについてもまだ安定的に受注が入るまでには至らず、売上規模は少額にとどまった。


「PuraStatR」の売上は欧州、オーストラリアで着実に増加
2. 止血材の売上動向
2018年4月期の止血材「PuraStatR」の売上高は、前期比2.1倍増の224百万円となった。地域別で見ると、欧州向けが153百万円(前期94百万円)、オーストラリアを中心としたアジア・オセアニア向けが68百万円(同6百万円)、中南米向けが2百万円(同6百万円)となり、欧州、アジア・オセアニア向けがいずれも増加した。

欧州向けではフランス、オランダ、ポルトガルを販売エリアとするPENTAX向けの出荷が第3四半期からスタートしたほか、ドイツの有力代理店であるウェルフェン向けも順調に伸張したことが増収要因となった。ただ、英国やスペイン等で前述した理由により販売代理店の変更を余儀なくされ、新たな販売代理店が稼働するまでに時間を要したことにより会社計画比では約70%の達成率にとどまった。とは言え、四半期ベースでは第4四半期に49百万円の売上を計上するなど着実に売上規模を拡大しており、内視鏡手術領域だけでなく心臓血管外科領域においても「PuraStatR」を使用する医師や医療施設が増加していることがうかがえる。なお、懸案事項だった英国の販売代理店については第4四半期に、グローバル企業であるUDGヘルスケア※の子会社と代理店契約を結んだほか、スペインについてもPENTAXが新たな営業エリアとしてカバーすることになるなど、有力代理店との連携強化を進めている。ただ、いずれも売上げに本格寄与するのは2019年4月期以降となる。

※UDGヘルスケアはアイルランドに本社を置くヘルスケアサービスのグローバル企業。医薬品のサプライチェーンやCSO(医薬品営業支援)事業、医薬品・医療機器の販売等をグループで展開している。2017年度の売上高は1,219百万ドル。同社が代理店契約を結んだ英国子会社のAquilantの売上高は96百万ドルで、英国の医療機器販社としては大手で、同社がターゲットとする医療施設の殆どをカバーしており、既存代理店であるDiagmedよりも規模は大きい。


なお、欧州市場での独占販売ライセンス契約については候補企業を3社に絞り、引き続き契約締結にむけての協議を進めている状況に変わりない。欧州での更なる販売実績や使用実績データの取得及びその検証に時間を要しているためで、販売実績等が一定水準を超えてくれば契約締結の可能性が高まると弊社では見ている。

アジア・オセアニア向けの売上の殆どはオーストラリア向けとなる。オーストラリアの販売代理店であるMaquetが積極的な営業展開を行った結果、販売医療施設数が2017年4月期末の9施設から27施設(うち、耳鼻咽喉科は2-3施設)に拡大、主に内視鏡手術領域で利用する医療施設数が拡大し、増収要因の大半を占めた。また、耳鼻咽喉科領域でも止血用途だけでなく癒着防止効果があることが評価されて売上を伸ばしているほか、2018年に入ってからは腹腔鏡手術向け止血材としても採用が徐々に広がり始めている。四半期ベースの売上を見ると第1四半期に37.6百万円の売上を計上したがこれはまとめ発注によるもので、Maquetから医療施設への販売については顧客数の拡大とともに着実に伸びているものと見られる。

一方、中南米向けに関しては心臓血管外科手術向けで利用されているが、まだ、認知度も低く利用医師数が広がるまでには至らず、売上高は前期の6.6百万円から2百万円に減少した。前期は代理店向けの初期ロット販売があったが、当期はリピート受注のみの販売にとどまったことが影響した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《MH》

 提供:フィスコ

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