市場ニュース

戻る
 

【特集】サマーラリーがやってきた! 再び高値へ向かう米株市場 <株探トップ特集>

悪材料出尽くし――。米中が相互に追加関税を発表するとともに、米国株式市場は上昇へ転じた。サマーラリーへの期待が増している。

―貿易戦争懸念後退で上昇基調へ、好調米経済が相場押し上げへ―

 米国株式市場が反発基調を強めている。米中貿易戦争への懸念からNYダウは6月には8日続落するなど軟調に推移した。ただ、7月6日に米国と中国が相互に追加関税を発表すると、株式市場は「当面の悪材料出尽くし」との反応から株価は上昇基調に転じた。依然、11月の米中間選挙に向け米中貿易戦争への懸念は払拭できないものの、足もとの景気拡大を背景に、NY市場にはサマーラリー(夏相場)突入への期待が高まり始めた。

●貿易摩擦を脇にやれば米経済は好調、適温相場の基調持続も

 9日のNYダウは前週末比320ドル高の2万4776ドルと大幅に3日続伸した。今週末から本格化する第2四半期(4-6月)決算への期待も膨らみ、NYダウは3週間ぶりの高値に浮上した。ナスダックは同67ポイント高の7756に上昇。6月20日につけた7806の最高値更新が目前に迫った。

 この米国株の強さの背景にあるのは、6日の米国と中国が相互に340億ドル(約3.8兆円)相当の追加関税をかけることを発表したことで、「いったん買い戻しが流入した」(市場関係者)ことだ。さらに、米国を中心とする貿易摩擦さえ脇に置けば、経済環境は良好な点が挙げられる。例えば、直近発表された米6月雇用統計ISM製造業景気指数などは堅調だった。その一方、米長期金利の上昇は抑えられている。今年2月に一時50まで急騰し市場をパニック状態に陥れたVIX指数も足もとで12前後に低下している。原油価格の上昇はあるものの、相場の基調は年初の「ゴルディロックス(適温)相場」に近づいている。

●米第2四半期決算は2割増益予想、GDPは4%近い成長観測

 市場関係者の関心は、今週末から本格化する米国企業の第2四半期(4-6月)決算に向かっており、そのS&P500ベースの増益率は20%増との予想が出ている。さらに今月4~6月期の米国内総生産(GDP)は4%成長に近い数字が出るとの観測もある。「7月にかけては、米中による追加関税発動を視野に企業による駆け込み需要が発生した可能性もある。ただ、それを考慮しても企業業績は好調であり、第2四半期の増益率は上方修正されることもあり得る」とフィリップ証券の庵原浩樹リサーチ部長は言う。

 また、サクソバンク証券の倉持宏朗チーフマーケットアナリストも「米国市場では、米中貿易摩擦の影響が懸念され株価が下落したキャタピラーやボーイングなどの中国関連株にアク抜け感からの買い戻しの動きが強まっている」と指摘する。追加関税が、当面500億ドル程度にとどまるのなら、米国経済に与える影響は限定的との見方も浮上している。「米株式市場が上昇基調を強めるなら、米国民のトランプ支持は大きく変わらないかもしれない」と倉持氏はみる。

 そんななか、庵原、倉持の両氏が指摘するのが「米国市場にサマーラリーが到来するかもしれない」という見方だ。市場には8月にかけ、NYダウは2万5500ドル前後までの上昇、ナスダックは史上最高値を更新し8000ドルも視野に入れる展開を予想する声が増えている。

●フェイスブックの株価はV字回復、アップルへの貿易摩擦の影響注視

 とりわけ、足もとで強さが際立つのがFAANG(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、アップル、ネットフリックス、グーグル<アルファベット>)と呼ばれる米IT関連の主力銘柄だ。FAANG株は米中貿易摩擦の影響が小さいとの見方から、最高値圏での強調展開を続けている。今春に情報漏洩問題に揺れたフェイスブックも、米政府が規制強化に二の足を踏んだこともあり、株価は最高値圏へとV字回復している。

 ただ、米中貿易摩擦の影響が懸念されるのは中国に製造拠点を持つアップルだ。今後、米トランプ政権が追加関税額を2000億ドルへと増やせば、アップル製品への影響が出てくることも懸念されている。第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは、「トランプ政権は2000億ドルの追加関税を中間選挙前に発表し、同選挙後に実施する可能性はある」と予測する。もっとも「中国への追加関税が米国企業への影響が出ないように極力注意している。アップル製品も対象から外す方向が摸索されており、例え対象となっても10%程度の関税率なら為替や物価の変動で吸収できる可能性はある」とみている。

●秋口以降には依然不透明感残る、夏相場が転換点の可能性も

 とは言え、秋口にかけての動向には不透明感が残る。米中貿易摩擦が再燃することもあり得るほか、7月に実施された追加関税の影響が各種経済指標や企業業績に出てくることも予想されるからだ。前出の桂畑氏は「中間選挙で共和党が敗北する可能性はある」と予想する。しかし「ロシアゲートでトランプ氏が罷免に追い込まれるまでの大敗はないだろう」とみており、影響は限定的と見込む。そんななか、秋以降の状況を考慮したうえで、この夏に米株式市場はどこまで上昇するのか。夏相場は今年の大きな転換点となることもあり得そうだ。

 ■米国企業の決算予定

 7月13日 JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、シティグループ

   16日 バンク・オブ・アメリカ、ネットフリックス

   17日 ジョンソン・エンド・ジョンソン、ゴールドマン・サックス

   18日 モルガン・スタンレー、アメリカン・エキスプレス、IBM、USバンコープ

   19日 マイクロソフト、トラベラーズ、ニューコア、ユニオン・パシフィック

   20日 ゼネラル・エレクトリック、シュルン・ベルジェ

  23日 アルファベット(グーグル)、ハリバートン

  24日 バイオジェン、アドバンスト マイクロデバイシズ

  25日 ボーイング、フェイスブック、フォード、コカ コーラ、コーニング

  26日 アマゾン・ドット・コム、マスターカード、マクドナルド、アムジェン

  27日 グッドイヤー、エクソン・モービル、シェブロン、メルク

  30日 キャタピラー、ラムバス

  31日 アップル、ファイザー

 8月 1日 テスラ

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均