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【市況】すぐ始めたい人のための「先物取引入門」(6)先物取引でよく使われる取引方法って?(高井ひろえ)


こんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。今回は、先物取引でよく使われる取引テクニックのひとつ「サヤ取り」について説明をします。

サヤ取りは、「買い」と「売り」のポジションを同時に持ち、同時に手仕舞いする取引です。「買い」または「売り」どちらかだけのポジションでは、相場が上下どちらかに大きく振れたときに、売りで取引を始めた人は上昇相場で、買いで取引を始めた人は下落相場で大きく損をしてしまうことになりますよね。そういったリスクを極力抑えながら、利益を狙うことができるのがサヤ取りです。詳しく学んでまいりましょう。

○「サヤ取り」って何のこと?
「サヤ取り」の「サヤ」とは、「価格の開き、価格差」のことです。商品先物では、期先限月(決済期限が先の限月)と期近限月(決済期限が近い限月)、ある商品と別の関連商品の間には理論的または経験的に適正とされる価格差があります。しかし、その適正な価格差も、何かをきっかけに崩れる場合があります。そこで、「サヤ取り」では、その崩れた価格差がいずれ適正な差に戻るだろうとの考えに基づいて利益の獲得を狙います。

○「限月」って何?
今回は、さきほど紹介した「期先限月(決済期限が先の限月)と期近限月(決済期限が近い限月)」でのサヤ取りについてご説明します。その前に、「限月」とは何のことなのか、今一度確認をしておきましょう。限月は、一言で言いますと「取引の期限」です。株取引やFX取引では、理屈の上では買い、または売りで取引を始めたら、ポジションはいつまでも持ち続けることができます。しかし、商品先物取引では、一定の期日までに必ず決済しなくてはなりません。その日が、「納会日(当限月取引最終日)」です。みなさんが商品先物の相場表などを見る際に、例えば「限月」の欄に「2016年11月」と記載があれば、その商品は「2016年11月」に決済期限がくるということなのです。これを「2016年11月限(がつぎり)」と読みます。納会日に近い限月を「期近(きぢか)」、より遠い限月を「期先(きさき)」と呼びます。

○どのような価格差が生まれるの?
では、限月と価格にはどのような関係があるのでしょうか。例えばトウモロコシの相場が、期近から期先に向かうに従って、価格が高くなっていたとします。この限月と価格の関係は適正とされる状態で、「順ザヤ」と呼びます。期先の価格が期近よりも高いのは、期先納会日に現物の受け渡しを想定しているためです。その間に商品を預ける倉庫料や保険料を反映しているのです。逆に、期先よりも期近の価格が高くなっている状態を「逆ザヤ」と呼びます。

○逆ザヤから順ザヤへの戻りを狙う投資戦略
たとえば期先よりも期近の価格が高い「逆ザヤ」の傾向が強くなっていたとします。ここで、日々の価格差を眺めつつ、逆ザヤの幅がある程度大きくなったところで限月間のサヤ取りを仕掛け、順ザヤになったら手じまいをする戦略を立てることができます。つまり、割高になっている期近を売り、割安になっている期先を買うのです。そして逆ザヤが縮小し、順ザヤになった時点で手じまいます。この時の利益は、「利益=(新価格差-旧価格差)×倍率×買いと売りのペア数」で計算します。

しかし、この投資戦略は必ずしもうまくいくわけではありません。むしろ逆ザヤが拡大していく場合もあるのです。こうした状態になる理由のひとつとして、「いま」目先の商品を欲しがっている人が多いためという推測ができます。需給が緩和すれば、それに伴って逆ザヤも解消し順ザヤに向かいます。

○リスクを抑えて取引することができる
サヤ取りでは、売り買い両方のポジションを持つので、相場の上昇または下落とは関係なく利益を狙うことができます。さらに、価格に連動性のある組み合わせのものに注文を入れるので、片方の値下がり分をもう片方で相殺することが期待できます。

○経済状態を注視しながらの取引を
今回は限月の異なる商品間での取引をご紹介しましたが、場合によっては、意図と反して注文を出した時点から価格差が拡大したり、価格が常時と逆転し続けるということもあります。ですので、チャート上での価格差だけではなく、国内外の経済状態などを注視し取引していきたいですね。

“すぐ始めたい人のための「先物取引入門」”は、商品先物取引の基礎をフィスコの見解でコメントしています。

フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ

《HT》

 提供:フィスコ

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