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【市況】S&P500 月例レポート ― ITセクターが牽引、「バイ・イン・メイ」の5月相場 (1) ―


 S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●株式市場は5月に2.16%上昇し、年初来で1.18%上昇、レンジ相場が持続

 シンガポールでの米朝首脳会議(サミット)が本当に実現するかどうかは確実ではありません(主演女優の人種差別のツイートで打ち切りとなった人気TV番組『ロザンヌ』再開の可能性に比べれば)(6月1日執筆)。そして、市場は新たな最高値(サミット)には達しなかったようです。少なくとも今のところ、2018年1月26日に付けた過去最高値を5.83%下回り、2018年2月8日に付けた直近安値を4.82%上回っています。

 しかし、ウォール街では貿易(トレード)協議ならぬ取引(トレード)会議が行われたのか、市場の流れは全般的にメディア報道に左右される展開から、より銘柄固有の取引へと変化しました。上げ潮が全ての船を押し上げるのは素晴らしいことですが(5月のS&P 500指数は2.16%上昇しましたが、全ての銘柄が一様に押し上げられたわけではありません。情報技術セクターは7.13%上昇しましたが、電気通信サービスセクターは2.28%下落しました)、過去3ヵ月に及ぶレンジ相場は銘柄レベルの取引に移ったようです。

 通常、セクターや産業など上位レベルで再配分が始まり、銘柄レベルに移ります。したがってその結果、希望的観測ですが、長期投資家のポートフォリオは落ち着き、資産の入れ替えは通常の(そして継続的な)微調整や短期的なイベントへの一時的な反応にとどまるでしょう。そうなれば、相場は底堅さを増し、業績改善の持続や税金効果による消費支出拡大といった前向きなファンダメンタルズを背景に一段と上昇し、悪材料が浮上しても吸収できるとみられます。

 ファンダメンタルズに関しては、市場は現在の株価収益率(PER)を引き続き懸念しています。現在PERは3月時点の12ヵ月予想1株当たり利益(EPS)に基づくと、営業利益ベースでも公表利益ベースでも20倍を超えていますが、現時点で市場は前払いを良しとしているようです(2018年末の予想EPSによるPERは17~18倍、2019年末予想では15~16倍です)。しかし、利益の順調な伸びが続かない場合、前払い分の調整が必要になり、PERが許容可能な水準になるまで株価は下落する可能性があります。

 バーで交わされるような会話よりも、トレーディング・フロアの動向に関心がある向きには、それぞれ1兆ドルを目指していた3つのレース(既に終了しました)についてお話ししましょう。

1. S&P 500指数構成企業全体の1年間の株主還元額(配当と自社株買い)

2. Appleの時価総額(Apple株のトレーダーが推していましたが、彼らは今度私に一杯奢る必要がありそうです)

3. 米国の財政赤字額(議会予算局(CBO)は2020会計年に1兆ドルに達するとの試算を発表)

 私はこのレースに勝つのはS&P 500指数だと考えていました。それは2018年6月終了の12ヵ月間で届くと思っていたのですが、2018年第1四半期にあと数十億ドルとなりました。

・私のこの予想は外れました(ただしApple株のトレーダーほどではありません)。自社株買いは既に四半期ベースの記録を更新し、2018年第1四半期に増加を続け、任務を完了しました。

・指数構成銘柄の98.6%が決算発表を終え、第1四半期の自社株買いは1,872億ドルとなり、これによって配当と自社株買いによる12ヵ月間の株主還元額は初めて1兆ドルを突破しました。

・Appleの時価総額1兆ドル達成に関しては、直近の報告となる2018年4月20日付四半期報告書(10Q)の表紙に基づくと、同社の発行株式数は49億1,513万8,000株なので、1兆ドルの達成には株価が203.46ドルになる必要があります(5月末の終値は186.87ドル)。

●5月のまとめ

 ○米国10年国債利回りは、2011年以来の高水準となる3.13%まで一時上昇しましたが、その後に戻し、最終的には2.87%で月を終えました(過去20年間の終値での最高は2000年1月の6.78%、最低は2016年7月の1.37%)。米国30年住宅ローン金利は2011年以来7年ぶりの高水準となる4.80%まで上昇した後、4.56%で5月を終えました。

 ○原油価格は上昇基調が続き、2014年以来となる1バレル=72ドルを突破しましたが(過去20年間の最高値は2008年7月の145ドル、最安値は2016年2月の26ドル)、6月22日に開かれる石油輸出国機構(OPEC)の会合を機にサウジアラビアとロシアが増産に動くとの見方を受けて下落し、66.93ドルで5月の取引を終えました。

 ○VIX恐怖指数は10.91まで低下する局面もありましたが(1990年の指数開始以来の終値での最低は2017年11月の9.14、最高は2008年11月の80.86)、最終的には4月末の16.05から低下して15.43で5月を終えました(月中の最高は18.78)。

 ○指数構成銘柄の98.6%が決算発表を終え、第1四半期の自社株買いの総額は1,872億ドル(なお増加中)に上り、12ヵ月間の株主還元総額(配当と自社株買い)は初めて1兆ドルを超えました。

※「ITセクターが牽引、「バイ・イン・メイ」の5月相場 (2) 」へ続く

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