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【特集】トマト株とヨーグルト株、株式市場で“密かな注目”のワケ <株探トップ特集>

拡大が続く機能性表示食品マーケットのなかで、とりわけ好調なのがヨーグルトとトマトジュース。内需株に株式市場の視線が向くなか、関連銘柄の動向を探った。

―保護主義警戒で内需株脚光、機能性食品マーケット拡大で先行き期待―

  機能性表示食品のマーケットが拡大している。なかでもヨーグルトとトマトジュースの伸びが大きく、新商品の投入が相次いでいる。しかし、2015年の制度開始時には株式市場でもスポットライトが当たったものの、最近は機能性表示食品やトクホ(特定保健用食品)などへの関心度はあまり高いとはいえない。ただ、トランプ米政権の保護貿易主義が台頭するなか、主力株が手掛けにくいという状況もあり、内需株の一角として再び脚光を浴びる可能性もある。拡大を続けるヨーグルトとトマトジュース市場の現状と株価の行方を追った。

●「機能性表示食品の伸びが大きい」

 機能性表示食品は、事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品。この「機能性表示食品制度」は15年4月にスタートしたが、販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などを消費者庁長官へ届けることで表示できるのがポイントだ。消費者庁長官の個別の許可を受けたトクホほど敷居が高くなく、メーカーも取り入れやすい制度いえる。

 市場調査の富士経済の「機能性表示食品、特定保健用食品(トクホ)などの国内市場調査」によると、生活習慣病予防では「機能性表示食品の伸びが大きい」と指摘し、「制度開始以降、『恵 megumi ガセリ菌SP株シリーズ』(雪印メグミルク)や『カゴメトマトジュース』(カゴメ)の継続的な伸び、及び新商品の発売が相次いでいることもあり、2017年には前年比68.9%増(市場規模679億円)が見込まれる。今後も商品数の増加によって伸びが期待される」と分析。また、18年も同11%増の754億円と市場の拡大を予測している。

 背景には、言われて久しい「健康志向の高まり」があるが、もはや高まりを超越し「健康生活の一環」ともいえる存在となったことが、市場拡大につながったといえそうだ。

●カゴメは「リコピン」でガッチリ!

 ここ、急速に注目を集めているのが「トマトジュース」市場だ。温故知新ともいえる存在だが、その生活習慣病に対する効能が改めて評価されており、ニーズを掘り起こしている。カゴメ <2811> によるとトマトの赤い色素「リコピン」は、「抗酸化作用」が強く、動脈硬化、糖尿病、しみ対策などに加え、さまざまな生活習慣病に対する効能があるという。

 トマトジュースといえば、前述のカゴメとデルモンテブランドを擁するキッコーマン <2801> が双璧をなす存在で、ここにきて相次ぎ機能性表示食品を投入している。

 カゴメでは、今年1月から「カゴメトマトジュース」について、「血中コレステロールが気になる方に」と「血圧が高めの方に」の2つの機能性を表示した商品を機能性表示食品として発売している。同社では「トマトに関しては、以前から機能性研究を深く行っており、(機能性表示食品については)顧客に対して価値の約束をきちんと届けるための有効な制度だと思っている。今後については未定だが、トマトに限らず野菜全般に対し拡充していく方針だ」(広報グループ)と注力姿勢を強める。

 6日、同社はピザソースなど一部製品の自主回収を発表したが、「業績への影響については、全体からすると軽微」(同)だという。株価は、4月10日に上ヒゲで直近高値4020円をつけた後は3800円近辺を挟みもみ合い続けている。6日に自主回収を発表し、翌日これを嫌気し若干売られたものの、ここ数日は堅調な展開となっており、株価に大きな影響はみられない。

●キッコマン、「デルモンテ」は新たなニーズ獲得

 一方、キッコーマンでは、グループ会社が製造販売をする「デルモンテ」ブランドの「食塩無添加トマトジュース」「食塩無添加野菜ジュース」を「血圧が高めの方に」と表示し機能性表示食品として5月から発売した。これについて同社では、「より機能性が訴求できることから機能性表示食品とした。もともとロングセラーの商品だが、今までの顧客に加え、今回血圧が高めの方にも手に取っていただくことができるというメリットがある」(コーポレートコミュニケーション部)と、その理由を話す。機能性表示をうたうことにより、新たなニーズを獲得することで、今後業績にも寄与しそうだ。株価は上昇基調を継続。4月以降、上げ足早めており上場来高値圏を舞う展開が続いている。

●今後の展開が気にかかる伊藤園

 トマトジュース市場の拡大を受けて、機能性表示食品に限らず多くのメーカーが商品を投入している。「理想のトマト」、「熟トマト」などを扱う、飲料大手の伊藤園 <2593> >も、今後の展開が気にかかる1社だ。同社は、1日取引終了後発表した19年4月期連結業績予想で、営業利益が前期比4.3%増の230億円、純利益は同11.5%増の140億円と増収増益を見込んでいる。主力の緑茶飲料「お~いお茶」のさらなる強化を図り、「健康ミネラルむぎ茶」「TULLY’S COFFEE」「1日分の野菜」「充実野菜」などの個別ブランドについても強化し飲料製品の伸長を見込む。6月に入り株価は上放れ、きょうも一時5040円まで買われ年初来高値を更新している。そのほか、ダイドーグループホールディングス <2590> は「おいしいトマト」、「さらっと。トマト」、「国産トマトジュース」などを手がけており目を配っておきたい。

●「ガセリ菌SP株」で雪印メグ

 一方のヨーグルトは、ここへきてのブームもさることながら、長きにわたって健康食品としての高い地位を確立してきた。前出の富士経済のレポートの調査では、「従来は便通改善が中心だったが、17年頃から腸活と関連させた整腸を表示する商品が増えている」としており、新たな切り口も好調を続ける要因といえそうだ。

 雪印メグミルク <2270> は機能性表示食品「ガセリ菌SP株シリーズ」のヨーグルトを販売するが、積極的な広告展開で攻勢をかけている。同社では「ガセリ菌SP株シリーズ・ドリンクタイプの生産ラインも増強しており、今後も伸ばしていく方針」(広報IR部)としている。また、内臓脂肪を減らすのを助ける「恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト」をトクホとして再発売するなど注力姿勢を強めている。株価は、4月9日に3340円まで買われ年初来高値を更新も、5月以降は軟調展開を強いられている。現在は3000円割れの状況にあり、ここからの動向は注視しておきたい。

●明治HD、グリコ、フジッコに妙味

 数年前「LG21」で株式市場においても話題を呼んだ明治ホールディングス <2269> だが、トクホでは「明治ブルガリアヨーグルト」が安定した存在となっている。ただ、ヨーグルトは前期の大幅な市場拡大の反動で、売上高は前期を下回っている。同社が、5月11日に発表した18年3月期の連結経常利益は前の期比7.9%増の958億7700万円になり、19年3月期も前期比3.8%増の995億円になる見込みで、6期連続で過去最高益を更新する見通しにある。株価は3月2日に7480円まで売られ昨年来安値を更新したが、これを底に上値指向を強めジリ高歩調継続。現在は9300円近辺で推移している。

 江崎グリコ <2206> は、東日本で限定発売していた「BifiXヨーグルト 甘くないプレーン」(375g)の販売エリアを3月から全国へ拡大した。同商品は機能性表示食品「BifiX」シリーズ初となる砂糖ゼロタイプのプレーンヨーグルトだという。また、機能性表示食品やトクホ以外でもヨーグルトの活躍の舞台は広がっている。株式市場でも話題を呼んだ「カスピ海ヨーグルト」のフジッコ <2908> にも注目したい。同社は、カスピ海ヨーグルト由来の乳酸菌「クレモリス菌FC株」によるサプリメント「善玉菌のチカラ」を、お通じを改善する機能性表示食品として3月から通販限定で発売している。

 トマトジュース対ヨーグルト、ぽいと出たての新参者とは少々ワケが違う。もはや健康を支える2大食品といっても過言ではない存在だ。両食品は機能性表示に関わらず、体への効能はよく知られるところでもある。ここ、内需株の評価がジワリ高まるなか、出番到来となるか期待が高まる。

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