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【特集】ソニーも参入“タクシー配車システム”、激化する競争勝ち抜く企業は <株探トップ特集>

激化するタクシー配車システムの主導権争い。背景には訪日外国人需要の取り込みや、解禁が意識されるライドシェアなどがある。

―転換期迎えるタクシー業界、ライドシェア解禁視野に顧客囲い込み―

 タクシー 配車システムの主導権争いが激化している。背景には、増加する訪日外国人の需要などを取り込む狙いがあるほか、昨年夏から秋にかけて実証実験が行われた「事前確定運賃」や現在実証実験が実施されている「相乗り」といった新サービスを見据えた動きがある。また、自家用車に乗客を乗せる「ライドシェア」の解禁が意識されている面もあり、タクシー業界は大きな転換期を迎えている。

●ソニーはタクシー6社と新会社設立へ

 ソニー <6758> は2月20日、大和自動車交通 <9082> [東証2]やグリーンキャブ(東京都新宿区)、国際自動車(東京都港区)、寿交通(東京都三鷹市)、チェッカーキャブ無線協同組合(東京都中央区)、日の丸交通(東京都文京区)のタクシー会社6社と配車サービスアプリなどを開発・運営する新会社を今春にも設立すると発表した。参加するタクシー6社は現在、都内最大規模の計1万台を超えるタクシー車両を保有しており、ソニーは新会社に対して需要予測などに向けたAI(人工知能)技術を提供する予定。新会社ではタクシーのデータ利活用や決済代行サービスの提供、タクシーを活用した生活支援サービスなどの企画運営も想定しており、さらに参加する事業者が増える可能性がある。

●トヨタは国内配車アプリ大手に出資

 他社に先駆け2011年からタクシー配車アプリ「全国タクシー」を提供している日本交通(東京都千代田区)グループのJapanTaxiは2月8日、トヨタ自動車 <7203> とタクシー事業者向けサービスの共同開発などを検討することで基本合意したと発表。あわせて、トヨタに対して第三者割当増資を実施し、約75億円を調達することも明らかにした。現在「全国タクシー」は約400万ダウンロード、車両登録数は全国のタクシー車両の約4分の1となる約6万台のネットワークを誇る。両社はタクシー向けコネクティッド端末や配車支援システムの開発、ビッグデータ収集といった分野での協業を検討する。

 また、スパークス・グループ <8739> [JQ]は2月26日、15年11月に設立した「未来創生ファンド」がJapanTaxiに対し、17年6月に続く2度目の出資(10億5000万円)を行うと発表。JapanTaxiはトヨタとスパークスから調達した資金で、アプリの機能改善やタクシー事業者が抵抗感なくデジタル化を促進できる環境を整備するとしている。

●ソフトバンクは中国配車大手と協業

 さらに、ソフトバンクグループ <9984> は2月9日、中国の配車サービス大手である滴滴出行と日本のタクシー事業者向けサービスで協業すると発表。これはタクシー事業者とドライバーの稼働率向上を目的に、滴滴出行のAI技術を活用してタクシー配車プラットフォームの構築を目指すもので、18年中をメドに大阪や京都、福岡、東京などで実証実験を行う予定だ。

●第一交通は米ウーバーとの提携を検討

 滴滴出行とは第一交通産業 <9035> [福証]も17年11月に、アプリを使ったタクシー配車サービス導入の連携に向けて協議中だと発表している。また、第一交通は今年2月に一部で報じられた配車サービス大手の米ウーバーテクノロジーズとの提携について、「協議や検討を行っていることは事実」と否定しなかった。

 このほかにも、モバイルクリエイト <3669> 子会社のトランが1月、自社運営するタクシー配車アプリ「らくらくタクシー」とアイホン <6718> が製造販売する集合住宅用インターホンとの連携対応で基本合意したと発表。ディー・エヌ・エー <2432> は今春にもAIを活用した配車アプリ「タクベル」を正式リリースする予定で、タクシー業界を巡る動きが活発化している。

●クレセゾンはシンガポール配車大手と資本・業務提携

 配車システムはサービス改善の柱になる一方、タクシー業界が警戒するライドシェアの基盤としても利用される。ライドシェアは現在、国内では道路交通法で原則禁止されているが、米国や中国などでは広く普及しており、米調査会社の試算では20年の世界市場規模は約3兆2500億円と15年比で倍増する見通し。国内の配車システムの恩恵がタクシーだけにとどまれば、サービス面で世界から取り残される恐れがあり、政府の規制改革推進会議ではライドシェア解禁に向けた議論が進められている。

 こうしたなか、クレディセゾン <8253> は3月5日、シンガポールの配車サービス大手、グラブと資本・業務提携し、新会社を設立して東南アジアでスマートフォンを活用したローン提供を行うデジタルレンディングを開始すると発表。グラブには豊田通商 <8015> や東京センチュリー <8439> なども出資しており、各社はシェアリングビジネスに関する新たな事業創出などの狙いがあるとみられる。

●ライドシェアサービス運営のガイアックスにも注目

 訪日外国人の増加によるホテル不足問題が民泊を後押ししたように、東京五輪開催に伴う交通需要がライドシェア解禁につながる可能性があり、関連銘柄をチェックしておきたい。

 政府による議論の進展次第で、相乗りマッチング型ライドシェアサービス「notteco」を運営しているガイアックス <3775> [名証C]、会員向けに駐車場シェアリング「B-Times」を展開するパーク24 <4666> 、カーシェアリングプラットフォームを提供するユビテック <6662> [JQ]、米ウーバーテクノロジーズと組みアフリカでウーバーに登録するドライバー向けに中古車の販売を始めたIDOM <7599> 、モビリティ向けIoTプラットフォームを手掛けるスマートバリュー <9417> [JQ]などが注目されそうだ。

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