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【特集】もう一つの危機“物流施設”人手不足、脚光「省人化」関連株 <株探トップ特集>

物流施設の人手不足は“省人化”投資を活発化させている――。

―ドライバー不足より深刻な仕分け作業の人材確保、活発化する自動化を追う―

 2017年は、数年前から業界内で問題化していた物流業界のドライバー不足が一般的にも広く知られるようになり、その対策として宅配便の値上げなどが始まった年だった。ヤマトホールディングス <9064> 傘下のヤマト運輸では、昨年10月に個人向け料金について、消費増税時を除いて27年ぶりの値上げを実施。SGホールディングス <9143> 傘下の佐川急便も11月に個人向け料金を引き上げた。

 ヤマト運輸では、値上げ分を原資として人材の確保などを進める予定だが、外食や建設、小売など他の業界でも人手不足は深刻化しているだけに、すぐに解消できる問題ではない。また、ドライバー以上に、物流業界ではターミナルなどでの仕分け作業で人材確保が難しくなっており、こちらの対策も急務となっている。同社では、神奈川県に小規模な新物流センターを作り、省人化の実証実験を行うとしており、物流施設の自動化に向けた動きが活発になっている。

●政府も物流業界の人手不足に本腰

 ヤマト運輸に限らず、深刻化する物流業界の人手不足に対して、政府も対策に乗り出した。昨年7月28日に閣議決定された「総合物流施策大綱(2017年度~2020年度)」と、それに基づき策定された「総合物流施策推進プログラム」では、新技術を活用した“物流革命”を進めるとして、トラックの隊列走行や自動運転による運送効率化、ドローンの活用などと並んで物流センターでの自動化・機械化などを進めることが盛り込まれた。

 これまでも物流業界では自動化技術が導入されてきたが、主に生産性の向上を目指したものだった。政府の方針もあり、今後は労働力不足への対応手段が主な目的となりそうだ。

●ニトリが導入した「Butler」に注目集まる

 こうしたなか、物流業界で注目を集めているのが、ニトリホールディングス <9843> 系の物流会社が昨秋導入した、人工知能(AI)制御によるロボットシステム「Butler(バトラー)」だ。インド企業が開発し、日本ではGROUND(東京都江東区)が独占販売権を保有する同システムは、ピッキング作業指示に合わせて、商品棚が自動で作業場に移動する。また、出庫する頻度が高い商品は最短距離で運べるように配置するなどのロケーション変更までするという。GROUND社には、大和ハウス工業 <1925> グループが出資しており、同社の物流センターにもその技術やノウハウが用いられている。

 また、中国ギークプラス社もバトラーと同様の搬送ロボット「EVE(イヴ)」を開発し、アリババグループに納入しているが、大和ハウスグループのアッカ・インターナショナル(東京都港区)や、協栄産業 <6973> が販売を手掛けており、今後の普及が期待されている。

●次世代型物流センターに取り組む日立物流

 一方、無人化への取り組みでは、日立物流 <9086> も先行している。同社は20年度までに倉庫内作業を一貫して自動化させた「次世代型物流センター」を完成させる予定で、現在、R&Dセンターで実証実験を進めている。

 その成果も徐々に表れており、昨年5月に稼働した土浦2期物流センター(茨城県かすみがうら市)では、日立製作所 <6501> が開発した搬送ロボット「Racrew(ラックル)」を導入し、前後の搬送作業を自動化させ、省人化を達成。また、19年に自動倉庫を増築する富山4期物流センター(富山県上市町)には、無人フォークやオートラベラーなども導入する予定だ。

●荷下ろし作業にも自動化の波

 新たな技術としては、豊田通商 <8015> やオムロン <6645> グループなどが出資するKyoto Robotics(キョウトロボティクス)が注目されている。同社は、パレットに積まれた荷物の荷おろし(デパレタイズ)を自動化するシステムを開発し6月から販売する。独自の画像認識技術を使い、取り出す箱の事前登録を不要にしたのが特徴で、同じ箱でも異なる商品箱の混流でも対応が可能だという。

 また、IHI <7013> は、パレットに積まれた段ボールの荷おろし作業を自動で行うデパレタイズシステムに世界で初めてAIを搭載し、販売を開始した。荷おろし作業は、労働災害につながりやすい重労働のため、作業者の定着率が悪く、同作業の人手不足解消につながると期待されている。

●オートストアなどにも注目

 このほか、マテハンメーカーの代表格であり、システムの統合力に強みを持つダイフク <6383> では、ファンケル <4921> が08年に稼働させた物流センターに各種ピッキングシステムや高速自動仕分け装置などからなる物流システムを構築。約1万4000枚のRFIDタグを活用し各工程への搬送をコントロールする仕組みが特徴で、当日出荷率や誤出荷率が改善したという。

 さらに、岡村製作所 <7994> は、ノルウェー社と販売契約を結び、14年から自動倉庫型ピッキングシステム「オートストア」を販売し、既にニトリ系物流会社やグローリー <6457> などに納入している。これまで一般的な物流センターで主流とされてきた保管型の自動倉庫に比べて省スペース化が図られるとして、注目されている。

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