【特集】【新年3大テーマ(3)】仮想通貨 ―お楽しみはまだこれから、金融革命は止まらない <株探トップ特集>
SBI <日足> 「株探」多機能チャートより
―市場参加者はイノベーターからアーリーアダプターへ、いまだ巨大な開拓余地―
昨年、世界の金融市場の話題を独占した「仮想通貨 」。基軸通貨・ビットコイン の急騰に次ぐ急騰は、市場関係者の度肝を抜くのに十分なインパクトを与えた。そのビットコインに対して、「金融市場に革命をもたらす」との声が上る一方、「17世紀のチューリップバブルの再来」との見方もあり、評価は真っ二つに割れている。果たして、新年も仮想通貨の狂騒曲が鳴り響き、株価は上昇を続けるのか。仮想通貨を巡る18年の見通しと、関連株の行方を探った。
●1年間で20倍強に急騰、「リップル」などオルトコインも人気化
昨年1月初旬に1ビットコイン=10万円前後で推移していた価格は12月には一時240万円近辺まで上昇。1年間で実に20倍強に急騰した。年末にかけては、130万円前後まで急落し、緊張が高まる局面もあったが、足もとでは190万円近辺へと値を戻している。昨年、ビットコインが急騰した要因には、ひとつには日本で改正資金決済法が施行されたほか、CMEなどが先物取引を開始するなど、法律面を含め金融市場のインフラ整備が進んだことが挙げられる。
さらに、ブロックチェーンに書き込まれる取引データのサイズを小さくするセグウィットと呼ばれる技術導入に加え、ハードフォーク(分裂)が盛んに行われ投機的マネーが流れ込んだ。加えて、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる仮想通貨を使った資金調達が活発化したことも人気に拍車をかけた。
直近では、オルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)の「リップル 」が銀行間送金に活用されるとの期待から価格が急騰。リップルやネム 、リスク 、ダッシュ などオルトコインには「昨年は価格が100倍以上に急騰する通貨が続出した」(仮想通貨市場関係者)という。
●人口比浸透率は低位で開拓余地は膨大、国際的大手企業の参入期待も
ただ、仮想通貨人気に沸く一方、米大手銀行の首脳などからは「ビットコインは詐欺」との批判的な声が浴びせられたほか、中国や韓国ではICOなど仮想通貨に関わる規制を強化するなど風当たりは厳しさを増している。そんななか、市場の関心は「昨年あれだけの急騰を演じたビットコインなど仮想通貨は今後も価格上昇が続くのか」という点に集中している。
ある市場関係者は「さすがに、ビットコインの上昇ピッチは早過ぎた。今年はリップルやイーサリアム、ネムといったオルトコインが脚光を浴びるのではないか」と、ビットコイン人気の一服を予想する。もっとも、仮想通貨の基軸であるビットコインに対して「短期はともかく、中長期的な潜在成長力をみれば、実力はこんなモノではない」とみる向きは少なくない。
大手仮想通貨取引所、ビットバンクの末廣紀之社長は「昨年、仮想通貨市場は初期段階のイノベーター(革新者)からアーリーアダプター(初期適合者)のマーケットへと移行した。これは大きな意味を持つが、人口を考慮した仮想通貨の浸透率は低く、まだまだ開拓余地は大きい」と指摘する。ただ、「ビットコインの強みだったコストの安さや送金スピードが市場の拡大とともに失われてきている。この点を改善することが必要だ」とするものの、これに関しては「技術面の進歩で克服できるのではないか」と前向きにみている。
市場では、このスピードやコストといった送金面の強みが評価され、リップルの価格が急騰するなど、“第2、第3のビットコイン探し”でオルトコインへの物色が広がっている。また、技術面ではビットコインの処理速度を上げる新技術として「ライトニング・ネットワーク」に注目する声が上っている。さらにビットコインETFなどへの思惑が浮上。さらに、ゴールドマン・サックスのような大手金融業者の仮想通貨市場への参入期待、アマゾン・ドット・コムのような大手インターネット企業の決済通貨への採用思惑もある。これらの期待が実現化すればビットコイン価格は再度、上値追いに転じるだろう。
●SBI、Fastep、オウケイウェイヴ、ULSグループなど注目も
こうしたなか、足もとでは仮想通貨関連株の物色にも新たな潮流が見え始めている。リップル社に出資するなど、かねてから仮想通貨に注力するSBIホールディングス <8473> などが関係する銀行送金システムが3月にも一部で開始される見通し。「送金革命」が進むなか、SBIのほか同グループ会社のソルクシーズ <4284> 、仮想通貨売買やマイニング(採掘)に関係するGMOインターネット <9449> 、セレス <3696> などが中核銘柄に浮上している。
さらに仮想通貨取引所などを運営するQUOINE(東京都千代田区)グループが発行する独自仮想通貨「QASH」の独自ブロックチェーンの開発に関係するULSグループ <3798> [JQ]や地域通貨やブロックチェーン技術に関係するアイリッジ <3917> [東証M]、イーサリアムなどのマイニングや香港での仮想通貨取引所開設に絡むファステップス <2338> [東証2]、マイニング事業に進出するピクセルカンパニーズ <2743> [JQ]などへの期待が高い。
さらに、仮想通貨関連事業の合弁会社を設立したVOYAGE GROUP <3688> 、ブロックチェーン技術を持つカウラ社と協業するクロスキャット <2307> [JQ]、シンガポール企業とICO実施に向けた動きを進めるオウケイウェイヴ <3808> [名証C]、それにメタップス <6172> [東証M]なども注目だ。
さらに、ブロックチェーン推進協会(BCCC)の中心的役割を演じているインフォテリア <3853> [東証M]やマネーパートナーズグループ <8732> 、リミックスポイント <3825> [東証2]、フィスコ <3807> [JQG]などからは依然、目が離せないだろう。
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