【特集】2018年、いよいよ「個人消費」拡大へ―関連株、集まり始めた注目 <株探トップ特集>
ビックカメラ <日足> 「株探」多機能チャートより
―消費関連株に国策の追い風が吹く時、関連銘柄の動向を追う―
2017年も幕を閉じようとしている。12年12月の第2次安倍政権の発足から早くも5年が経った。アベノミクスについては、日経平均株価がバブル崩壊後の高値を更新、求人倍率も43年10ヵ月ぶりの高水準に100点満点と言える部分もあるが、肝心かなめの消費拡大については、いまだ合格点にはほど遠い。しかし最近では株式市場の好調も追い風に、じわり消費拡大の気配も出てきている。関連銘柄の動向と今後の展開を追った。
●まだら模様も、風向きは追い風
ここ、百貨店を筆頭に小売り関連の一角に明るさが見えてはいるが、一部メディアの調査などでは消費拡大について懐疑的な見方も少なくはない。事実、売り上げ拡大の波に乗る企業があると同時に、いまだ苦境から脱しきれない企業も多い。まだら模様の消費関連セクターだが、株式市場においては、実態に先んじて消費拡大の波に乗る関連銘柄に注目が集まりそうだ。
東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は「現在は、企業の好業績が賃金の伸びにあまり反映されていないという現実があり、景気回復を実感としてとらえられていない国民も多い。したがって、株式市場でも消費関連株が物色テーマとして盛り上がりにくい面はある」としながらも「少し先を見た場合、安倍政権が掲げる“働き方改革”や“人づくり革命”といった国策は内需振興につながる。その切り口で言えば消費関連株は国策に乗り風向きは追い風といってよい」指摘する。さらに「日経平均の上昇自体が資産効果をもたらし、消費を刺激するということも忘れてはならないだろう。富裕層中心に資金が流れる百貨店などはその恩恵にあずかることが予想される。また、一時の爆買いは鳴りを潜めたとはいえ、訪日客は今もなお増勢の一途にあり、インバウンド需要はこれからも継続的に期待できる」と前向きな見解を示している。
●百貨店は日経平均上昇に乗る
確かに、百貨店株については、高級腕時計などをはじめとして高額商品の売れ行きが好調だ。ここ数年、インバウンド頼みだったともいえる高額消費だが、「最近では、国内消費も好調だ」(大手百貨店・広報)と潮流の変化がみられるのも事実だ。また前述の大塚氏の言葉を裏付けるかのように「日経平均株価の上昇は好影響」(同)ともいう。
高島屋 <8233> は25日の取引終了後、第3四半期累計(3-11月)の連結決算を発表。営業利益が前年同期比5.6%増となる217億1000万円、純利益は9.5%増の144億7700万円だった。個人消費が底堅さを増したことやインバウンド需要の堅調継続で、百貨店事業では高額品が引き続き好調に推移しボリュームゾーンの衣料品や雑貨なども復調に向かい始めた。株価も絶好調で年初来高値圏を舞う。またJ.フロント リテイリング <3086> も26日取引終了後に第3四半期累計(3-11月)の連結決算を発表、営業利益段階で前年同期比29.2%増の378億6000万円と好調で、こちらの株価も年初来高値圏で推移している。
三越伊勢丹ホールディングス <3099> は、21日取引終了後に18年3月期第3四半期決算で特別損失約43億円を計上すると発表。ただし、これはネクストキャリア制度の見直しを実施したことで、退職金の積み増しなどを行うことが要因。これを嫌気した格好で翌日には急落したが、押し目買いが入りほどなく上昇基調に復帰、再び年初来高値1469円を射程に捉えてきた。
好調の波に乗る百貨店株だが、市場関係者の間では、いまだ出遅れ感を指摘する声もあり、今後も注目場面が継続しそうだ。
百貨店株については、まさに高額消費の象徴ともいえるが、日本経済を一段の拡大に導くためには、日常生活に即した部分での消費の拡大という大きな壁を乗り越える必要がある。内需拡大が叫ばれるなか、より生活に密着した消費に関わる多くの業態においては強弱感が対立しているのが現状で、株式投資では勝ち組を見極める目が必要になる。
●ネット通販で攻勢かけるビックカメラ
消費拡大の波が顕著に表れる業態のひとつが家電量販店だろう。競争が激化する同業界において、さまざまな施策で攻勢をかけているのがビックカメラ <3048> だ。19日に楽天 <4755> と家電分野のインターネット通販で新会社を設立すると発表、18年4月からサービス開始の予定で今後の業績への寄与にも注目が集まる。また18年8月期は、連結経常利益が前期比6.7%増となる260億円を見込むが、インバウンド売り上げの想定が保守的との見方が強く、増額を予想する向きもある。13日に1722円まで買われ年初来高値を更新、現在は1600円近辺まで調整しているが、そろり押し目時との見方も出ている。
家電量販店では、同じく業績好調なケーズホールディングス <8282> に加え、衛生陶器メーカー中堅のアサヒ衛陶 <5341> [東証2]と11月にスマートハウス・リフォーム事業で業務提携したヤマダ電機 <9831> にも注目。住宅のリフォーム、リノベーションが脚光を浴びるなか目を配っておきたいところだ。
●“国内”も視野に入れるラオックス
家電量販店のなかでラオックス <8202> [東証2]は面白い存在だ。すでに、中国人観光客への免税品販売が中核になっており、まさにインバウンド株の象徴ともいえる。7月には「千葉ポートスクエアポートタウン」を開業、同社初となる飲食やエンターテインメント事業などを開始し、ワンストップで買い物(モノ)と体験(コト)を楽しむことを目指す。同社では「日本人も海外の方も同様に楽しんでいただけるよう考えた。地域とインバウンドの融合、さらに地域活性ということを含めて展開したいと思っている」(経営企画部)といい、「今後は、インバウンドに加え国内マーケットも視野に入れていきたい」(同)と話す。
業績もここにきて息を吹き返している。直近3ヵ月の実績である17年7-9月期(第3四半期)の連結経常損益が4億2600万円の黒字(前年同期3億2500万円の赤字)に浮上。また、11月30日には株主優待制度を7年ぶりに再開すると発表、株主優遇姿勢もみせていることから株価に再評価機運が高まる可能性もある。
●衣料小売りは“寒い冬”も味方
衣料小売りは、正念場が続くが一部明るい兆しも見えている。RIZAP傘下で再建をすすめるジーンズメイト <7448> は、28日の取引終了後に第3四半期累計(2月21日-11月20日)単独決算を発表した。売上高は63億8800万円(前年同期比4.8%減)、営業損益4億4700万円の赤字(前年同期4億4100万円の赤字)となり、営業赤字幅が小幅に拡大した。24時間営業の廃止や、不採算店舗を閉鎖したことが響いたという。ただ、店舗の減損損失がなくなり、最終損益は3億200万円の赤字(同6億6000万円の赤字)だった。これを受けてきょうは売られたが、22日の取引終了後に発表した12月度の売上高速報では、既存店売上高が前年同月比13.2%増と5ヵ月連続で前年実績を上回っており、再建に向けての動きが今後加速できるかどうかに注目が集まる。
そのほかでは、11月既存店売上高が4ヵ月連続で前年上回ったユナイテッドアローズ <7606> 、株価が急速に底値離脱の動きをみせているライトオン <7445> にも注目したい。
これら衣料小売りの売り上げを後押ししているひとつが今年の気候。平年に比べて気温が低いことが売り上げに寄与するが、季節要因を味方にできない企業もあることを考えると、やはりそこには企業努力があってこそといえる。
また、企業間の電子商取引サイトなどを展開するラクーン <3031> も消費拡大の恩恵を受けそうだ。主力の「スーパーデリバリー」の会員の獲得が進み収益は好調で18年4月期の連結売上高は前期比8%増の25億5000万円、営業利益は同17%増の4億9000万円見通しと増収2ケタ増益を見込んでいる。越境ECも伸びが顕著で成長エンジンのひとつとなっており、19年4月期も2ケタ利益成長ペースが続く公算が大きい。株価は、ここ上げ足速めている。
●インバウンドの波に乗るドラッグストア
消費拡大の思惑が確信に変わるまでは、まだ時間がかかりそうな現状においてインバウンド消費に寄せる期待が大きいのも事実だ。9月中旬、一部報道で中国が外貨の流出を警戒して日本への団体旅行を制限しはじめていると伝わり、関連株が下落するなど衝撃が走ったことも記憶に新しい。その後、報道の影響も沈静化し再び上昇基調を強めているが、これもインバウンド消費に対する期待の大きさを物語るものだろう。本格的消費拡大に向けては、政策的な消費喚起策に加え、さまざまな企業努力はもちろんだが、インバウンド消費が大きなカギを握ることはいうまでもない。
そのインバウンド消費を追い風に業績好調なのが、マツモトキヨシホールディングス <3088> 、サンドラッグ <9989> などドラッグストア関連株だ。両銘柄ともに株価は高値圏で頑強展開を続けている。そのなかマツキヨHDは、インバウンドだけではなく中国における越境EC、タイでの「マツモトキヨシ」店舗も順調に拡大しており、それぞれの国情に合わせ最適な展開を行うことで、国内外において外国人客需要の獲得を図っている。
また、インバウンド関連株としての存在感は薄いが、ドラッグストアでは北陸地盤のクスリのアオキホールディングス <3549> にもそろり目をやりたい。同社は27日に、12月度の月次営業速報を発表。既存店売上高は前年同月比8.5%増となり、前月度の伸び率(3.4%増)から拡大している。株価は、25日に直近安値5780円を底に出直る気配も。
●ダブル効果でコメ兵
インバウンド関連の一角として脚光を浴びたコメ兵 <2780> [東証2]も忘れてはならない。同社はバッグ、貴金属など中古のブランド品を扱うが、中間期の連結営業損益は2億4000万円の黒字予想に対し4億6100万円の黒字(前年同期は6700万円の赤字)で着地。大阪・梅田店などの大型店出店効果が寄与し、18年3月期の連結営業利益は会社予想13億3000万円に対し増額期待もある。インバウンドの追い風に加え、高額品消費がじわり拡大するなか、このダブル効果でここからの活躍期待も高まる。株価は12月7日に2441円まで買われ年初来高値を更新、その後は軟調展開を続けていたが、ここにきて調整一巡感も漂う。
こうした状況下、20日に日本政府観光局が発表した11月の訪日外客数は、前年同月比26.8%増の237万8000人となり、16年11月の187万5000人を50万人以上上回り、11月として過去最高を記録した。また、1 月からの累計は2616万9000人となり、16年の2404万人を既に超えている。いまだ衰えをみせぬインバウンドの追い風、関連銘柄への恩恵は続きそうだ。
●上値指向のスタートトゥデイ、バリューゴルフ
前出の大塚氏は「当面のポイントは来年の春闘だ。来年の春先、2月頃から4月にかけて賃上げの動きを織り込みながら消費関連株は刺激される環境となりやすい。何といっても賃上げは、働き方改革と並び安倍政権が民間に強く要望している項目だ。実施した企業に税制優遇措置を用意するなど、まさしく国を挙げての命題。そして、その延長線上に消費の拡大がある」と語る。また「消費関連の範疇で対象となる企業や業態は多岐にわたるが、相対的に優位なポジションにあるのは、消費に絡むネット関連企業と考えている。例えばスタートトゥデイ <3092> やバリューゴルフ <3931> [東証M]のような銘柄は、株価も上値指向が強い」という。
消費の拡大傾向については、取材を進めるなか「明るさはあるものの決して楽観視できない」という声が多くの企業担当者から聞かれた。安倍政権の目指すところは内需拡大にあり、本格的な消費の拡大はまだ緒に就いたばかりだ。年が明けると間髪を入れず企業の第3四半期決算発表がスタート、勝負所はすぐにやってくる。
★元日~3日に、2018年「新春特集」を一挙、“24本”配信します。ご期待ください。
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