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【特集】サンリツ Research Memo(4):高価で繊細かつ複雑な製品を、壊さず期日どおりに顧客の求めに応じて運ぶ

サンリツ <日足> 「株探」多機能チャートより

■事業概要

2. 強みの梱包技術
サンリツ<9366>の強みは梱包技術にある。梱包とは、トラックや船、飛行機で製品を運ぶ際、壊れないように保護することを言うが、もともと製品自体が丈夫で画一的な大量生産品ならば、梱包に関する高い技術はいらない。大手物流企業が手掛けるのがこうしたサービスで、梱包は保管や運送といった本来の業務に付け足しただけの作業に過ぎず、標準化や定型化によって規模のメリットを追求しやすい簡単なものになっている。

一方、制御機器や通信機器、医療機器などのように、製品が高価だったり、精密だったり、大小不定形だったりすると、特別丁寧に梱包しなければならない。そうした製品の梱包は、工場に近接したエリアで手作業によって行われ、もちろんメーカーにとっても物流業者にとっても本業と言えないため、近隣の梱包業者に下請けに出されることが多い。そこに「梱包技術」があるのだが、規模のメリットが効かないため、梱包技術を売りにする業者は中小企業が非常に多い。梱包を核にする総合物流企業で大手上場企業と言えば、同社くらいだと思われる。

梱包する際、安全性はもちろん、低コストでスピーディに包む、運搬しやすい、開けやすい、再利用しやすい(ゴミを出さない)など、顧客のコスト削減や環境負荷低減、スピードアップといった複数のニーズに応えなければならない。高価で繊細かつ複雑な製品を、壊さず期日どおりに顧客の求めに応じて安全に運ぶ。それをトータルで実現できるのが同社の強みである。また、梱包がコアビジネスであるからこそ、逆に同社から、製品の形状やその特質、取引先の事情などを踏まえた、梱包をベースにした物流提案をすることもある。

梱包の材料は木材や鉄、段ボールなどである。段ボールは汎用性があるため材料として使いやすいが、木材や鉄まで幅広く手掛ける物流企業はそう多くない。しかも同社は総合物流の機能も有している。このため、海外に輸出する際など、梱包する場所と製品を保管する場所が同一であるため梱包・保管・輸送が1ヶ所ででき、顧客にとって非常に利便性が高い。また、工作機械などかなり大きな精密機器は、クレーンなどの設備や専門的な梱包技術が必要になるため、同業の物流企業から梱包を依頼されることすらある。

顧客の要望を正確に実現するには、オーダーメイドの「包装設計」が必要になる。包装設計のプロセスは、製品の形状や特性、流通条件など製品における諸条件の詳細なヒアリングに始まる。そして、豊富な実績やデータを基にCADを使って迅速に設計するが、もちろん複雑な形状にも対応可能である。CADデータを大型サンプルカッターに転送・出力し、その場で試作品を確認する。流通過程で受ける衝撃や振動、温度条件などを多角的にシミュレーションし、適正な包装設計にフィードバックして完成品にする。

こうした作業の積み重ねにより、同社の梱包技術はますます高くなる。このため、日本におけるパッケージ技術の最高水準を決定する、(社)日本包装技術協会主催の「日本パッケージングコンテスト」では受賞の常連となっている。また、同社開発の「検品工程低減・RFIDタグを利用したリターナブルBox」が、世界包装機構(WPO:World Packaging Organization)主催のパッケージングコンテスト「World Star2017」の輸送部門において、並み居る輸送企業を差し置いてワールドスター賞を受賞した。梱包業界ばかりか、世界の物流業界の中においても豊富な実績と高い技術力が評価されたのである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《NB》

 提供:フィスコ

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