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【特集】雨宮京子氏【夏バテの行方、8月相場のすごし方】(1) <相場観特集>

雨宮京子氏(経済ジャーナリスト)

―相次ぐ重要イベント前に膠着感、夏枯れ相場は続くのか―

 週明け31日の東京株式市場は膠着感の強いなか、日経平均株価が2万円を割り込んだ水準で小動きに終始した。投資家マインドも夏バテ気味の様相だが、月替わりで果たして視界が変わる可能性はあるのか。本格化する企業の決算発表に加え、今週は3日に内閣改造、週末には米7月の雇用統計発表を控える。8月相場を目前に、全体の見通しだけでなく個別の銘柄観でも定評のある市場関係者2人に意見を聞いた。

●「利益確定優先、キャッシュポジは高めに」

雨宮京子氏(経済ジャーナリスト)

 株式市場は引き続き方向感が定まらないなか、全体指数はボックス圏での往来が続きそうだ。まず、外部環境がはっきりしない。内憂外患というべき状態で、外は北朝鮮問題が重荷となり、国内では政局不安が取り沙汰されている。3日の内閣改造は根本的な安倍政権の支持率回復にはつながらないだろう。ただ、内閣改造とセットで安倍首相が経済対策を打ち出すとの思惑がマーケットにポジティブに働く可能性はありそうだ。

 ではファンダメンタルズはどうか。4-6月期の決算発表が本格化するなか、今回は全体的には好調なムードが漂う。しかし、事前に市場コンセンサスありきで、期待が高いぶんだけ良い数字を出しても利益確定売りを誘発してしまうケースも多い。好決算先取りの買いというものは思ったほどうまくいかないもので、この時期は相場の地合いを観察しながら、ある程度キャッシュポジションを高くしておくほうが賢明であると思う。

 株式需給面でも決め手を欠いている。下値については日銀のETF買いによる支えで安定感がある一方、外国人はサマーバケーションで参戦が限られ、ここから上値を買い進むエネルギーに乏しい。売り方が動けないと同時に買い方の活力もそがれているのが今の相場の特徴であり、当面は日経平均株価1万9600円前後から2万400円前後の狭いゾーンでの推移を想定している。

 個別戦略では意中の銘柄を買うのであっても時間軸と資金の分散を心掛けたい。当面は利益が出たら早めに確定しておくほうが好ましい。銘柄として注目しているのはまず、リチウムイオン電池関連で西華産業 <8061> と戸田工業 <4100> 。ただし、いずれも既に動意しており、あくまで深押し場面を狙いたい。

 比較的値動きのおとなしい銘柄では扶桑化学工業 <4368> が面白い。リンゴ酸メーカーだが、注目すべきは半導体研磨材など電子材料に展開している点だ。旺盛な半導体需要を追い風に足もとの業績好調で信用買い残も枯れた状態にあり、上値は軽いと思う。

 このほか、アーレスティ <5852> は自動車向けダイカストの大手で、PERやPBRの割安さが際立っており見直し余地大。また、医療器具大手のニプロ <8086> は好調な業績に加え、今期は大幅増配で年37円50銭を計画するなど株主還元姿勢の高さが評価される。ボラティリティの高い銘柄としてはメタップス <6172> [東証M]をマーク。人工知能(AI)関連の代表銘柄だが、業績面も18年8月期第3四半期は営業黒字転換と回復色を強めている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(あめみや・きょうこ)
元カリスマ証券レディ。経済ジャーナリスト。AK企画代表。日興証券時代は全国トップの営業実績を持つ。ラジオ短波(現ラジオNIKKEI)、長野FM放送アナウンサー、『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)記者、日経CNBCキャスター、テレビ東京マーケットレポーター、ストックボイスキャスターなどを経て現在に至る。

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