【市況】富田隆弥の【CHART CLUB】 「楽観に傾く市場、台頭するリスク」
株式評論家 富田隆弥
◆先週の市場で話題になった1つが米国VIX指数の低下だ。恐怖指数と呼ばれるVIX(ボラティリティ・インデックス)が8日に「9.77」と23年4ヵ月ぶり安値を付けた。株式市場の上昇基調が続き、FOMCや仏大統領選挙など当面のイベントを通過したことで「楽観ムード」が一層台頭したと言えるだろう。
◆だが、言うまでもなく楽観の台頭は、その裏で「リスクの台頭」を孕んでいる。「慢心の表れ」「自信のバブル」「通常の休息とは違う」「何か良くないことが進行していることを示している」「乱気流に備えるべき」等々、米国の市場関係者からはVIX低下に警戒の声が出てきた。
◆その警戒はチャート面でも言える。いまNYダウやNASDAQは強い上昇基調にあり、トレンドとして「流れに従う」のが基本だが、リーマン・ショック安値(09年3月)から上昇を8年以上続け、過剰流動性(マネーバブル)の規模はリーマン前(07年)を上回ってきた。VIXも2007年1月時の安値「9.87」を下回っており、「楽観ムード」は07年当時を上回っていると言える。つまり、逆張り的に警戒感が台頭しているということだ。
◆同時株高を背景に日経平均株価も2万円寸前まで戻してきた(先物は10日夜間に2万0030円高値)。だが、5月連休時の高値はアノマリー(経験則)通りで、サイコロジカルやRCI、RSI、騰落レシオなど日足テクニカルは過熱を示す。こうなるとジンクスの「セルインメイ(株は5月に売れ)」を意識する時がいつ訪れてもおかしくない。
◆いま上昇基調を描く日足だが、そこに下値抵抗線を引いておき、それを割り込むなら「注意信号」と受け止めることが肝要だろう。
(5月11日 記、毎週土曜日に更新)
情報提供:富田隆弥のチャートクラブ
株探ニュース