【特集】全面高スイッチオン、常識超え“半導体バブル相場”の片鱗 <うわさの株チャンネル>
東エレク <日足> 「株探」多機能チャートより
―全世界「半導体株」一斉高、上昇呼ぶパラダイムシフトとスーパーサイクル―
26日の東京株式市場は、前日の欧米株高に追随して日経平均株価は4連騰、フシ目の1万9000円大台は単なる通過点といわんばかりの戻り足をみせつけている。そのなか、足もとの円安を追い風に、半導体関連株が再び強烈な上昇トレンドを描き始めた。
世界的な半導体需要は特筆に値するほど強い。「ビッグデータの普及加速」、「あらゆるものをインターネットで接続するIoT時代の到来」、「高機能化が進むスマートフォン」、「エレクトロニクスの塊のような自動車」、そしてそれらに横串を通すように人工知能(AI)が日常のあらゆるシーンで関連性を強めつつある。産業のパラダイムシフトが電子デバイスの部品点数を飛躍的に拡大させ、同時に半導体のスーパーサイクル突入を促す。総花的に上昇する関連銘柄はこれまでの常識を超えた半導体バブル相場の片鱗を垣間見せている。
●東エレクを筆頭に強靭な上昇トレンド構築
26日は、東京エレクトロン <8035> が一時400円高を超える上昇で1万3000円台を突破、2000年9月以来約17年ぶりの高値圏に買い進まれたほか、SCREENホールディングス <7735> も8000円大台復帰となり、3月30日につけた上場来高値8330円への再チャレンジを予想させる動き。また、親会社の日立製作所 <6501> による日米ファンド連合への売却方針が報じられた日立国際電気 <6756> は、その存在感を誇示するように10%を超える上昇をみせた。東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は「日立としては選択と集中を第一義にインフラ分野へ注力したいという経営方針があるが、ファンド側にすれば大きくプレミアムをつけて転売できる可能性が高い垂涎の案件。業態として浮き沈みが激しいというリスクはあっても、国内外を問わず、成長期待の高い半導体関連のM&A絡みの動きは今後活発化することが考えられる」としている。
●物色対象の広がりが好循環をもたらす
製造装置メーカーでは、半導体切断装置トップメーカーのディスコ <6146> やマスク描画装置を製造販売するニューフレアテクノロジー <6256> [JQ]、エッチング装置を展開するワイエイシイホールディングス <6298> などが買い人気を呼び込み、後工程では検査装置を手掛けるアドバンテスト <6857> なども7日続伸と上値追い基調を強めている。製造装置分野もこれまでの上昇パフォーマンスでは銘柄間で差が生じているが、これについて大塚氏は「前工程と比べて需要が後ずれする後工程の銘柄は株価的にも出遅れ感が強い。しかし、半導体をテーマとした相場が続けば今後(後工程の銘柄の株価も)キャッチアップしていく公算が大きい」という見解を示している。
3月の日本製半導体製造装置のBBレシオは6ヵ月連続で1を上回っており、受注が販売を上回る状況が継続している。今年後半からさらに受注環境は改善するとの見方が市場では強い。
このほか、半導体シリコンウエハー大手の信越化学工業 <4063> やSUMCO <3436> 、シリコンウエハー原料のポリシリコンを生産するトクヤマ <4043> 、レジストを手掛けるJSR <4185> や東京応化工業 <4186> 、高誘電材料を展開するADEKA <4401> など半導体材料メーカーにも物色の矛先が向いており、物色人気の広がりが資金を還流させ、さらなる買いを促す好循環となっている。
●世界の資金潮流が「半導体」という入江に向かう
今の半導体関連株人気は、何も東京株式市場に限った話ではない。前日の米国株市場ではNYダウなど主要指数が大幅高をみせたが、ハイテク株構成比率の高いナスダック指数は41ポイント高で未踏の6000ポイント大台に歩を進めた。そのなかインテルやアプライドマテリアルズを筆頭に、エヌビディア、ザイリンクスといった半導体関連のシンボルストックが軒並み高となった。半導体の設計・製造・流通・販売を手掛ける銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数は2000年以降の最高値を更新している。トランプ政権の打ち出す減税政策に対する期待はあるものの、もちろんそれだけではない。今の半導体関連株は成長性を考慮したファンダメンタルズ面から順当に評価され、割高感が意識されない強みがある。
経済ジャーナリストの雨宮京子氏は「韓国株をみればよく分かる。地政学リスクや政局混乱もどこ吹く風でKOSPIがフシ目の2200を突破し6年ぶりの高値圏に舞い上がった。この強さの実態は半導体を中心とするハイテク関連。サムスン電子が上場来高値圏を走り、半導体大手のSKハイニックスの好業績も市場にサプライズを与えた。このサプライズ感を現時点の東京市場で共有しているとはいえない」とし、懐疑のなかで育つ“半導体スーパーサイクル相場”の上値余地を指摘している。
●「セル・イン・メイ」があればそこは拾い場
3月期決算発表がいよいよ本格化するなか、18年3月期については企業の保守的な業績予想、いわゆるガイダンスリスクも警戒されるところ。ただ、「セル・イン・メイ」の思惑は半導体関連株には格好の拾い場提供となる可能性が高い。
今秋発売が予定される米アップルのiPhone新機種向け需要の高まり、完全自動運転というゴールに向けた自動車のハイテク武装の流れも止まることはない。3次元NAND型フラッシュメモリーの市場拡大もこれからが本番、需給逼迫を受けて量産投資への取り組みが期待される状況だ。金額ベースで世界の30%前後を占有するといわれる中国の半導体市場だが、加工市場としては依然として未熟で生産投資はこれから加速するとの見方が強いようだ。“たどり来ていまだ山麓”、製造装置メーカーを中心とした半導体相場はまだ序章の段階といえるかもしれない。
(中村潤一)
株探ニュース