【市況】国内株式市場見通し:米国リスク警戒も物色意欲は旺盛
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
先週の日経平均は下落。国内外の政治リスクを警戒する流れから、一時19000円を下回る場面をみせた。米国では医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案成立を巡る法案で、共和党内の調整が難航していることが嫌気されたほか、北朝鮮ではミサイル発射といった地政学リスクも警戒された。国内では「森友学園」の籠池氏による証人喚問を控え、政治リスクへの警戒が高まった。これにより日経平均は年初以降のもち合いレンジであった19000-19500円の上限レベルから、一気に下限レベルへの下落をみせている。
ただ、週末には、期末要因から貸株返却に伴う需給要因のほか、米長期金利の低下が一服していること、さらに、米サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は、前週の動きを含めて今年3~4回の利上げを想定していると述べたことも買い戻しを誘った。日銀の黒田総裁は都内で講演し、現在の物価動向は2%上昇の目標には距離があり、「現時点において金融緩和度合いを緩める理由はない」と述べたことも安心感を誘った。森友学園問題については、国内の政治リスクが払拭した訳ではないが、一先ず籠池氏の証人喚問が通過したことから、落ち着きをみせている。
今週の日本株市場については、期末要因で機関投資家が動きづらい需給状況のほか、国内外の政治リスクがくすぶるなか、不安定な相場展開が続きそうである。注目されていた米国のオバマケアの代替法案成立を巡る法案については、米議会下院の共和党指導部は24日、法案を取り下げた。トランプ政権が他の政策課題を実行する能力に疑問符が付く結果となり、週明けの市場への影響が警戒される。その他、トランプ大統領がSECの次期委員長に指名したジェイ・クレイトン氏は、経済成長を損ねているとしてトランプ政権が見直しを求めている金融規制改革法(ドッド・フランク法)について、今のところ撤廃に向けた具体的な計画はないと述べていることも重しになりそうだ。
また、英国ではメイ首相が欧州連合(EU)離脱手続き開始を通告する予定である。改めて波乱要因にはならないとみられるが、EU側は離脱交渉が終わるまで、自由貿易協定の交渉には応じない構えを見せているほか、EUの予算の分担金の扱いなど課題は山積みであり、神経質にさせそうである。
その為、積極的な売買は限られることになろうが、週明けについては3月期決算企業の権利・配当取り最終日となるため、優待や配当志向の物色が強まろう。日経平均はもち合いレンジの下限まで一気に下げ、一時19000円を割り込んだことで値ごろ感もあるため、買いを入れやすい水準である。また、決算期末を控え、貸株の返済に伴う買い戻しの流れも下支えとして意識されやすいだろう。個人については良好なIPOのなか、需給状況は良好である。先週の日経平均が400円を超える下落局面において、中小型株についても連鎖安の動きがみられたが、その後週末にかけて下落部分を吸収する銘柄も多く、依然として物色意欲は旺盛である。実質新年度相場入りによる先高期待が高まる可能性もありそうだ。
その他、トランプ政権に対する政策実行への不透明感が高まるなか、これまで期待先行で動いていた資金の流れに変化が出てくる可能性がある。一方で、欧州に関しては、17年の各国選挙に絡むリスクをどう回避するかが市場の注目を集めてきた。フランス大統領選への警戒等もあるが、注目されたオランダ下院選は無難に通過。欧州が最悪の結果を順次回避できた場合、米国から欧州への資金シフトが強まる可能性がある。足元では欧州売上比率の高い精密機器セクターにおいても買い戻しとみられ動きが出てきている。欧州関連への見直しも意識しておきたいところである。
経済イベントについては、国内では31日に2月完全失業率、3月消費者物価指数、2月鉱工業生産指数など。海外では28日に2月米卸売在庫、1月米S&Pコアロジック20都市住宅価格指数、3月米消費者信頼感指数、29日に2月米中古住宅販売成約指数、30日に米10-12月GDP(確定値)、米新規失業保険申請件数、3月ユーロ圏景況感指数、31日に米個人所得・支出、3月米シカゴ製造業景況指数、3月米ミシガン大学消費者マインド指数、3月中国製造業・非製造業PMI等が予定されている。
《FA》
提供:フィスコ