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2017年02月02日19時00分

【特集】「大相場の宴」が始まる!有機EL関連 <うわさの株チャンネル>


―ブイ・テクノロジーの収益変貌だけでは終わらない祭―

 米国主導のトランプ相場に陰の部分も見え始めた東京市場。企業の好決算発表も、米国の保護主義政策とそれに付随する為替の円高への警戒感が足かせとなっている。しかし、全体指数とは裏腹に個別テーマ株に対するマーケットの視線は熱い。主力株が手掛けにくい局面だからこそ、独自の成長シナリオを背景に持つ銘柄群の存在がクローズアップされる、今はそういう地合いである。

 そのなか、今最もホットな相場テーマといえば「有機EL関連」ということになるのではないか。大手ディスプレーメーカーとしてはジャパンディスプレイ <6740> 、シャープ <6753> [東証2]の2社の動向に注目が集まるが、同テーマの関連最右翼として強烈な輝きを放っているのはブイ・テクノロジー <7717> だ。同銘柄を中軸に、平田機工 <6258> [JQ]、保土谷化学工業 <4112> 、タツモ <6266> [JQ]、出光興産 <5019> 、アルバック <6728> 、ケミプロ化成 <4960> [東証2]、ジオマテック <6907> [JQ]、ワイエイシイ <6298> 、日新電機 <6641> など有機EL分野へ経営資源を注ぐ企業群に投資マネーが向かっている。

●「iPhone8」で、ざわつく市場

 「有機エレクトロルミネッセンス」いわゆる有機ELは、特定の有機物に電圧をかけると発光する特性を持っており、ポスト液晶の最有力候補として次世代ディスプレーの地位を不動のものとしている。例えばスマートフォン向けでは、液晶の場合は必須アイテムだったバックライトが有機ELでは不要となり、部材も少ないためスペースに余裕が生まれて一段の薄型化が可能となる。低消費電力かつ動画の応答速度も液晶との比較でケタ違いに速い。折り曲げて加工することもできるため、製品開発を進めるうえで様々な可能性を内包している。いうまでもなく潜在的な市場規模も大きい。2030年には5兆円近い市場が試算される成長マーケットであり、韓国の双璧、サムスン電子とLGをはじめとして関連企業もその商機を捉えるべく目の色が変わっている。

 米アップルが今秋にも発売予定とされる「iPhone8」では有機ELパネル搭載が有力視されている。有機ELパネルの足もとの市場は1兆7000億円前後とみられ、その8割以上がスマートフォン向けであり、アップルの英断は関連企業を色めき立たせることになった。実際、数千万台分ともいわれるアップルの端末に対応できる有機ELのパネルメーカーは、スマートフォン分野でライバル関係にあるサムスン電子を置いてほかになく、「この有機EL仕様は順風満帆で進捗しているとも言い切れない部分はある」(市場関係者)もようだが、いずれにしてもこれまでになかった特需が周辺企業に発生するのは時間の問題である。サムスン電子が昨年、巨額資金を投じて有機ELパネルの生産設備拡充に動く方針にあることが伝わり、株式市場でも一気に有機ELが相場テーマとして急浮上したが、今年はそれが現実買いの舞台へと動く。

●有機ELテレビにも新たな潮流

 もちろん、有機ELはスマートフォン向けだけではない。日本の大手電機メーカーが相次いで、画像が鮮明な大型有機ELテレビの発売に動き出していることもポイントだ。現在、有機ELテレビは韓国LGが大部分のシェアを掌握しているが、テレビ市場全体に占める比率は金額ベースで1%程度に過ぎず、それだけに市場開拓余地は大きい。店頭価格も量産効果に伴いここ半年で30%近く低下し、普及を後押しする環境となってきた。そうしたなか、ソニー <6758> は4K有機ELテレビ「ブラビア A1Eシリーズ」を1月5~8日に米ラスベガスで開催された家電見本市「CES2017」で発表、またパナソニック <6752> も同見本市で、平面型有機ELパネルを採用し高画質技術により従来の約2倍の明るさを実現した有機ELテレビ「TX-65EZ1000」を発表している。ソニー、パナソニックなどを中心に今年はテレビ分野でも新たな潮流が発生することになりそうだ。

●恐るべきブイ・テクノロジーの株価変身

 株価の動きは前述のブイ・テクノロジーが群を抜いている。同社は有機EL蒸着プロセスで必須であるファイン・ハイブリッド・マスク(FHM)を手掛けており、同関連の中核銘柄としてマークされている。昨年4月時点では5000円未満だった株価が今は1万9000円近辺まで上昇、最高値2万100円(株式分割修正値)を払拭するのにも、あとワンプッシュで手の届く位置にある。とりわけ、今年1月23日以降の上げ足は鮮烈だったといってよい。わずか10営業日で株価は5700円弱、時価総額にして4割以上も拡大している。そして、この驚異的な株価の値運びには確固たる背景がある。

 一部メディアが、「(同社が)3月までの契約締結を目指し中国メーカーと交渉中で、製造装置一括請負に成功した場合は500億円規模の売り上げが見込める」と報じたことで、これが強烈な株高を呼んだ。会社側ではこの報道について、「3月までという期間を区切ることに妥当性があるかどうかはともかく概ね正しい」と認めている。しかも、同社は昨年央に中期計画として「19年3月期に売上高900億円、営業利益140億円」という数値目標を掲げている。前3月期実績は売上高が391億5300万円、営業利益が25億7800万円だから、この時点で投資家の目には極めて野心的な計画に映る。

 ところが会社側では「この中期計画策定時点では今回の500億円規模の受注は織り込んでおらず、この分は(900億円に)上乗せされるという理解で間違いではない」としており、これは向こう2年間で同社の業績は文字通り大変貌を遂げる可能性が濃厚であることを意味している。市場関係者の耳目を驚かすのも無理のない話だ。

●AI売買ターゲットも成長期待あってこそ

 東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は「ブイ・テクノロジーはファンド系資金など機関投資家の買いも目立つ。ここ保有株比率を急速に引き上げている米有力ファンドのルネッサンス・テクノロジーは人工知能(AI)による売買を行っていることで有名であり、機械的な売買イコール短期売買というイメージから荒い値動きに翻弄される可能性はある」と警鐘も鳴らしたうえで、「しかし、同社の収益変化期待は今の株価では織り込みきれておらず、なお先高期待が強いことに変わりはない」としている。そして「このブイ・テクノロジーの動きは“有機EL”という相場テーマの伸びしろの大きさを示唆したものだ」(大塚氏)とも指摘する。つまり大塚氏は、ブイ・テクノロジーが与えた衝撃は全体像の一片に過ぎないかもしれない、ということが言いたいのである。

●風雲急を告げる企業、有望銘柄が目白押し

 有機EL分野を取り巻く企業の動きは確かに風雲急を告げている。ジャパンディスプレイは、大手電機メーカーとの有機ELパネル事業の合弁会社だったJOLED(ジェイオーレッド)を子会社化し同分野での成長戦略を描いている。一方、鴻海精密工業傘下で経営再建を進めるシャープはスマートフォン向け有機ELパネルの量産工場を中国の河南省に新設する検討に入ったことが伝えられている。また、新日鉄住金化学は有機EL用発光材料について生産能力を現在比3倍まで高める方針にある。直近ではコニカミノルタ <4902> とパイオニア <6773> が、今後自動車向けなどで急拡大見通しにある有機EL照明事業を統合する方針を固めたと報じられ、競争力強化に向けた貪欲な経営戦略が話題となった。

 このほか、前出した銘柄では、有機EL材料として正孔輸送材のほか、韓国子会社を通じて発光材料を製造する保土谷化学工業、有機ELの発光材料、正孔輸送材、正孔注入材、電子輸送材など一括供給できる出光興産の存在が大きい。有機ELを含むフラットパネルディスプレー製造装置を手掛けるアルバック、特定有機ELディスプレー製造装置メーカー向け真空チャンバーの受託製造を展開する平田機工や有機EL向けイオン注入装置で商機を捉える日新電機。さらに、有機ELディスプレー開発の国家プロジェクトにも参画し、高効率・高演色の有機EL照明の開発を手掛けるタツモ、有機EL向けにプラズマ・エッチング装置で受注獲得に動くワイエイシイなど、有力銘柄は数多い。

●トランプ相場の対極で光を放つ

 経済ジャーナリストの雨宮京子氏は、相場的見地でも有機EL関連の優位性を説く。「目先的にはトランプラリーが一巡、トランプリスクが再燃している気配もある。とりわけ、来週2月10日の日米首脳会談までは動きづらい。そのなか、有機EL関連に位置づけられる株は日本の技術力が生かされる分野で、少なくとも“トランプ関連銘柄”ではない。これがやや行き過ぎたトランプ礼賛相場の対極で光を放っているのではないか」とする。

 そして、「我々より若いYouTube世代にとって、スマートフォンは当たり前のように有機ELという時代がおそらく来る。有機ELが相場テーマとして改めて勢いを増しているのは、近未来の市場規模云々という経済分析的な話よりも、むしろそうした日常の風景を暗示した動きと理解している」(雨宮氏)という見方を示していた。

(中村潤一)

株探ニュース

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