【特集】物流「連携」で効率化、進むモーダルシフトや共同配送 <株探トップ特集>
ヤマトHD <日足> 「株探」多機能チャートより
―改正物流総合効率化法施行で何が変わる―
物流のさらなる効率化を目指した「改正物流総合効率化法」が10月1日付で施行された。今回の改正は2005年10月に物流総合効率化法が制定されて以来となり、これまでの「施設整備」を中心としたものに、荷主企業や物流会社の「連携」を促す内容が追加された。今後は他社との連携が一段と活発化することが予想され、商機につなげる企業も出てきそうだ。
●トラックから鉄道への転換に税優遇
物流総合効率化法とは、物流を総合的かつ効率的に実施することにより、物流コストの削減や環境負荷の低減などを図る事業に対して、その計画の認定、関連支援措置などを定めた法律。これまでは高機能な大規模物流施設の整備による集約化・総合化を図った案件に対し、税制上の優遇措置を与えることで効率化支援を行ってきた。ただ、施行から10年以上が経ち、その間に物流業界を取り巻く環境は大きく変化。トラックドライバーの約3割が50歳以上と高齢化が進んでいることに加え、ネット通販の普及に伴う貨物の小口化・多頻度化を背景にトラック積載率が5割を割り込んでいることなどが大きな問題となっている。
このまま放置すれば物流機能に支障が生じる恐れがあり、改正法では「流通業務に必要な労働力の確保に支障が生じつつあることへの対応」を図ることが法の目的として追加された。具体的には、トラックから鉄道や海運などの大量輸送手段に切り替える「モーダルシフト」や、荷主企業が取引先の物流拠点まで別々のトラックを仕立てていたのを同じトラックで配送する「共同配送」といった取り組みに対し、税制上の特例や計画策定費用への補助、事業開始に必要となる行政手続きの一括化などを支援する。
●ヤマトHDは鉄道利用の実証実験を実施
各企業は既に動き始めており、例えばヤマトホールディングス <9064> は9月から10月にかけて佐川急便や日本郵便などと共同で、東京メトロ有楽町線~東武東上線において既存の鉄道施設を活用した物流実証実験を実施した。「小口貨物の増加に伴い物流の効率化が一層求められているうえ、エコの観点からも今後は他社との協力が重要になる」(広報担当)とみられ、こうした動きはさらに広がりそうだ。また、ヤマトHDは路線バスで宅配便を輸送する「客貨混載」を北海道や九州などで進めているほか、再配達の軽減を目的に仏ネオポストシッピングとオープン型宅配ロッカー事業を展開するための合弁会社を5月に設立するなど、さまざまな施策を打ち出しており次の一手が注目される。
●花王とイオンは中継輸送を開始
このほかでは、花王 <4452> とイオン <8267> 子会社で物流を担うイオングローバルSCMは6月から、関東と中部の間で異業種企業間では国内初となるトラックの中継輸送を開始。アサヒグループホールディングス <2502> とキリンホールディングス <2503> は7月、石川県金沢市に共同配送センターを開設し、関西エリアの工場からの鉄道コンテナによる共同輸送を開始すると発表した。
●3PLサービス提供企業に商機
物流の効率化によって活躍の場を広げそうなのが、荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託し遂行する3PL(サードパーティー・ロジスティクス)を手掛ける企業だ。前出のヤマトHDや総合物流最大手として高度な3PLサービスを提供する日本通運 <9062> 、先駆者として1980年代からサービスを提供している日立物流 <9086> をはじめ、SBSホールディングス <2384> 、ハマキョウレックス <9037> 、山九 <9065> 、センコー <9069> 、キユーソー流通システム <9369> などはビジネス機会の拡大が見込まれる。
●豊田通商はトラック自動走行の実用化に向け注力
また、人手不足への対応や環境負荷の低減につながるとして期待されているのが、トラックの自動走行だ。現在、国内のCO2排出量の約2割は運輸部門によるものといわれており、環境・エネルギー制約への対応が求められている。こうしたなか豊田通商 <8015> は9月13日に、経済産業省が公募したスマートモビリティシステム研究開発・実証事業のうち「トラックの隊列走行の社会実装に向けた実証」に採択されたと発表した。これは自動走行技術を用いて後続車無人のトラックが隊列車群を構成して走行するもので、日本信号 <6741> などが参画。技術開発や実証実験、事業面の検討を18年度までに実施するとしている。
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