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【特集】植木靖男氏【日銀“新政策”、上昇気流の行方】(1) <相場観特集>

植木靖男氏(株式評論家)

―マーケットの反応良好、銀行株への懸念後退―

 21日の東京株式市場は、日銀が発表した金融政策決定会合の結果を評価して銀行など金融株を中心に買い優勢となり、日経平均株価終値は前日比315円47銭高の1万6807円62銭と大幅反発した。金融政策の新しい枠組みとして、長短金利の拡大を目的とした「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決め、金融機関の収益悪化懸念が後退するとの受けとめが買いにつながった。また、日銀の上場投資信託(ETF)買い入れ策について、一定額を東証株価指数(TOPIX)連動型に割り当てると発表したことも、時価総額の大きな銘柄への買いを加速させた。今回の金融政策の評価と今後の相場見通しについて、第一線の市場関係者に聞いた。

●「日銀決定会合は評価も今後は米国株次第」

植木靖男氏(株式評論家)

 今回の日銀が出した政策は追加緩和策ではなかったが、要はマーケットがどう受け止めるかがカギを握っている。緩和縮小なのか追加緩和なのかと問われれば、市場にアレルギー反応を引き起こしやすいマイナス金利に手を付けずに、緩和的要素の強いものでまとめ好感された。その意味では成功であったと思われる。

 特に長短金利差を広げる政策で、 銀行株に有利に働くというコンセンサスが市場で醸成されたことはプラスに働いたと思う。海外の株式市場の反応も参考になる。中国、香港などアジア株は一斉に好感するかたちで上昇したほか、時間外で米国株も買われた。今晩の連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を確認するまでは何とも言えないが、事前想定通り利上げ見送りとなれば今晩の米国株が踵(きびす)を返して大きく崩れることは考えにくい。

 ただし、今後のトレンドを占うのであれば今日1日の動きでは何ともいえない。結局は米国株次第といえるのではないか。米国株市場は9月利上げが見送られたとしても、年内利上げの可能性は高いとみられており、引き締め環境下では上値を追い続けることはそれなりに大変である。もし、連邦準備制度理事会(FRB)の舵取りがうまく、NYダウが再度最高値圏に浮上するようであれば、日経平均も4月22日の戻り高値1万7572円のフシを突破して上昇転換を明示する公算が大きくなる。一方、米国株がこのまま調整相場入りとなれば、日経平均も頭打ちとなり下値1万6000円を下限とするボックス相場の継続を強いられるとみている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(うえき・やすお)
慶応義塾大学経済学部卒。日興証券(現SMBC日興証券)入社。情報部を経て株式本部スポークスマン。独立後、株式評論家としてテレビ、ラジオ、週刊誌さらに講演会などで活躍。的確な相場見通しと独自の銘柄観に定評がある。

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