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【特集】ポケモン、ゴジラ、BABYMETAL…始まった“クールジャパン”の逆襲 <株探トップ特集>

大ヒット中の「シン・ゴジラ」は100ヵ国・地域への配給が決定、東宝株の動向も気になるところ

―世界を席巻する日本発コンテンツ―

 世界を席巻する「ポケモンGO」。久々の“日本発”大ヒットに、「クールジャパン」の面目躍如といったところだろうか。日本の魅力を展開し、海外需要獲得と共に関連産業の雇用創出を目的として日本政府がスタートした「クールジャパン戦略」、笛吹けど踊らずの状況が続いた時期もあったが、ここにきてようやく開花期を迎えようとしている。 クールジャパンの逆襲に迫った。

●ポケモン狂想曲で大フィーバー

 7月22日、ポケモンGO日本配信がスタートすると、ポケモン狂想曲が東京株式市場に鳴り響き、投資家を巻き込んだ一大フィーバーとなった。主役の任天堂 <7974> を筆頭に、ポケモンGOとコラボレーションの噂が先行(その後、正式発表)していた日本マクドナルドホールディングス <2702> [JQ]をはじめ、サノヤスホールディングス <7022> 、イマジカ・ロボットホールディングス <6879> など関連銘柄が続々と急騰することになった。

 かつて、クールジャパンの先頭を走っていたポケモン、最近では人気の陰りが囁(ささや)かれていただけに、世界を舞台にした凄まじいばかりの逆転劇に日本列島は酔いしれることとなった。任天堂株が買われた背景にはゲームとしての評価もさることながら、長年にわたり培ってきた、ポケモンをはじめ、マリオ、ゼルダなどといったキャラクター=知的財産の存在があることを忘れてはならない。任天堂には、スター級のキャラクターが目白押しなだけに、同社の次の展開にも期待した買いが入ったというわけだ。再びポケモンを旗頭にして、かつて世界を席巻したジャパンコンテンツが、輝きを取り戻そうとしている。

●韓流攻勢に焦った日本

 経済産業省は2010年にクールジャパン室(当時)を開設し、日本の戦略産業分野である文化産業(=クリエイティブ産業:デザイン、アニメ、ファッション、映画など)の海外進出促進、国内外への発信や人材育成などの政府横断的施策の推進を開始した。現在では、日本ブームを創出し、海外現地で稼ぎ、日本での消費につなげようとしており、コンテンツ、ファッション、衣食住、地域など幅広い分野の活性化を狙っている。

 このクールジャパン戦略推進の背景には、10年当時アジアのみならず欧州に怒涛のように押し寄せた韓流ブームがあるといわれる。以前から韓国では文化の輸出などを国家戦略として取り組んでおり、同国および製品のイメージアップを行っていた。その成果としてのひとつが、いわゆる韓流ブームで、東方神起、少女時代などに代表されたKポップの躍進にもつながった。イメージアップ戦略は見事に奏功し、韓国製品拡大の大きな役割を担うことになる。

 韓流ブームを横目で見ながら、当時、危機感を表したのが経済産業省だったといわれる。10年当時、円高が加速、株価も低迷、その打開策のひとつとしてクールジャパン戦略が登場した。クールジャパン室発足から1年経ったころ、電話取材をすると「日本としても、文化産業を積極的に売り込んで行きたい。あくまでも主体は民間企業だが、強くバックアップしていく」としていた。また、「韓国の攻勢を意識しているか?」との問いに「それも、確かにある」という答えが返ってきたのを記憶している。

●クールジャパン反撃の急先鋒

 いわゆるKポップの躍進にJポップは次第に影が薄くなっていく。アジアをはじめ欧州でもJポップの根強いファンはいたが、ガールズグループの躍進、PSY(サイ)のカンナムスタイルの世界的大ヒットなど、もはや韓国勢の怒涛の攻勢はとめることができなくなっていた。つれて、韓国製品は急速に世界へ拡大していった。

 しかし、ここにきて登場したのが、アミューズ <4301> に所属する日本の女性3人組メタルダンスユニットBABYMETAL(ベビーメタル)だ。16年4月1日、セカンドアルバム『METAL RESISTANCE』を世界同時発売。全英総合アルバムチャートで15位を記録し、日本人アーティストの最高位を41年ぶりに更新。さらに、全米総合アルバムチャートでは39位を記録し、日本人アーティストとしては坂本九さん以来53年ぶりにTOP40入りとなる快挙を達成した。世界を舞台に活躍するBABYMETAL、クールジャパン反撃の急先鋒といえるだけではなく、今後大きく同社の収益に貢献する日がやってくるかもしれない。

●世界に吠えるゴジラ!

 音楽だけではない、元祖クールジャパンともいえる東宝 <9602> のゴジラは、12年ぶりとなる最新作「シン・ゴジラ」が7月29日に公開され大ヒットとなっている。「既に、100の国と地域に配給が決定している」(宣伝部)といい、まさに、ジャパンコンテンツここにありといった王者の風格を醸し出す。「現在のところ“次”のゴジラ制作の予定はない」(同)というが、早くも次回作を期待する声も上がっている。さらに14年に日本でも大ヒットした米国版「Godzilla」だが、制作進行中の続編となる“2”にも注目が集まる。“米国版”が公開されると東宝の株価も急動意した経緯があるだけに、投資家にとっても気になるところだ。

 映画といえば、ハリウッドでの「ポケモン」、「攻殻機動隊」、「子連れ狼」などのジャパンコンテンツの実写版映画化が次々話題に上っている。既に撮影が開始している攻殻機動隊は、近未来を舞台にした公安警察組織・公安9課(通称・攻殻機動隊)所属の女性サイボーグの活躍を描くが、アニメ版を手掛けてきたIGポート <3791> [JQ]にも関心が集まる。また、一部報道では、詳細は不明だが昭和世代にとっては懐かしい拝(おがみ)一刀と息子の大五郎を描く子連れ狼のハリウッド版制作に向けての動きが、進行しているという。日本人を主要キャストに起用するとも伝えられており、仮にハリウッドでの映画化となれば、インバウンド需要にも貢献しそうだ。

 また、カドカワ <9468> は3日、「電撃文庫『ソードアート・オンライン』 ハリウッドにて全世界向け実写映像企画進行中」と発表。全世界累計1900万部を突破した小説のハリウッドでの実写テレビドラマ化としており、今後の展開に要注目だ。そのほか、「ワンピース」、「プリキュア」など版権収入も大きい東映アニメーション <4816> [JQ]、「ガンダム」の創通 <3711> [JQ]などの動向にも注視しておきたいところだ。

●「ハローキティ」は、その動向に関心

 さて、ポケモンと双璧をなす世界的ジャパンコンテンツといえば、サンリオ <8136> の「ハローキティ」だろう。同社は7月29日取引終了後、17年3月期の第1四半期の決算を発表。営業利益4割減と、経済低迷による欧米両地域での商品ライセンス収入の減少が表面化し、株価は軟調な展開となっている。このサンリオ、昨年一部報道で「19年に人気キャラクター『ハローキティ』の映画を世界上映する計画だ」と報じられて話題になっていたが、その後、どうなっているのだろうか。同社では取材に対し、「ハローキティ映画化の話はいくつかいただいているのは事実だ。ただ現在のところ具体的に公表できるものはない」としており、世界的人気キャラクターなだけに、その動向は日本だけではなく海外も含めて関心が高い。

●これぞ、自信の表れ!?

 ポケモンGOの世界的大ヒットに沸く日本列島。クールジャパン戦略を推進してきた経産省も、さぞや喜んでいるかと思い、さっそく感想を聞くと、「個別企業の案件についてはお答えできない。政府としてクールジャパン戦略を、今後も押し進めていく」(経産省商務情報政策局・文化情報関連産業)と、まったくもって冷静沈着な答えが返ってきた。当然といえば当然なのだが、多少なりとも喜びの声が聞こえるものと予想していただけに、少々期待外れの感は否めなかった。ただ、国の旗振り役が一喜一憂しないのも、ある意味ジャパンコンテンツ復調を背景にした自信の表れなのかもかもしれない。

 いま、クールジャパンの逆襲は始まったばかりだ。


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