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【特集】日経平均「1000円安も」、検証・日銀緩和が見送られた時 <株探トップ特集>

黒田バズーカは轟くか――、28~29日の日銀金融政策決定会合に集まる視線

―追加緩和予想が多数派ながら見送り観測も浮上、ヘリマネ議論に注視―

 日銀金融政策決定会合が28日から29日にかけて開催される。今回の日銀会合では追加緩和を実施するとの見方が多数派を占める。その背景には、足もとの物価上昇率の鈍さなどがある。ただ、追加緩和の内容次第では「出尽くし感も出かねない」との声もある。黒田日銀総裁の手腕が問われる状況だが、果たしてバズーカは再び火を噴くのか──。

●3次元緩和のうち2次元は必要、見送りなら1000円安も

 今週末に開催される日銀金融政策決定会合に対する市場関係者の見方は「追加緩和実施」が多数派を占めている。日本経済研究センターが発表するESPフォーキャスト調査では、42人中8割強の36人が7月追加緩和を予想している。

 この追加緩和観測の背景にあるのは、5月の消費者物価(CPI)上昇率が前年同月比0.4%下落となるなど、物価目標の2%達成に、ほど遠い状況となっていることが挙げられている。

 7月は「経済・物価上昇の展望(展望リポート)」が発表されることもあり、今月の追加緩和期待は強い。追加緩和の方法としては、「長期国債買い入れ金額の増加」「ETF・REIT買い入れ金額の増加」、「マイナス金利政策の拡大」などの組み合わせが予想されている。例えば、積極的な追加緩和を予想するJPモルガン証券では「政策金利をマイナス0.1%から同0.3%」、「国債買い入れ金額を80兆円から100兆円」「ETF買い入れを3.3兆円から6兆円」などの「3次元緩和」を見込んでいる。また、SMBC日興証券では「国債買い入れを90兆円へ拡大」のほか、ETFやREIT、社債の購入増を予想している。

 「市場は3次元のうち少なくとも2次元の緩和を盛り込むことを望んでいるはずだ」と日本アジア証券の清水三津雄ストラテジストは言う。「国債買い入れの量的緩和」か「ETF増額など質的緩和」、それに「マイナス金利政策」のうちの2つの組み合わせは欲しい、という。「もし、市場の期待に沿う追加緩和が実施されれば、日経平均株価は500円高が見込める。万が一、見送りなら株価は1000円安で為替も100円割れの円高もあり得る」と清水氏は見る。

●日本版TLTRO導入か、一部には追加緩和見送り観測も

 銀行経営への悪影響から反対論も根強い「マイナス金利の深堀り」に関しては、マイナス0.2~同0.3%への引き下げも予想される。この水準のマイナス金利拡大は「すでに銀行の株価は織り込んでいる」(市場関係者)との見方がある。また、緩和の追加オプションとして日銀から民間銀行に貸し出す「貸出支援基金」の金利をマイナスにする案も指摘されている。これは「日本版TLTRO」と呼ばれているもので、金融機関への貸し出しにもマイナス金利を適用することで、金融機関を支援するというものだ。今年4月の日銀会合でも一部報道を受け、導入観測が浮上したが、結果的には「緩和見送り」だった経緯がある。もっともマイナス金利政策に対しては「ゆうちょ銀行 <7182> などへの影響は無視できず大手銀行も配当維持が厳しくなる可能性も」(アナリスト)との警戒論も根強い。

 これら追加緩和の観測が浮上する一方で、市場からは「材料出尽くし感も出かねない」(大手証券)ことを懸念する声も出ている。すでに、日銀の国債保有残高は全体の3分の1を超えており、市場には限界説も浮上。一段の国債購入で打ち止め観測が出る可能性もある。また、ETFの買い入れに関しても日銀はすでに多くの上場企業の大株主になっているとも言われており、コーポレートガバナンス上などの問題点が指摘されている。

 このため、追加緩和の実施は慎重に時期を見定める必要ある。アムンディ・ジャパンの吉野晶雄チーフ・エコノミストは「今回の日銀会合では追加緩和を見送る可能性もある」という。米国経済はNYダウが市場最高値圏にあるなど、外部環境は好転している。また、米大統領選挙の真っ只中で「円安を招く追加緩和は実施しづらいだろう」という。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストも「追加緩和は見送りかもしれない。実施してもETFの拡大程度だろう」とみている。

 一方、日本アジア証券の清水氏は「いま追加緩和に踏み切らないと、日銀は手詰まり状態に陥ったとの観測が強まり、投機筋は株安・円高を仕掛けてきかねない」と危惧する。

●ヘリマネ的手法は導入の可能性も

 市場で話題を呼ぶ「ヘリコプターマネー(ヘリマネ)」も日銀の手詰まり感を背景にしたものとみられている。日銀が財政資金を供給するヘリマネに関して黒田日銀総裁は、「まったく考えていない」と否定しており、導入の可能性はない。ただ、「ヘリマネ的手法は導入される可能性も」(大手証券)という。政府が建設国債や財投債を財源とする10兆円程度の経済対策を発表し、日銀が10兆円程度の国債買い入れ増額を発表すれば、「金融政策による財政ファイナンスの印象が市場に出る」という。

 最終的には、日銀は政府とアコード(政策協定)を結びヘリマネ導入的な政策には踏み切らざるを得ないとの観測は根強く、このため外国人投資家はヘリマネという言葉に過敏に反応している。こうしたなか、今回の日銀会合はヘリマネも意識の片隅に入れながらの展開となるが、日銀が下す結論は、今後の市場動向を大きく左右することになる。


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