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【市況】【フィスコ・コラム】東京都知事選は政局含み

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより

7月10日に投開票された第24回参院選は、自民・公明の圧勝に終わりました。民進、共産、社民、生活などによる野党共闘が注目され、1人区では一定の成果を挙げたものの、与党に打撃を与えることはできませんでした。2018年までの今後2年間は国政選挙が予定されていないので、安倍晋三首相の政権運営は当面安泰とみられています。しかし、敵対勢力は野党だけとは限りません。今月末の東京都知事選をきっかけに自民党内の権力争いに発展する可能性もあります。


英国の欧州連合(EU)離脱の先行き不透明感から市場センチメントはかなり悪化していましたが、参院選翌日以降の金融市場では、与党圧勝と安倍政権による10兆円規模の経済対策に国内外の市場参加者から期待が高まり、日経平均株価は大幅続伸。また、ドル・円は、米雇用統計発表後に一時99円99銭まで下落したにもかかわらず、6円(6%)近くも急騰しました。英国をはじめ米国やオーストラリアなど、最近の選挙戦で現職のリーダーに異を唱えるような状況とは対照的に、日本は安倍政権を圧倒的に支持するという民意から、今後の政策運営がスムーズに展開する、と市場では受け止められています。


しかし、市場がそう判断するのは時期尚早ではないでしょうか。7月31日投開票の東京都知事選やその後の自民党人事、内閣改造の内容によっては政局が一気に流動化する可能性があるからです。都知事選は7月14日に告示され、21人が立候補しました。自民党は、第1次安倍内閣時代に総務相を務めた元総務相の増田寛也氏を擁立。一方、民進など野党4党は、最終的にジャーナリストの鳥越俊太郎氏の擁立を決めました。


筆者は、自民党内の権力争いという観点から元防衛相の小池百合子氏に注目しています。小池氏は、もともと地盤が兵庫県の選挙区でしたが、2005年8月の「郵政選挙」で当時の小泉純一郎首相が郵政民営化に賛同しない候補者の選挙区に「刺客」として送り込んだ経緯から、その後は東京10区を地元としています。また、2008年9月には福田康夫首相の辞任に伴い実施された自民党総裁選に初の女性候補として出馬。麻生太郎現財務相に敗れはしたものの、3位の与謝野馨氏に大差をつけ健闘しました。閣僚としては環境相や防衛相などを歴任するなどキャリアを構築しています。


どの候補者が勝つかは今後のキャンペーン次第でしょう。ただ、2012年12月に第2次安倍政権が発足してから3年半、安倍首相サイドによる政権内の締め付けに不満がうっ積していることは確かなようです。昨年9月、自民党総裁選で有力候補だった野田聖子元郵政相が出馬を取りやめるに至ったエピソードは象徴的です。今回の都知事選を起点に、安倍首相の「親衛隊」への不満が一気に噴出し、党内の反安倍勢力が小池氏の支援に回れば大接戦になる可能性もあります。


都知事選告示の7月14日、東京・池袋駅西口で行われた小池氏の街頭演説に、自民党の若狭勝衆院議員(比例東京ブロック)が応援に駆けつけるシーンがみられました。自民党の東京都連は党が推薦していない候補者を応援した場合、親族も含めて除名処分などの対象としているようです。自民党都連の所属議員の姿は他にみられなかったものの、党の推薦を受けられずに無所属で出馬した小池氏や、処分覚悟の若狭氏による捨て身の行動に、「政権内で冷遇されている反安倍勢力の闘争心を掻き立て、勢いづかせる」(自民党関係者)といった声が聞かれます。


東京都知事選は地方の首長を決める選挙であり国政とは無関係かもしれません。しかし、この都知事選の結果を判断したうえで、安倍首相は8月の党人事と内閣改造に踏み切る意向のようです。この人事では、自民党幹事長が焦点となりそうです。2020年の東京オリンピックまで安倍政権をさらに盤石なものにするため、党内の引き締めをさらに強化する役割が求められるためです。役割とは、例えば、自民党総裁任期の延長です。都知事選を通じて台頭した反対勢力を政権内に取り込むか、あるいは遠ざけるか、パワーバランスに微妙に影響を与えるでしょう。

吉池 威

《MT》

 提供:フィスコ

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