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【経済】NYの視点:米4月JOLT、雇用の反発を示唆


米労働省が発表した5月の雇用統計は予想外に悲惨な結果となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーに加え、多くの市場関係者もインフレの改善が遅いことを懸念する一方、労働市場だけは順調に改善し米連邦準備制度理事会(FRB)の責務目標である最大雇用をほぼ達成したと見ていただけに、この結果はショックとなった。

イエレン議長は週初に行った講演で、5月雇用統計に「失望した」と懸念を表明すると同時に、米国の雇用ペースの鈍化を認めた。今後、労働市場を綿密に監視していく必要があるとした。しかし、同時に、他の雇用関連指標は「ポジティブ」で、「ひとつき分の指標を過剰に深読み過ぎないことが重要だ」と指摘。労働市場のスラック(たるみ)も「取り除かれつつある」と楽観的な面も指摘している。イエレン議長は労働市場は最大雇用に近づいているとの見方だが、不完全雇用(U6)などが高止まりしているなど雇用のたるみは存続しており、「改善の余地がある」と見ていた。

実際、議長が労働市場のたるみを確認していくために好んで使用しているJOLT求人件数の4月分は昨年7月に達成した過去最高水準に並んだ。これにより5月の弱い雇用統計が一時的であるとの思惑が強まった。内容では、労働者の労働市場への自信をあらわすとしてイエレンFRB議長が最も重要視している退職率(Quits rate)は2.0%と、3月2.1%から低下し、金融危機前の 2.1%からは若干低下。採用率(Hires rate)は3.5%と、3月に3.7%まで上昇したのち、再び低下した。危機前の3.8%から遠ざかった。水準では509.2万人と昨年8月来の低水準。

一方、解雇率(Layoffs/discharges rate)は1.1%と、3月の1.2%から低下。金融危機前の 1.4%を下回る。また、求人率(Job openings rate)も3.9%と、3月3.8%から一段と上昇し、危機前の 3%を大幅に上回った。これは、雇用のペースが2016年も強いことを示唆している。5月雇用統計で雇用者数が著しく鈍化したのは解雇ではなく、企業の新規雇用ペースが鈍化したためであったことがわかる。

6月14-15日に予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げの可能性は除外された。金利先物市場での7月の利上げ確率も20%まで低下。FOMC関係者は7月の利上げは除外していないと見るが、そのうえで、特別要因も加わり低調な結果に終わった5月の雇用統計がひとつきだけの傾向なのか、労働市場の基調が変化したためかを見極める上でも6月の雇用統計が非常に重要となってくる。


■イエレンFRB議長の雇用たるみダッシュボード(最新)

◎危機前に比べ状態が改善 ← 危機前の水準と比較
4月解雇率(Layoffs/discharges rate):1.1%(前回1.2%) ← 1.4%(下回る)
5月失業率(Unemploynent rate):4.7% ← 5%
4月求人率(Job openings rate):3.9%(3月3.8%) ← 3%(上回る)

◎状態が危機前より依然悪い
4月退職率(Quits rate):2.0%(3月2.1%) ← 2.1%
5月広義の失業率(U-6):9.7%(4月9.7%) ← 8.8%(上回る)
5月長期失業率:40.8%(4月41.9%) ← 19.1%(上回る)
5月労働参加率:62.6%(4月62.8%) ← 66.1%(下回る)
5月雇用者数(Nonfirm payrolls):3.8万人 ← 16.18万人(下回る)
4月採用率(Hires rate):3.5%(3月3.7%) ← 3.8%(下回る)

《NO》

 提供:フィスコ

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