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【経済】「どうみる今年の新卒採用戦線」 リクルートキャリア・就職みらい研究所に聞きました! <直撃Q&A>

岡崎仁美氏(リクルートキャリア 就職みらい研究所所長)

 きょう6月1日から、来春卒業予定の大学・大学院生に対する就職活動の採用選考が解禁された。昨年の就職内定率は過去最高となるなど「売り手市場」と言われる一方、面接選考開始時期が2カ月前倒しとなり、2年連続で採用スケジュールは変更される。現在の新卒就職戦線の状況と今後の見通しをリクルートキャリア 就職みらい研究所所長の岡崎仁美氏に聞いた。

●岡崎仁美氏(リクルートキャリア 就職みらい研究所所長)

Q1 新卒採用の売り手市場が叫ばれる一方、採用スケジュール面の変更が続いています。現在の新卒採用状況をどうみていますか

 新卒大学・大学院生の求人倍率は1.74倍と引き続き高く、学生にとってはチャンスの多い状況が続いています。また面接選考解禁時期が昨年の8月から今年は6月へと2カ月早まったことにより、夏から秋にかけて採用予定数をまだ満たせていない企業群の二次募集も期待できそうです。

 企業の面接解禁日が、昨年には15年ほど定着してきた4月1日から8月1日へ後ろ倒しになりました。当初はこれにより卒業までに就職先が決まらない学生がぐっと増えるのではないかという指摘もありましたが、蓋を開けてみると卒業時の就職率は昨年を上回り、また就職先への満足度も昨年より高いという統計結果となりました。一方、企業側では採用予定数を確保できたところは5割を切る結果となり、採用する側からみれば厳しいシーズンであったことが分かります。

Q2 「オワハラ(就活終われハラスメント)」といった言葉も有名となりました。企業の採用活動に問題は?

 企業が学生に就職活動の終了を求める「オワハラ」に該当するような話は以前からありましたが、昨年こうした行為に「オワハラ」という名前が付き、また春ごろには就職採用活動スケジュールの大幅変更とセットで報道されたことから注目が集まりました。とりわけ企業からは「内定を承諾してくれるかの確認はしたいが、どんな言い回しならハラスメントと捉えられないだろうか?」といった問い合わせが増えました。社会全体の認知が一気に高まったことで、企業への抑止力になったように思います。

Q3 今後、中長期的な新卒の採用状況はどうなりそうでしょうか

 大学関係者の間では、少子化に伴いいよいよ大学入学者数が減少し始める「2018年問題」が注視されています。つまり、大卒者も2023年頃から減り始めるということです。既に留学生採用などに積極的に取り組む企業も少なくありませんが、ひょっとしたら長年続いた新卒一括採用の潮目が変わるかも知れません。採用のあり方もグローバル標準に近づいていくことでしょう。今後、人口減と企業の戦略スタンスで採用動向に変化が見られそうです。

Q4 これからも新卒採用の状況の変化は続きそうですね。そのなかで、人材採用の観点からどんな業界や企業が狙い目だと思いますか

 企業は、極めて高い採用意欲を示す一方で、「基準を下げてまで採用数を充たすことはしない」としています。それぞれの企業が何のために採用するのか、入社した人に何を期待するのか、といった点を忘れずに学生は就職活動を進めて欲しいと思います。

 例えば求人倍率が5倍を超える超売り手の建設業・流通業においても、毎年着実に求める人材を獲得している企業はあります。そういった、人材調達力に長けた企業は長期的に高い成長が期待でき、どの業界でも狙い目なのではないのでしょうか。

(聞き手・吉野さくら)

<プロフィール>(おかざき・ひとみ)
1993年入社以来、一貫して人材関連事業に従事。中小企業の営業担当を経て、転職情報誌「B-ing関東版」編集企画マネジャー、同副編集長、転職サイト「リクナビNEXT」編集長、「リクナビ」編集長を歴任。13年から現職に就任。

<就職みらい研究所>
リクルートキャリアの新卒事業本部内に設置されている「調査」「研究」「情報発信」を目的とした組織。よりよい就職・採用の在り方を模索する活動の推進を図る。2013年3月発足。


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