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【特集】対中ネット通販“1兆3943億円”へ、「越境EC」勝者を追う <株探トップ特集>

イオン <日足> 「株探」多機能チャートより

―拡大続くマーケット、アリババ「天猫国際」への出店活発化―

 この数年、中国人観光客の「爆買い」によるインバウンド需要が日本の小売り業を下支えしているが、それとともに動きが活発化しているのが、インターネット通販サイトを通じて日本の製品を海外で販売する越境EC(Electronic Commerce)。越境ECを行う企業が次々に設立される一方、越境ECを支援するサービスも動き始めており、今後、大きなマーケットに成長しそうだ。

●対中販売2018年1兆円越えの見込み

 越境ECの市場規模がこの数年急成長している。経済産業省の商務情報政策局が発行した「平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」の調査では、日本(販売国)から中国(消費国)への越境ECの推計市場規模は2014年の6064億円から2015年は8006億円へ拡大し、2018年には1兆3943億円が見込まれている。

 日本を訪れた観光客が帰国後も日本製品をネット通販で購入する動きが活発化しているが、これには中国最大の企業間電子商取引(BtoB)会社であるアリババ・グループが2014年から消費者向けBtoCモール「天猫国際」を開設したことが大きな後押しとなっている。従来からアリババが展開しているBtoCモールの「天猫」は出店に際して中国の営業許可証や販売ライセンス証明、取り扱い商品の商標登録証などを提出し審査を受ける必要があったが、「天猫国際」では中国法人を有さない法人でも出店が可能などハードルが低くなっている。これにより、高いブランド力を有する日本の流通企業が出店を活発化させている。

●ヤフー、イオンなど天猫国際への取り組み強化

 このような状況下、日本のネットサービスの先駆的存在であるヤフー <4689> が昨年5月にアリババと中国でEC事業の展開を検討している日本企業に対して、「天猫」や「天猫国際」への出店において、料金およびトラフィック(誘導)面での特別な優遇プログラムを提供することを発表し、日本企業の中国市場進出を好条件で力強くサポートすることを表明した。

 小売り業ではキリン堂ホールディングス <3194> が日本のドラッグストアチェーンとして初めて「天猫国際」に出店し、順調に売り上げを伸ばしている。また、中国でITモバイルを活用した美容ポータルサイトの運営支援を行う子会社のBEAUNETが、インターネット販売で中国第3位の唯品会(ビップショップホールディングス)と資本・業務提携を行うことを今年5月に発表しており、取り組みを強化する方針だ。

 イオン <8267> もイオンリテールを通じて2月18日に「AEON公式海外旗艦店」を「天猫国際」に出店。日本の国内流通トップが「天猫国際」に出店したことで越境ECへの関心が一段と高まっている。

●越境ECサイト支援の動きも活発化

 越境ECの参入企業の増加を背景に、これを支援する動きも活発化している。トランスコスモス <9715> は中国でアパレル向けにEC支援サービスを提供する山東雅諾達電子商務有限公司(Magic Panda)と連携して、マタニティウェア・ベビーウェア・内祝ギフト通販老舗のエンジェリーベ(東京都品川区)の越境ECサイト「エンジェリーベ天猫国際旗艦店」を今年3月1日に開設。開設申請から開店、運営までワンストップでサポートしている。

 また、GMOインターネット <9449> 傘下でECソリューション事業を展開するGMOメイクショップは海外顧客向け代理購入・代理オークション入札サービスを運営するSAMURAI BUYER(福岡市)と提携。ネットショップ構築サービス「MakeShop」と、海外への転送・購入代行サービス「SAMURAI BUYER」連携による越境ECサービスを3月31日から開始している。GMOメイクショップ運営の「MakeShop」利用のショップ運営者は、商品出品・集客サービス「アイテムポスト」を通じて、アジア・ヨーロッパ・北中米・南米・オセアニアに向けて商品転送・代理購入を行っている「SAMURAI BUYER」にワンクリックで簡単に出品することができるもの。「中小のショップにとっては低リスクで越境ECに参入できることから多数の問い合わせを頂いている」(GMOメイクショップ プロモーション戦略室)としている。大手企業中心だった越境ECが今後、幅広い企業へ拡がることが期待される。


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