【特集】買い物弱者“700万人”時代、ドローン宅配など進む対策 ＜株探トップ特集＞

―都市部でも増加、上場各社の取り組みは―

　「買い物弱者」の救済が急務となっている――こう聞くと、24時間営業のコンビニエンスストアが近所にある人たちにとっては、遠く離れた山間部や離島の話のように思われるかもしれないが、全国的な買い物弱者の増加とともに身近な問題となっている。

●年々増加し全国に700万人

　特に近年増えているのが、高度経済成長期に開発された、いわゆる「ニュータウン」に住む買い物弱者だという。かつては長い時間電車に揺られて都心まで通勤していた住民の多くは歳をとり、子ども達も家を離れた今、高齢者だけの世帯も増えている。一方で、住民が利用していた商店街は店主の高齢化などで閉店する店舗も多く、住民は遠く離れた店舗まで電車やバスで出かけるしかないといった状況が生まれつつある。

　経済産業省によると、「買い物弱者」とは、「住んでいる地域で日常の買い物をしたり、生活に必要なサービスを受けたりするのに困難を感じる人達」のこと。同省の試算では全国に約700万人いるとしており、しかもその数は増加傾向にあるという。

　こうした状況を受けて経産省では、自治体に対して「買い物弱者（買物難民）応援マニュアル」を配布しているほか、自治体と民間企業との連携を促すべく、支援事業に対する補助金も支給している。買い物弱者の増加を新たなビジネスチャンスととらえる企業も増えており、市場も徐々に拡大している。

●オイシックスの移動スーパーは年間3倍の成長

　オイシックス <3182> [東証Ｍ]は今月12日、シニア向け移動スーパーを展開するとくし丸（徳島県徳島市）の株式を取得し、30日付で子会社化すると発表した。とくし丸は2012年に設立。買い物弱者が周辺に多い地方の中小スーパーから商品供給を受けて、移動販売は個人事業主に任せる独自の手法により事業を拡大。現在は27都道府県で53社のスーパーと提携し、100台以上の移動販売車を運行しているが、「2016年3月には月間流通金額が2億円を超え、年間約3倍の成長をしている」（オイシックス）という。

　オイシックスの狙いは、70代から80代のシニア層顧客の取り込みだ。現在、同社の定期購入会員は11万人を突破しているが、ネット通販が同社の主力事業であるため、顧客の中心は30代から40代が中心で、60代以上はわずか数％にとどまる。とくし丸を傘下に収めることで、手薄だった顧客層の開拓につながるとみられ、メリットは大きい。

●ヤマトＨＤは多摩で一括配送

　また、ヤマトホールディングス <9064> では4月27日、都市再生機構（横浜市中区）や多摩市と連携し、東京の「多摩ニュータウン」で住民向けのくらしのサポートサービスを始めると発表した。各宅配事業者の荷物をヤマト運輸がまとめて届ける一括配送を行うほか、地域の小売り店に代わってヤマト運輸が商品の注文を受け付け、購入品を各店舗から集荷し、購入者の自宅まで届ける買い物代行などを行う予定だという。当初は近隣にある生協「コープみらい」からスタートするが、将来的にはドラッグストアやホームセンターにも対象を広げる考えだ。

　背景にあるのが、宅配便の利益の伸び悩みだ。ネット通販市場の拡大で、宅配便の取扱個数は増加を続けているが、単価の下落で採算性は低下傾向にある。付加価値を加えることで同事業の収益改善を図る方針のようだ。

●高級ファッションの移動販売も

　ポーラ・オルビスホールディングス <4927> 傘下のポーラでは、改造した大型バスの車内で宝飾品や衣料品を販売する「ムービングサロン」を11年10月にスタートさせた。百貨店の閉店などにより、近くで高級品の購入ができなくなった主婦などを対象に、全国でジュエリーや高級ファッション品の販売を行っており、試着室や化粧室なども完備している。同社では「ポーラレディ」による訪問販売を行っていることから、棲み分けのため化粧品の販売こそ行っていないが、顧客の好みの分析や集客に「ポーラレディ」効果を発揮している点も見逃せない。

　このほか地方では、四国・中国でスーパーを展開するフジ <8278> が、12年10月から日本郵便四国支社と提携し、食料品や日用品を届けるカタログ注文サービス「おまかせJP便」を開始し注目を集めている。さらに、デリバリーサービスを行うすかいらーく <3197> や壱番屋 <7630> 、デリバリー仲介サイト運営の夢の街創造委員会 <2484> [ＪＱ]なども関連銘柄として挙げられよう。

　最後に、楽天 <4755> にも注目したい。ネット通販大手である点に加えて、千葉大学発のベンチャー企業、自律制御システム研究所（千葉市稲毛区）などと組んで、ドローンを使った配送サービス「そら楽」を開始している。将来的には離島などへの応用も検討されており、買い物弱者解消への貢献が期待されている。


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