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【特集】1ドル「100円割れ」視界、“日銀ショック”後の世界 <株探トップ特集>

ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより

―連休中、投機筋「円」買い仕掛けも―

 先週28日に日銀は市場の期待が大きかった追加緩和を見送った。この日銀の決定を経て、急激な円高と株安が進行。市場には「日銀ショック」との言葉が飛び交っている。2日の為替相場では急激な円高が進行し、1ドル=105円台も視野に入り、日経平均株価も急落した。市場には、円高材料は目白押しの状態で「100円意識の円高も」と予想する見方が出ている。波乱の幕開けとなった5月の為替・株式市場は今後、どう動くのか。

●日銀「ゼロ回答」に失望感、「監視リスト国」で介入に支障も

 2日の東京市場では、急激な「円高・株安」が進行。為替は一時1ドル=106円15銭まで円高が進んだほか、日経平均は一時、1万5975円47銭まで下落した。先週28日の日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持を決定。市場には、「量・質・金利」の3次元緩和を期待する声が多かったが、日銀は「ゼロ回答」だった。

 これを受け、日銀会合まで111円60銭前後にあった為替は、5円強の円高が進行。日経平均も27日終値から1200円強下落した。「日銀は前週の決定会合で、できる限りの緩和を行う必要があった。それだけに、ゼロ回答で終わったことに対する、マーケットの失望感は強い」と日本アジア証券の清水三津雄エクイティ・ストラテジストは嘆く。

 とりわけ市場では一段の円高加速への懸念が広がっている。106円割れ目前の水準まで円は買われたが、「チャート上のポイントは105円00銭、その次は100円00銭」(外為オンラインの佐藤正和シニアアナリスト)とも言われている。目先の焦点は、ゴールデンウイーク(GW)後半の動向だ。「投機筋は、東京市場が休場で売買が薄くなったところで円買い・ドル売りを仕掛けてくる可能性もある」(FX関係者)という。また、警戒感を持って受け止められているのが、米財務省が為替報告書で日本を含む5カ国・地域を「監視リスト」に載せたことだ。「米国は円高が進んでも日本に協調して介入することはないだろう。日本は単独介入で対応せざるを得なくなった」と佐藤氏は予想する。

●「トランプ」「英国」懸念も円高要因に

 特に、105円割れへ円高が進んだ場合、東京市場で政府・日銀が円売り介入に踏み切るかが焦点。「もし介入に踏み切っても効果が限定的なら、100円を意識する展開を覚悟する必要がある」と佐藤氏はみている。また、6月と7月に予定されている日銀会合に対しても、「追加緩和に踏み切るか、市場は疑心暗鬼の状態にある」と上田ハーロー・外貨保証金事業部長の山内俊哉氏は指摘する。

 見逃せないのは、足もとの円高の底流には、米国の利上げ観測の後退があることだ。年初に年4回と予想されていた米利上げは、「年2回」に後退。足もとでは「年1回もできるかどうか」と言われている。さらに、米国でトランプ氏が共和党の予備選挙を勝ち進んでいることや、来月下旬に英国のEU(欧州連合)離脱を巡る国民投票があることも、相場の不透明感を高めており、安全通貨とされる円買いを強めさせている。目先的には、円高要因は満載であり「先行き100円割れも否定できない」(佐藤氏)状態だ。

●伊勢志摩サミット視野の経済対策に期待

 一方、期待要因は今月下旬に予定されている伊勢志摩サミットを前に政府は大規模な経済対策を打ち出す可能性があることだ。また、消費増税の延期も市場には円安・株高要因に働く。日本アジア証券の清水氏は「伊勢志摩サミット前後の経済対策を視野に入れれば日経平均の下値は1万5500円程度で、その後、1万7000円前後へ値を戻すこともあり得る」とみている。同様に上田ハーローの山内氏も「米国の景気回復と国内の経済対策などがあればドル円は110円近辺への戻りも」という。当面は、円高懸念から輸出株などは売り優勢が予想されるが、今月下旬にかけては景気対策絡みの建設など内需株主導の展開も予想される。

◆上田ハーロー外貨保証金事業部長・山内俊哉氏

「下値は103円前後、日銀に手詰まり感」

 28日の日銀金融政策決定会合後の円高・ドル安に関しては、事前の報道もあり期待を織り込み過ぎた面もあるかもしれない。ただ、2%の物価上昇目標を後ズレさせたのに、日銀は何も手を打たなかった。この点が「日銀の手詰まり感」として受け止められていると思う。市場としては6月あるいは7月の日銀会合では追加緩和に動いてくれるかどうか不透明となったとみているのだろう。

 米財務省は日本を中国などとともに、為替監視リストに載せており、政府・日銀からの為替介入もやりにくくなっている。さらに、米国の景況感に下振れ懸念が出ていることはドル安・円高要因となる。ドル円の下値メドは1ドル=103円前後。100円が近づくことで、政府は介入を含め円高にけん制を入れるだろう。一方、米景気状況や日本の景気対策などの内容次第では110円前後に値を戻すこともあり得るとみている。


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