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【特集】衝撃の新年度“594円安”、緊急調査「東京市場に何が…」 <株探トップ特集>

第一生命経済研究所 嶌峰義清氏(左)と松井証券 窪田朋一郎氏

―背景は? 下値メドは? 第一線の市場関係者に聞く―

 名実ともに新年度入りした1日の東京株式市場は急落に見舞われた。日経平均株価の終値は、前日比594円51銭安の1万6164円16銭。寄り付き前に発表された日銀短観3月調査の内容が、事前の市場予想に比べて悪化したことに加え、外国為替市場で円高・ドル安が進行したことも、株価下落を加速させた。そこで、新年度入り早々の急落の背景と今後の日本株式の見通しを、第一線の市場関係者に聞いた。

●日銀短観の業況判断悪化に警戒感

 日銀短観3月調査によると、企業の景況感を示す大企業製造業の業況判断指数(DI)はプラス6(事前の市場予想は8)と、前回の15年12月調査の12から悪化した。さらに、これまで良好な業況感を示していた非製造業の業況判断指数も6四半期ぶりに悪化した。また、16年度の事業計画の前提となる想定為替レートが、大企業製造業で1ドル=117円46銭と、足もとの1ドル=112円台に比べて「輸出企業にとっては極めて楽観的過ぎる」との見方が市場に広がり、これも売りを誘う結果となった。

●もちあい下放れで見切り売り加速

 さらに、市場関係者からは「3月入り以降、NYダウ平均株価がほぼ一本調子の上昇を続ける一方で、日経平均は1万7000円を挟んで小幅なレンジの推移で煮詰まり感を強めていた。NYダウの後を追うかたちでの上放れ期待が強かっただけに、25日移動平均線を大きく割り込むなど逆の結果が出てしまったことから、見切り売りが加速した面もある」との見方が出ていた。

●催促相場で政策前倒しの可能性も

 ただ一方では、今回の株価下落を“政策催促相場”と受け止める向きもある。5月26、27日開催の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)前に打ち出されるとの見方の多かった(1)緊急景気対策、(2)日銀による量的追加金融緩和、(3)消費増税の先送り――の政策の3点セットが前倒しされるとの見方も浮上しているようだ。

■第一生命経済研究所 首席エコノミスト 嶌峰義清氏

「“デフレ脱却”への成長戦略が必要」

 1日の日経平均の急落は、日銀短観の結果が市場予想に達しなかったことが響いたようだ。特に、製造業の想定為替レートは1ドル=117円台に置かれており、足もとの水準を考慮すれば、先行きの業績下方修正なども懸念される面もある。

 中国製造業PMIの結果は悪くなかったが、今晩の米雇用統計の発表を控え、買い要因とはならなかったようだ。とはいえ、このまま、一気に株価が下落するとは思えない。中国景気に明るさがみえたことで悲観的な見方は薄らいだ。米国景気は強いとみており、6月の利上げはあり得るとみている。今後の為替相場は円安方向に振れることを予想している。

 目先の日経平均は、1万6000円割れがあっても下値は限定的だろう。一方、5月の伊勢志摩サミット頃までを視野に入れれば、消費増税の延期や補正予算策定の動きも予想されるなか、日経平均は1万8000円程度まで上昇することはあり得るとみている。主力株全般の戻りは期待できると思う。

 ただ、中長期的な視点から気になるのは、日本経済に対する「デフレ脱却期待」が薄らいでいるようにみえることだ。13年、14年頃はデフレ脱却期待から、株価の下落場面では中長期スタンスからの外国人投資家の買いが入った。

 しかし、直近は外国人投資家が買いに回らず売り越しを続けている。この理由には、デフレ脱却期待が薄らいだことがあるように思える。この点が大きな問題だ。デフレ脱却に向け、政府は先行き「雇用の流動化」を促すような強い成長戦略を打ち出すことが求められているだろう。

■松井証券 シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎氏

「日経平均の下押し圧力強まる展開に」

 新年度相場は初日から売りの洗礼を浴びる結果となったが、この背景には大きく3つの要因が絡んでいるとみている。

 まず、3月日銀短観では、大企業製造業と非製造業の景況感が悪かったうえ、先行きもかなり弱気に見ていることが確認された。しかも16年度の想定為替レートは1ドル=117円46銭と実勢よりもかなり円安水準が前提となっており、一段の下方修正リスクも内包している。これが、企業ファンダメンタルズ面からネガティブな印象を与えている。

 また、ミクロ面からもパナソニック <6752> の中期事業見通しの下方修正が製造業の前途多難を暗示する格好となった。同社は19年3月期の売上高目標を従来の10兆円から8兆8000億円に1兆2000億円も引き下げ、株価も急落の憂き目を見た。これが全体相場の下げを助長する要因のひとつになったと考えている。

 さらに、前日までは3月期末の株価を意識したドレッシング買いが下値を支え、それを見込んだ押し目買いや売り仕掛けを抑制する効果があったとみられる。それが剥落したことで、需給面からも追い討ちがかかった。

 4月下旬から5月にかけて企業の決算発表を控えるなか、日経平均は当面厳しい環境を強いられる公算が大きい。日経225ベースのEPSは現状で1123円。時価水準で換算したPERは14.5倍近辺だが、下方修正懸念を考慮した場合PERはこれよりも上昇し割高感が意識されることになりそうだ。当然ながら、決算発表時の企業の想定為替レートは117円台よりも円高に修正される可能性が高まり、企業側のガイダンスもそれだけ弱気に傾く。株価は6月にかけて調整ムードの強いものとなり、慎重な対応が求められそうだ。

 年央に向けての日経平均はボックス圏を弱含みで推移することが予想され、レンジとしては下値1万5000円前後、上値については1万7000円が上限ラインに意識されそうだ。


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