【特集】「日銀追加緩和見送り、今後の展開は?」(2) 吉野晶雄氏に聞きました! <直撃Q&A>
吉野晶雄氏(アムンディ・ジャパン チーフエコノミスト)
15日の日銀金融政策決定会合では、金融政策は「現状維持」が決定された。一部で根強く出ていたサプライズ緩和は結局、見送られたが、今後に対して依然、追加緩和を実施するとの観測は根強い。市場関係者は、日銀の政策動向をどう評価し、次回の緩和はいつ行われるとみているのか。アムンディ・ジャパンのチーフエコノミスト、吉野晶雄氏に今後の見通しを聞いた。
●吉野晶雄氏(アムンディ・ジャパン チーフエコノミスト)
Q1 今回、追加緩和が見送られた理由は?
1月に日銀はマイナス金利政策の導入を発表したが、その後の混乱は収まっていない。1月の決定は円高・株安という日銀が期待したものとは、逆の事象を生んだ。10日の欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利拡大の決定も同様の結果となり同政策の限界を伝えてしまったとも言える。今回の決定でもMRF(マネー・リザーブ・ファンド)へのマイナス金利を適用せず、実務的な対応をせざるを得なくなったことは象徴的だ。今回の見送りは、マイナス金利政策の影響を見定める必要があると判断したのだろう。
Q2 次の追加緩和があるとすれば、その時期と方法は?
マイナス金利政策は年金面を含め、個人の資産運用を不安にさせている。とは言え、2%インフレ目標の達成は難しく、春闘の賃上げも厳しい。この状況では追加緩和を実施する必要はある。日銀はマイナス金利には触れずに、資金供給量の80兆円の増加を100兆円としETF買い入れ額を拡大するという「量的・質的緩和」を4月に実施するとみている。選挙が近づく6月に入ってからは、資産面に不安を感じさせるマイナス金利という言葉が出てくるのは政治が嫌うと思う。むしろ、「増税撤回」を前面に出したいはずであり、日銀の追加緩和は選挙前の4月に実施して欲しいという意向が働きそうだ。
Q3 当面の株式相場や為替相場をどう見ますか?
ドル円相場は、米国の目先利上げなしを織り込んでいる。ただ、ユーロはショート(売り)が貯まっている状況にあり、買い戻しによるユーロ高・ドル安は予想され、結果としてドル安・円高が進むことはあり得る。今後1カ月程度では1ドル=109~115円のレンジを想定しており、円高リスクをみておく必要があるだろう。日経平均株価は1万6200~1万7500円前後。年初のような下げはもうないだろう。しかし、為替の円高を織り込んだ場合、来期業績に懸念も出てくる。新年度に入り、株価が弱含む懸念はあると思う。
(聞き手・岡里英幸)
株探ニュース