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【市況】【北浜流一郎の乱にチャンスあり!】


「スローダウンながら、続伸力はキープ」

●ギリシャはデフォルトを回避か

 東京市場の月初めは大抵波乱か調整。これが一種の定番になっているが、今月も同様の展開になっている。

 月初めから軟調展開となり、9日には実に日経平均株価が360円も下げたりした。その後はなんとか持ち直しつつあるものの、まだ安定性を取り戻したとは言い難い状況だ。

 最大の懸念材料は、もちろんギリシャの債務問題だ。この問題はこれまで幾度も市場の攪乱要因となってきたため、正直ギリシャと聞いただけで、またか、と思ってしまうのだが、それでも無視するわけにいかないのでやっかいだ。

 ギリシャには債務の返済能力がないのは誰もが分かっている。そのため、ギリシャ政府は条件闘争に入っているわけだが、債権国との交渉でどちらの言い分が通るのか。

 これまでのところは、ギリシャが色々ゴネながら有利にことを進めてきた。恐らく今後もそれは変わらないだろう。ギリシャがユーロから離脱などということになれば、ユーロ圏全体が損失を被るからだ。

 家柄の良さで知られる一家に、出来の悪い息子がいて、あれこれ放蕩を繰り返し、破産寸前となった場合、家長はどうするか。名家であればあるほど世間体を気づかって息子にお金を出さざるを得なくなるだろう。他の家族もそれに賛成するはずだ。

 いま欧州では、これに類似したことが起きていて、ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥るかどうかが月末に決まることになっている。デフォルトか、それとも緊縮財政の実行か。世界の金融市場は答えが出るのを待っているところであり、どの市場も積極的に株を買い上がれない状況だ。

 では、どちらになる可能性が高いのか。正直、予測は困難ながら、デフォルトは回避され、ギリシャはこれまで同様、EU債権国の支援を受けながら財政再建に勤めると見てよい。

 デフォルトと認定され、ユーロ圏から離脱したとしても、財政を再建しなければならないことに変わりはないからだ。しかも、ユーロ圏から抜けてしまえば、IMFの下で単独で再建しなければならない。そうなった場合、現在よりももっと厳しい状況に追い込まれてしまうのは明らかだ。

 ギリシャのツィプラス政権はなかなかしぶとく、タフだ。そのため、現在スポンサーとなっている自国以外のEU各国を逃すはずがなく、しっかりくっついて交渉を重ね、自国に都合がよくなるよう策を弄し続け、結局はデフォルトを回避すると見る。

●日銀総裁発言の真意

 ただ、東京市場の回復力が鈍っているのは認めねばなるまい。黒田日銀総裁の円安牽制発言があったからだ。同総裁は10日、衆議院財政金融委員会で民主党前原議員の質問に対し、「実効為替レートでは、かなり円安の水準になっている。実質実効為替レートがここまできているということは、ここからさらに円安に振れるということは普通に考えればありそうにない」――こう述べたのだ。

 つまり、これ以上の円安はないだろう……と。

 これは日銀総裁として異例中の異例となる発言だ。日銀総裁に限らず政府首脳は通常は為替の水準について見解を述べることはないからだ。それに為替は財務省の専権事項。日銀総裁としては越権発言ともなる。それが分からない総裁ではないと思われるのに、こんな発言をした総裁の真意はどこにあるのか。

 実際に円はこれ以上下がって欲しくない。こんな気持ちがあるからと見るのが自然だ。ということから見えてくるのは、もう追加の金融緩和を行うつもりはないと考えてよい。そのため、円は実際にはさらに下がるだろうが、これまでよりもそのスピードは非常に緩やかなものになり、日経平均の上昇も5月に比べてスローダウンしてしまうだろう。

 しかし、大事なのは続伸力。それはなおキープされているため、収益好転・向上銘柄を中心に、株主還元策の実行に積極的な企業などがさらに水準を高める状況に変わりはない。しかも、大型株も水準訂正の動きに入ってるだけに銘柄も多彩だ。

 以上のような観点から、まずはNTT <9432> だ。典型的な大型株ながら収益は着実に上向き続けていることを考えると、株価は戻り新値に進むと見る。同じく大型株では化学大手の住友化 <4005> がある。地味な値動きながら石油化学や医薬品が好調で株価も続伸が見込める。

 後発医薬品向け原薬製造で知られるダイト <4577> も調整終了で浮上方向に転じたとみてよい。4月から5月にかけて急落したユニチャーム <8113> も、売られすぎに対する見直し買いで持ち直しつつあり魅力的だ。そして、最後に真珠大手のTASAKI <7968> を。

2015年6月12日 記

「チャートブック日足集」No.1574より転載

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