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【市況】【植木靖男の相場展望】


「目先調整後、1万5500円処へ」

●沈黙を続ける海外投資家

 株価は5月21日を安値に上昇に転じてきた。当日、後場にかけて突如、僅か数時間で円が急落した。海外市場が夜間で、特に材料も見当たらないのにである。

 これをきっかけに株式市場では買いが勢いを得て、1万4000円大台を巡る売り方、買い方の熾烈な闘いも買い方有利の展開で決着をみた。後ほど明らかになったのであるが、この週は年金が大量に買ったとされる。

 かくして、株価は上昇気流に乗った。5月23日には5月13日の1万4425円を突破、底入れ確認となった。

 このあとは順調に上昇したが、1万5000円大台に乗せてからはやや上値の重い展開となっている。

 折しも1月以降の下げ局面で最初の戻り高値、3月7日の1万5274円に接近したことや1万5000円大台に乗せたという達成感もあって、さらには6月のメジャーSQが迫るといったことが重なってもみ合いに転じた。しかも、SQ前日には6月10日安値1万4994円を割り込んでしまった。これで目先的には戻り高値更新はやや遠のいたとみられる。

 ともあれ、多少遅れるにしても、いずれオプション市場でコールの建て玉残が最も多い1万5500円処に向かうとみられる。それまでは下値、これまたオプション市場でプットの建て玉が最も多い1万4500円あたりがメドとなろうか。

 気掛かりは、これまで株価が底入れから回復に向かう過程で常に主役を演じてきた海外勢が今回は沈黙を続けていることだ。

 東証調べでみても、5月に入って以降、売り越しが続いている。つまり、主役は年金なのだ。

 目下、年金に占める国内株式の比率は17%前後といわれる。運用見直しで8月頃には、この比率を引き上げるという。仮に20%とすれば、1%=1兆円として3兆円の新規需要が出ることになる。

 だが、これはあくまでも構成比率だ。株価が上昇すれば、なにも買わなくても20%に達する理屈だ。

 いま、個人投資家の過半は短期投資、つまり目先筋といわれる。だとすれば、年金と海外勢では自ずと評価が違ってくる。要は上値を買ってくれなければ個人投資家は困るのだ。

 では、海外勢はもう登場しないのであろうか。

●高値を更新の銘柄に注目

 定かではないが、6月中に提示されるアベノミクス第三の矢である成長戦略を見極めようとしている、といわれる。骨太方針を海外勢が高く評価すれば、格別、投資に優位性のあるエリアが存在しない現在、割安感のある日本株を再び買ってくる可能性は大きいのではないか。

 海外勢が日本株を買う前提に米国株価動向がある。“債券高、株高”が続く米国市場だが、目先的には長期金利に底入れ感がみえてきた。いまのところドル円相場には動きがみられないが、注目したい。

 円安、株高の方程式はなお持続している。米国長期金利上昇→ドル高・円安→日本株上昇のシナリオを辿ることになろう。

 さて、当面の物色対象はどうか。底入れの段階では、なお主柱は定かではない。むしろ、今回の底入れは全てといっていいくらい全体的に底上げされつつあるようだ。今回の上昇相場が意外と大きくなりそう、との根拠でもある。

 こうした中、社会環境の変化、技術革新、海外への進出などによって2000年以降の高値を更新してきた銘柄に注目したい。

 東日本大震災関連ではNIPPO <1881> 、羽田空港拡張関連では三愛石 <8097> 、日本空港ビル <9706> 、海外進出ではファミリーM <8028> 、キッコマン <2801> 、次世代の水素自動車関連では岩谷産 <8088> 、富士山の世界遺産では富士急 <9010> 、新製品開発関連ではTOTO <5332> 、花王 <4452> などが挙げられよう。

2014年6月12日 記

「チャートブック週足集」No.1978より転載
(「株探」編集部)

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