小川英幸氏【英EU離脱の衝撃!株価回復の行方は?】(3) <相場観特集>
ブレグジット(英国のEU離脱)ショックによる前週末24日急落の反動もあり、週明け27日の東京株式市場は大幅反発に転じた。日経平均株価終値は、前週末比357円19銭高の1万5309円21銭となった。政府と日銀が緊急会合を開き、金融市場安定への流動性確保を確認したことで、機動的な政策対応への期待感が買いにつながったという。ひとまず連鎖安に歯止めが掛かったものの、英国のEU離脱のマイナス影響の実体は依然として不透明なままだ。今後の相場見通しについて、第一線の市場関係者に聞いた。
●「円高の流れが近く変わり株価は安定に向かう」
小川英幸氏(光世証券 本店コンサルティンググループ 課長代理)
英国のEU離脱の決定により、株価は世界中で大きく下落し、リスクオフとなっている。日本でも、円高、株安が一気に進んだ。世界的な大幅な株価下落の動きに、リーマン・ショック以来の金融危機を想起する声もあるが、金融市場の信用不安が高まると上昇すると言われるTEDスプレッドは今のところ上昇しておらず、金融危機のような状態を想定する必要はないだろう。
世論調査などで残留派が優位となり、金融市場はそれを織り込んでいたため、現在、市場は一時的に混乱しているが、中銀や政府などは事前に離脱を想定した準備を行っており、長期的な混乱につながるようなことは起こらないだろう。日本株にとっての問題は英国のEU離脱ではなく、一方的に進んでいる円高だ。足もとの一時1ドル=100円を割り込むような動きは、さすがに日本経済にとって良い動きとは言い難い。しかし、今後は円高の流れも近く変わり、株価も安定に向かうと考えられる。
現在の円高の動きは、日本の貿易収支の大幅黒字化と、FRBの政策金利引き上げ回数見通しの減少を要因としている。だが、直近発表された貿易収支では季節調整済み前の値が赤字となり、また、今回の英国のEU離脱で米国の年内の利上げ回数はゼロと見る向きが増加した。そして今後、日銀による緩和が想定されることを考えると、そろそろ円高局面は終わったと見ることが出来る。
日本株も落ち着きを取り戻し出直りに向かうだろう。日本では財政支出が秋には発表されるとされる。また、G7サミットでは受けが悪かったようだが、欧州などでも英国のEU離脱に伴なう混乱を受け、財政支出の増加に向かう可能性が高いと考えられる。そのため、金融緩和と財政出動というカードがそろい、世界経済が成長経路に入るのではないか。今後の投資戦略としては、円高トレンドの反転の視点から、輸出関連株の押し目買いが良いのではないか。受注の増加が見られる有機EL製造装置関連や、円安メリットのある自動車株に注目している。
(聞き手・加藤智)
<プロフィール>(おがわ・ひでゆき)
1977年滋賀県生まれ、2000年滋賀大学経済学部卒。光世証券入社後、先物オプションや現物の自己売買部門を経て、2015年12月からコンサルティンググループに所属。
株探ニュース