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9279 ギフトホールディングス

東証P
3,015円
前日比
-45
-1.47%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
34.4 8.30 0.60 1.13
時価総額 602億円
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ギフトHD Research Memo(7):値上げのなか客数が増加、営業利益は前年同期比42.5%増と高伸長


■業績動向

2. 2023年10月期第3四半期の業績概要
ギフトホールディングス<9279>の2023年10月期第3四半期の業績は、売上高が前年同期比36.1%増の16,632百万円、営業利益が同42.5%増の1,598百万円、経常利益が同8.5%減の1,652百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同8.5%減の1,129百万円となった。価格改定が想定以上にコストパフォーマンスの向上につながったため、売上高、営業利益に加え経常利益以下も通期見通しに対して8割前後の進捗率と、非常に好調な推移になったと言えよう。なお、前年同期の営業外収益に時短協力金など補助金収入665百万円を計上した反動により、経常利益以下は減益になった。

日本経済は、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の法上の位置付けが「2類」から季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げられたことから、コロナ禍以前の経済状況、生活状況を取り戻す動きが活発化した。特にここ数年抑制されていた旅行や娯楽・外食といった個人消費において顕著な改善が見られる。同時に訪日客も急増しており、インバウンド需要への期待も大きい。しかし、コロナ禍やウクライナ情勢に端を発する原材料高、日米金利差を背景とする円安などから物価上昇が続いており、個人消費の足を引っ張ることが懸念されている。こうした経済環境下、旅行や娯楽・外食といったサービス消費は堅調に回復しつつあるが、未だコロナ禍以前の水準に至らず、円安傾向もあって急速に回復するインバウンド需要のさらなる拡大に期待する状況である。一方、原材料高による値上げや人手不足に対する賃上げが不可避な状況となった。

同社は、コロナ禍という事業環境下にあっても利益を追求し続けるという経営スタンスを貫き、「日常食」という強みを生かして新規出店など積極的な事業展開を進めたほか、テイクアウトサービス、宅配(フードデリバリー)サービス、ECなどコロナ禍の新たな顧客ニーズにも対応、現在も堅調を維持している。原材料高に関しては、前述したように、「日常食」として最低限の値上げに留めたことで、他のラーメン店に比して客数の戻りが非常に早かった。一方、BCP(事業継続計画)の観点から立地や生産品目など生産体制の戦略的見直しを図っており、製麺工場、チャーシュー工場、スープ工場を供給先の直営店・プロデュース店に合わせて適正配置を行った。また、SCM(サプライチェーンマネジメント)の視点から物流効率や物流コスト、物流時間の大幅改善を進めており、2022年までに関東と中京・関西に物流倉庫を配備したが、2023年4月には北関東・東北物流センターを新たに開設した。この結果、直営店とプロデュース店に対して効率的な後方支援体制を構築することができた。

さらに、QSCAと生産性の向上を目的に改装を加速、コンロのIH化によるスープクオリティの安定化、最新レイアウトによる作業効率の改善及びCO2排出量削減につなげた。外食業界で人手不足が深刻化していることに対しては、人材確保を最重要課題として、採用の強化と退職率の低減に注力した。このうち採用強化では、本社移転を発表するとともに、アルバイトやパートからの社員登用によるカンテラ採用、OB・OGの囲い込みなどによるアルムナイ採用、コーポレートブランディングの強化などにより、応募者数増加と内定率向上につなげる予定である。離退職率低減では、福利厚生の改善、多様なキャリアパスの提示、労働環境の改善、研修などを通じた入社前後のギャップ解消などにより、働きやすさと働きがいを両立させた。

このように施策をフル動員したことで、2023年10月期第3四半期の売上高は前年同期比36.1%増と高い伸びとなり、通期見通しに対する進捗率も81.1%と高率であった。コロナ禍からの駅近店の急速な回復と価格改定が要因だが、コロナ禍以前の2019年10月期第3四半期との直営店既存店比較でも、全日で13.0%増、ランチタイムで3.3%増、アイドルタイムで9.5%増、ディナータイムで18.2%増と、駅近店がけん引して全時間帯で売上高が伸びた。先行して業況が好転したロードサイドの影響でランチタイムの伸びは低くなったが、稼ぎ時でもあるディナータイムは駅近・ロードサイドともにけん引している。また、プロデュース店も順調に回復した模様である。価格改定の影響だが、1月の改定後は客数が3.1%増となり、売上高も13.7%伸びた。7月の改定後も客数・売上高ともに伸びており、4月から8月まで5ヶ月連続で客数がコロナ禍以前を上回った。コロナ禍で広がった宅配など店舗外需要も堅調のようだ。まさに価格改定を機にしたコストパフォーマンスが向上したことで、同社への集約化が始まったところと言えるかもしれない。

営業利益は前年同期比42.5%増と売上高を上回る伸びとなり、通期見通しに対する進捗率も78.0%と高率であった。既存店売上高が好調だったことが主因だが、売上総利益率の低下を前年同期比2.2ポイントに留めた一方、販管費率を同2.7ポイント改善させたことも大きな要因である。原材料価格や運送費の上昇などにより仕入価格が上昇したが、原価と人件費の両面からコスト上昇分を吸収できるように価格改定するという、コスト上昇に対する同社の基本方針により、売上総利益額は確保したが、売上総利益率が低下することとなったのである。一方、販管費率が大きく改善したが、最新レイアウトによる動線の改善、マルチデバイスの導入などDX推進による社内工数の削減、製造・購買・物流体制の強化など重要テーマに沿った中期的な取り組み、なかでも2023年4月に開設した北関東・東北エリア向け物流センターの効果により、人時生産性が大きく改善したことが要因である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《SI》

 提供:フィスコ

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