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9256 サクシード

東証G
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時価総額 34.3億円
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サクシード Research Memo(7):減益は将来の収益確保に向けた先行投資が要因


■業績動向

1. 2023年3月期の業績動向
サクシード<9256>の2023年3月期の業績は、売上高2,939百万円(前期比13.4%増)、営業利益382百万円(同9.8%減)、経常利益399百万円(同5.2%減)、当期純利益は269百万円(同4.1%減)となった。期初の同社予想と比較すると、売上高で143百万円、営業利益で50百万円、経常利益で33百万円、当期純利益で17百万円の未達となった。

日本経済は、コロナ禍による行動制限の緩和を背景に、経済活動が正常化へ向かって緩やかな回復傾向にあるものの、ウクライナ情勢の長期化や日米金利差拡大による物価上昇など、先行きについて依然として不透明な状況が続いている。こうした情勢のなか、教育業界では、教育現場における教員の長時間労働の実態が浮き彫りになり、部活動の地域移行や外部人材の活用が注目を集めている。また、ICT支援員については、文部科学省が掲げる「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」で目標とする水準「4校に1人配置」に届いておらず、今後も必要な配置が求められる状況となっている。学習塾業界では、2022年の学習塾業界の売上規模が微増となり、コロナ禍からの順調な回復が見られる。福祉業界では、共働き世帯の増加に伴って保育需要が増加するなか、保育施設が増えて待機児童問題は解消に向かいつつあるが、保育士不足や保育の質の低下が懸念されている。また、小学校入学後に親の働き方を変えざるを得なくなる、いわゆる「小1の壁」の問題が深刻さを増している。こうしたことから、子育て支援事業者の社会的役割は一段と重要性を増していると言うことができる。

このような環境下、同社が事業領域とする教育と福祉ではどの分野も人手不足が高水準で続いているため、同社は、個別指導教室や学童施設の出店に対する設備投資や人的投資、営業規模拡大に伴う広告費の増加など、必要な投資を積極的に進めた。この結果、売上高は教育支援人材事業がけん引して2ケタ増を達成したが、個別指導教室や学童施設の出店費用や、営業規模拡大に伴う人件費や広告費、本社の増床費用、公的案件の獲得拡大に向けた認証取得費などの費用が売上高の伸びを上回って伸長、営業利益は減益となった。特に家庭教師の全国展開に向けた広告費や個別指導塾の新規開校などの費用負担が大きく、営業利益率を押し下げる要因となった。ただし、これらは将来の売上や利益に向けた先行コストと言うことができ、営業利益率も期初から低下する計画となっていた。なお、前期に営業外費用で発生した上場関連費用がなくなったことで、経常利益の減益幅は営業利益の減益幅に対して縮小した。また、当初の同社予想との比較で未達になったのは、期中に行った介護人材事業からの撤退、広告予算を抑えることよりも先行投資効果を重視したこと、オンライン家庭教師が想定ほどに伸びなかったことなどが要因である。


事業環境や戦略の違いによりまちまちな業況
2. 2023年3月期の事業セグメント業績
セグメント別の業績は、教育人材支援事業が売上高852百万円(前期比30.7%増)、セグメント利益120百万円(同15.2%減)、福祉人材支援事業が売上高395百万円(同10.2%増)、セグメント利益93百万円(同78.2%増)、個別指導教室事業が売上高1,114百万円(同10.2%増)、セグメント利益265百万円(同0.9%増)、家庭教師事業が売上高576百万円(同1.4%増)、セグメント利益118百万円(同9.9%減)と、事業環境や戦略の違いによりまちまちな結果となった。以下、セグメント別の状況である。

教育人材支援事業は、教育現場の課題が様々な場面で注目されるようになってきたため、受注環境としては加速度的に良化している模様である。なかでもICT支援員派遣サービスについては、教育現場のDX推進という環境のなかで地方自治体向けの受注が増加した。直接受注以外にも、人材サービスを持たない他社から発注を受けるケースも多くなっているようだ。また、部活動指導員・部活動の運営受託サービスについては、新規を含め引き続き私立校からの受注が強い伸びを示している。一方で、マーケットの大きい公立校は、教員の働き方改革が課題にあるものの年度予算のため期中に予算を追加できないこと、もとより慎重なことなどを背景に伸びが鈍かったが、足もとではテストケースではあるが、東京や横浜、川崎などで受注が入ってきているようだ。部活動指導員に関しては、私立校でのノウハウが蓄積できているうえ競合も少なく、非常に期待のできる分野となってきた。学校教員については、部活動指導員と同様で、公立校は課題に対する認識はあるものの予算上の問題で民間サービスの活用は難しかったが、テストケースとして受注が入ってくるようになったようである。公立校へのサービス拡大の期待はもちろん大きい一方、私立校においては人材難から引き続き引き合いが強く、拡大余地が依然大きい分野と言える。このように今後の成長が期待できる分野のため、サービス拡大に向けた人件費や、新規登録者獲得のための募集費、公的案件の獲得拡大に向けたISMS/ISO27001認証の取得費などの先行費用が利益を押し下げた。

このほか福祉人材支援事業は、学童保育施設や放課後等デイサービスの施設数が増加し、人材紹介・派遣の同社への引き合いが加速度的に増えたため2ケタ増収となった。一方、企業文化でもある子ども向けのサービス強化を図るため、収益性の低い介護向け人材サービスから撤退、人員リソースを子ども向けサービスへシフトしたことで利益率が改善し大幅増益となった。

個別指導教室事業では、2022年3月に「つきみ野校」と「弥生台校」、7月に「中川校」、10月に「湘南台校」、2023年2月に「ペンタスkidsセンター北校」を開校(累計28校)、新規校舎の入塾者数も順調に増加した。加えて既存校舎も稼働率が高まったことで期首在籍生徒数が前期を上回り、授業の受講数が増加、事業売上高は2ケタの伸びとなった。一方、新規出店に加えて一部校舎移転のコストも発生したため、利益は微増にとどまった。収益的には、開校後概ね1年~1年半で黒字化、以後稼働率90%~100%の既存校舎となって収益に貢献するが、新規校舎が多いと出店費用が先行するビジネスとなっている。

家庭教師事業は、オンライン型家庭教師サービスが市場拡大に伴って会員数を増加したものの、対面型の家庭教師や塾に回帰した生徒も多く、想定に至らず、売上は微増にとどまった。一方、オンライン型家庭教師サービスの需要増加を見込んで、首都圏や関西圏に限っていたWebプロモーションを全国に拡大したため、広告宣伝費が増加して減益となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《SI》

 提供:フィスコ

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