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9119 飯野海運

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飯野海運 Research Memo(6):2023年3月期は円安や市況上昇で大幅増収増益


■業績動向

1. 2023年3月期連結業績の概要
飯野海運<9119>の2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比35.8%増の141,324百万円、営業利益が同163.6%増の19,835百万円、経常利益が同119.2%増の20,677百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同81.1%増の22,681百万円だった。平均為替レートは135.07円/米ドル(前期は112.06円/米ドル)、平均船舶燃料油価格(適合燃料油)は802米ドル/MT(同558米ドル/MT)だった。

大幅増収増益で過去最高益だった。前中期経営計画の最終年度として目標値(売上高900~1,100億円、営業利益75~85億円、経常利益70~80億円、親会社株主に帰属する当期純利益70~80億円)を大幅に超過達成して着地した。不動産業は電力料金上昇による光熱費の増加などで減益だったが、海運業は円安・市況上昇効果を背景に、従来から進めている既存契約の有利更改や効率配船など運航採算向上に向けた各種取り組みが寄与した。営業利益の前期比123.1億円増益の内訳は、大型原油タンカーが支配船舶の長期契約への投入や稼働増加などで1.3億円増、ケミカルタンカーが市況上昇を受けたアジア出しスポット貨物の取り込みによる運航採算向上などで68.9億円増、大型ガス船が入渠費用減少やVLGC市況上昇などで16.7億円増、ドライバルク船が船舶調達コスト減少や稼働増加などで7.7億円増、不動産が管理費(光熱費など)増加で3.5億円減、その他が為替の円安効果などで32.0億円増だった。売上総利益率は20.3%で5.9ポイント上昇、販管費率は6.3%で0.8ポイント低下、営業利益率は14.0%で6.8ポイント上昇した。営業外収益・費用では為替差損が216百万円となり、前期から996百万円悪化(前期は為替差益780百万円)した。特別利益では固定資産売却益(売船)が3,488百万円となり、前期から減少(前期は4,428百万円)した。特別損失では前期計上の投資有価証券評価損969百万円が剥落した。

2. セグメント別動向
セグメント別の動向は以下のとおりである。

(1) 外航海運業
外航海運業は売上高が前期比42.9%増の117,977百万円、営業利益が同439.8%増の15,440百万円だった。大型原油タンカーは支配船舶を長期契約に投入したほか、入渠がなく稼働が増加した。ケミカルタンカーは、基幹航路である中東域から欧州及びアジア向けの安定的なCOAに加え、市況の上昇を受けたアジア出しスポット貨物を効率的に取り込み、運航採算が大幅に向上した。大型ガス船は既存の中長期契約を中心に安定収益を確保し、入渠費用の剥落なども寄与した。なお期末には、LPGを推進燃料とし、クリーンエネルギーとして注目されているアンモニアを貨物として積載できる同社初の大型ガス(LPG)船が竣工した。ドライバルク船は専用船が順調に稼働したことに加え、船舶調達コストの減少も寄与して想定以上の運航採算を確保した。

(2) 内航・近海海運業
内航・近海海運業は売上高が前期比10.2%増の10,503百万円、営業利益が同15.6%増の594百万円だった。内航ガス輸送は、プラント定期修繕による石油化学ガス出荷量の一時的減少の影響を受けたものの、全体としては産業用LPGの底堅いプラント間転送需要により堅調に推移した。民生用LPGは、夏場まではコロナ禍の影響による外食及び観光産業需要の減少により低調だったが、秋口以降は経済活動の再開などで回復傾向となった。近海ガス輸送は、中国のゼロコロナ政策による経済鈍化で夏場に輸送需要が低迷したが、LPGの安定した海上輸送需要に加えて、新造船の竣工が限定的だったため、アジア域ではおおむね堅調に推移した。

(3) 不動産業
不動産業は売上高が前期比5.5%増の12,930百万円、営業利益が同8.4%減の3,801百万円だった。主力の飯野ビルディングを中心にオフィスフロアの稼働が堅調に推移したが、電力料金上昇による光熱費の増加などで減益だった。


自己資本比率上昇、D/Eレシオ低下
3. 財務の状況
財務面で見ると、2023年3月期末の資産合計は前期末比18,323百万円増加して265,453百万円となった。現金及び預金が2,885百万円、船舶(純額)が3,176百万円、建設仮勘定が8,862百万円、投資有価証券が1,625百万円それぞれ増加した。負債合計は同1,032百万円減少して154,765百万円となった。未払法人税等が1,224百万円、前受金及び契約負債が892百万円それぞれ増加したが、有利子負債が6,244百万円減少した。純資産は同19,355百万円増加して110,688百万円となった。利益剰余金が17,179百万円増加した。この結果、自己資本比率は4.8ポイント上昇して41.7%となった。またD/Eレシオは0.28ポイント低下して1.04倍となった。利益剰余金の積み上げによる自己資本比率の上昇、有利子負債返済によるD/Eレシオの低下など、財務体質の改善が進展している。海運業と不動産業を両輪に安定収益基盤を構築しており、財務健全性に特に懸念材料は無いと判断できるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《SI》

 提供:フィスコ

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