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9119 飯野海運

東証P
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PTS
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11:29 05/13
業績
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時価総額 1,400億円
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飯野海運 Research Memo(4):環境負荷軽減や競争力強化に向けた環境配慮型船舶


■飯野海運<9119>の事業概要

3. 環境配慮型の最新鋭・次世代燃料船
2020年1月から国際海事機関(IMO)の船舶燃料硫黄分の規制(SOx規制)強化が適用開始となった。船舶燃料に含まれる硫黄分濃度を従来の「3.5%以下」から「0.5%以下」とする国際規制の強化である。対応選択肢としては、低硫黄燃料油(規制適合燃料油)の使用、またはSOxスクラバー(船舶の排出ガス中のSOxを除去する脱硫装置)の設置がある。

この規制強化のマイナス影響としては、規制適合燃料油対応仕様に変更するための船用品・修繕費の増加や、従来の舶用燃料油と規制適合燃料油との価格差などのコストアップ要因がある。プラス影響としては、規制適合燃料油の輸送需要の発生や、規制強化に対応できない船が淘汰されることによる需給バランスの改善などで、プロダクトタンカーやケミカルタンカーの市況上昇につながる効果が期待される。

同社の対応としては、規制適合燃料油使用をはじめとする環境規制への対応費用の負担を荷主に求め、COA(数量輸送契約)等の契約に反映すべく交渉を行っている。さらに規制適合燃料油使用にとどまらず、海運業における地球環境負荷軽減や競争力強化に向けた取り組みとして、環境配慮型の最新鋭・次世代燃料船へのシフトも推進している。

2019年12月には同社初の二元燃料主機関搭載メタノール船(規制適合燃料油だけでなく、従来の重油と比較して硫黄酸化物SOxや窒素酸化物NOxの大幅削減も期待されるメタノールを推進燃料とすることが可能)が竣工した。2020年3月には同社初のSOxスクラバー搭載船(VLCC)が竣工した。その後の新造船においてもSOxスクラバー、海洋生態系保護のためのバラスト水処理装置、船尾フィン及びフィン付き舵(Rudder-Fin)などを装備した最新鋭船へのシフトを推進している。2021年1月には同社として5隻目となるSOxスクラバー搭載船(VLCC)が竣工した。

2022年2月には、同社として初の二元燃料主機関搭載VLGCが竣工した。上甲板にLPGタンクを搭載し、貨物とは別に燃料用LPGを積載することで、規制適合燃料油だけでなくLPGを燃料として使用することが可能になる。SOx規制に対応していることに加えて、新造船のCO2排出規制であるEEDI(Energy Efficiency Design Index)規制についても、2022年以降の建造契約船から適用されるフェーズ3に先行対応している。

また2021年10月には三井物産<8031>と、2023年度の後半に竣工予定のアンモニア運搬船の定期用船契約を締結した。本船は世界的な船級協会である米国ABS(American Bureau of Shipping)によるアンモニア燃料船化の基礎認証を受けて設計・建造される世界初のアンモニア運搬船で、LPGも輸送可能な次世代型船舶である。CO2排出が削減できるLPG燃料や、ゼロエミッション燃料として注目されるアンモニア燃料への切り替えにも対応できる環境負荷低減型の船舶として、本邦船社初の建造となる。

さらに2023年1月には、A-Eの5段階で毎年の燃費実績を評価・格付けし、一定の評価を下回った船に改善計画の提出と主管庁による認証を義務付けることで、継続的な省エネ運航を促進させることを目的としたCII規制(Carbon Intensity Indicator規制、燃費実績の格付)が施行された。同社は、これらの環境規制に対応するべく、次世代燃料船の竣工に加え、海外スタートアップとの協業や、技術部・サステナビリティ推進部の新設により、環境への対応を加速させている。

4. 不動産業
不動産業はオフィスビル賃貸・管理・メンテナンスを行っている。本社ビルである飯野ビルディング(イイノホール&カンファレンスセンター含む)など、東京都心部の一等地に賃貸オフィスビルを複数所有していることが特徴だ。また、フォトスタジオ事業(イイノ・広尾スタジオ、イイノ・南青山スタジオ)など関連事業も展開している。

1983年竣工の東京富士見ビル(東京都千代田区)、1988年竣工の飯野竹早ビル(東京都文京区)、2006年竣工の汐留芝離宮ビルディング(東京都港区)のほか、2009年に飯野ビルディング(東京都千代田区)の建て替え工事に着手し、2011年10月に飯野ビルディング1期工事が完了して開業、2014年11月に飯野ビルディング2期工事が完了してグランドオープンした。2017年12月にはNS虎ノ門ビル(東京都港区、2016年竣工)の一部持分を取得した。2020年3月には英国ロンドンのオフィスビルBRACTON HOUSEを取得(2020年1月設立の現地連結子会社が取得)し、海外不動産を事業ポートフォリオに加えた。

なお事業ポートフォリオ見直しに伴い、2017年3月に笹塚センタービル(1995年竣工)を売却した。また、東京桜田ビルを解体して参画した新橋田村町地区市街地再開発事業で、日比谷フォートタワー(東京都港区)が2021年6月に竣工した。

この結果、2023年3期末時点の所有賃貸ビルは7棟(飯野ビルディング、日比谷フォートタワー、汐留芝離宮ビルディング、NS虎ノ門ビル、東京富士見ビル、飯野竹早ビル、ロンドンBRACTON HOUSE)となっている。同社にとって不動産業は長期的な視野における安定収益源の柱の1つであり、従前のターゲットエリアに指定していた都心に限定せず、今後は海外や地方にも目を向けて優良物件の獲得を目指す方針としている。2023年5月時点での不動産業の設備投資計画では、同社が参画する2023年10月に米国ダラス近郊での木造オフィスビル開発事業が、2025年8月に米国ポートランドでの再開発事業がそれぞれ竣工予定である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《SI》

 提供:フィスコ

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