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証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
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7378 アシロ

東証G
731円
前日比
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PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
203 2.66 2.93
時価総額 53.7億円

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アシロ Research Memo(3):創業時からの一貫したビジョンにより、ユーザーとクライアントのニーズをマッチング


■事業概要

アシロ<7378>が展開する事業は、リーガルメディア関連事業、HR事業、保険事業に分類される。リーガルメディア関連事業は、デジタル技術やWebマーケティングノウハウを活用し、法律・弁護士情報を提供するリーガルメディアと、弁護士への相談を検討しているユーザーが持つ派生ニーズに対応した派生メディアに区分される。HR事業は法律事務所や一般企業を対象に人材紹介を行い、保険事業は個人顧客を対象に少額短期保険(弁護士費用保険)を取り扱う。

リーガルメディア関連事業の収益は、運営するメディアサイトからの広告収入である。同事業のうち、リーガルメディアは法律事務所向けに月額定額制のストック型ビジネスモデルを、派生メディアは人材紹介会社や探偵事務所向けに成果報酬型のビジネスモデルを展開している。HR事業は、法律事務所や一般企業向けに成果報酬型ビジネスを展開している。また、保険事業は月額定額制のストック型ビジネスである。

弁護士数の増加に伴い弁護士業界は競争が激化している。法律事務所は差別化による顧客訴求が重要となり、得意分野や取り扱い分野を明確にした広告宣伝が必要となっている。同社が運営するリーガルメディアは、法律分野ごとの特化型サイトで顧客ターゲットが明確化されていることから、成約確度の高い問合せが得られやすいという特長がある。一方、メディアサイトを閲覧するユーザーにとっては、依頼を検討している法律事件分野を得意とする弁護士を効率的に探すことができる。同社の顧客基盤(2023年10月期第2四半期末時点の顧客数897件)は法律事務所全体の4.9%に留まっており、成長余地は大きい。また、弁護士報酬の市場規模は拡大基調であることから、同社は競争環境の強まりによる広告投資の増加を見込んでいる。

1. リーガルメディア関連事業
リーガルメディア関連事業は、リーガルメディアと派生メディアの2つに分類される。

(1) リーガルメディア(2023年10月期第2四半期の売上収益構成比60.1%)
リーガルメディアは法律事件分野ごとの特化型サイトを運営しており、主要顧客は法律事務所である。2023年5月でブランディングによってサイト名変更がなされた各ベンナビサイト(「ベンナビ離婚」「ベンナビ相続」「ベンナビ刑事事件」「ベンナビIT」「ベンナビ労働問題」「ベンナビ債務整理」「ベンナビ交通事故」「ベンナビ債権回収」)や、企業法務に実績のある法律事務所を検索できる「企業法務弁護士ナビ」といった特化型サイトに加え、様々な法律事件を取り扱う総合ポータル型法律メディアサイト「あなたの弁護士」を運営している。収益モデルは初期手数料と掲載料収入からなる。初期手数料は新規広告掲載時のシステム登録手数料で、1枠当たり一律5万円である。掲載料は月額定額制で、メディアサイト内の有料広告の掲載枠数に掲載枠単価(月額定額)を乗じたものである。広告出稿の一例としては、離婚分野と相続分野にそれぞれ出稿するケースや、複数地域に法律事務所を有する顧客が地域ごとに出稿するケースが挙げられる。多くのメディア運営会社のビジネスモデルが成果報酬型であるのに対して、月額定額のストック型であることが特長だ。解約率は低水準で推移している模様で、解約理由は、広告効果不良と顧客都合(法律事務所側の人員不足など)の2つが主となる。人員不足が解消された際に再契約に至るケースが数多くあるなど、顧客都合の解約には一時的な解約・掲載停止も含まれている。主要KPIは掲載枠数と顧客数(法律事務所数)である。2023年10月期第2四半期末時点の掲載枠数は2,189枠、顧客数は897件と、それぞれ前年同期比約30%増の成長を実現している。また、1顧客当たりの広告出向数は約2.4枠となっている。

リーガルメディアは、大手検索サイトを経由した自然検索によるユーザーの増減やGoogleのアルゴリズム変動の影響を多少は受けるものの、契約数は競合他社と比べてより安定的に成長している。競合他社の集客方法がSEOを基本とする自然検索の拡大であるのに対して、同社は自然検索と広告の2軸で集客しており、自然検索による集客が一時的に減少しても広告による集客で補えるからである。なお、同社の顧客単価は競合他社の2倍以上となっている。競合他社の掲載単位が弁護士個人であるのに対して、同社は広告予算を獲得しやすい法律事務所を掲載単位としていることが要因の1つと考えられる。また、競合他社が運営する総合ポータルでの弁護士検索では、ユーザーが相談したい法律分野に特化していない弁護士も検索結果に出る場合があるが、同社は法律分野ごとの特化サイトを運営しており、成約確度の高い問合せが得られやすいことも顧客単価上昇につながっている。

(2) 派生メディア(同33.6%)
派生メディアは、弁護士への相談を検討しているユーザーが持つ派生ニーズに対応したメディアサイトとして、転職メディア「キャリズム」、探偵メディア「浮気調査ナビ」「人探しの窓口」等を運営しており、主要顧客は人材紹介会社や探偵事務所となる。収益モデルは、ユーザーからの問合せ件数に応じた成果報酬型で、おおむね1~2万円程度の価格設定となっている。自然検索による流入だけでなく、ニーズが明確なユーザーを集客するためにリスティング広告にも注力している。なお、ユーザーがリーガルメディアだけではなく派生メディアもあわせて利用するよう導線を設計することで、ユーザー1人当たりのLTVが上昇し、ユーザー集客コストの負担余力を高められる仕組みとなっている。派生メディアの主力は、同事業の売上収益の約9割を占める「キャリズム」で、労働問題で悩みを抱えるユーザーに対して、弁護士への相談を促すだけでなく転職という選択肢も提供している。派生メディアの主要KPIは問合せ数で、2023年10月期第2四半期末で前年同期比48.8%増の14,237件と順調に拡大している。

2. HR事業(同4.3%)
HR事業は、2019年12月に設立した子会社の(株)trientが、翌年4月に有料職業紹介事業の許認可を取得し事業を開始した(その後、同社がtrientを吸収合併し、現在は同社にてHR事業を運営)。同社のリーガルメディアにおいて法律事務所の集客支援を行っている中で、法律事務所の人員不足が解約の1つの要因となっており、法律事務所の求人ニーズを聞く機会が多かったことが人材紹介事業を開始した経緯である。弁護士専門の転職エージェント「NO-LIMIT(ノーリミット)」では、弁護士業界に精通したコンサルタントが弁護士に特化した求人紹介から戦略的な内定獲得までを支援している。また、弁護士は、法律事務所だけでなく一般の事業会社の法務部門への転職意欲を有している場合もある。一般の事業会社の求人案件を獲得しているなかで、法務だけではなく経理・人事・総務・経営企画などの管理部門の求人ニーズを聞く機会が多くなったことを受けて、管理部門人材に特化した転職支援サイト「BEET AGENT(ビートエージェント)」、公認会計士や税理士などの士業に特化した転職エージェント「Hi-Standard(ハイスタンダード)」の運営も開始している。いずれも職種ごとの専門スキルを有したプロフェッショナル人材と、採用活動を行っている企業のピンポイントな出会いを創出している。収益モデルは成果報酬型で、成約者1人当たりの成約単価(入社者の想定年収×紹介料率)に成約率を乗じた金額が売上収益となる。主要KPIは新規登録者数で、2023年10月期第2四半期末は前年同期比71.3%増の795人と大きく成長した。

3. 保険事業(同2.0%)
2022年4月に(株)カイラス少額短期保険(現 (株)アシロ少額短期保険)を子会社化し、保険事業を開始した。費用面で弁護士に依頼できない法的弱者を救済するため、弁護士依頼費用の一部を補償対象とする「ベンナビ弁護士保険」を取り扱う。保有契約件数に月額保険料を乗じた金額が売上収益となる。アシロ少額短期保険は、開業から間もないため現時点では損益分岐点に到達しておらず、投資フェーズとなっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)

《SI》

 提供:フィスコ

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