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6458 新晃工業

東証P
3,860円
前日比
-55
-1.40%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
18.0 1.66 2.20 8.45
時価総額 1,050億円
比較される銘柄
サンデン, 
西部技研, 
日阪製
決算発表予定日

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新晃工業 Research Memo(9):5つの重点項目に取り組むなかでAHUの市場戦略を展開(2)


■新晃工業<6458>の中期経営計画

(3) 水AHUとヒートポンプAHUの市場戦略
5つの重点取組項目のなかでも主力製品である水AHUと戦略商品であるヒートポンプAHUに関しては、綿密なマーケティングによって設定した5つの重点ターゲットに、市場特性や技術要件に基づいた市場戦略を展開している。

同社がマーケットリーダーで、規模が500億円(16,500台)と推定される水AHU市場では、事務所からデータセンターまで、オーダーメイドからスタンダードまでのフルライン戦略を基本としている。このため、比較的拡張余地の大きい大型ビル向け、産業向け、データセンター向け、更新向けの4つの分野を重点ターゲットにシェア向上を目指している。設計事務所やゼネコン、サブコンへのアプローチが必要な大型ビル向けは、東京や大阪の大型再開発に案件が多く設計に時間がかかるものの、生産効率が良い。標準仕様や収まりの重視、現場工程に合わせた納期調整が求められるため、大型ビル仕様の水AHUを企画・提案するほか、3DCADによる設計や混合ライン生産を活用していく。産業向けは、景気に左右されやすく短工期だが、製造業の国内回帰とともに拡大している。特殊仕様や短納期が求められるため、オーダーメイドによる設計・生産やAI工数予測などを活用して対応していく。

データセンターは、テナントの入居に合わせた工事になるが、クラウドサービスの利用拡大やサーバーの高性能化(発熱量増加)を背景にニーズが急増している。データセンターの建設は、従来海外勢によるものが多く、しかもモジュールが一般的となったため参入するうえで難しい面もあった。しかし近年では高速大量のデータ通信ニーズや情報漏洩など運用面のメリットから、国内勢による建設も増えている。その際に大型で短納期やシステム化が求められることが多いが、そうしたニーズに対応できる企業が同社のほかにあまりなく、同社の技術力はもとより競争優位にあると言える。現在、これを生かして国内ディベロッパーへの営業を強化しているところである。海外では、海外空調機業者と比較して製品の信頼性やメンテナンス能力に優れるため、海外勢からの受注も広がりを見せているようだ。

更新向けは、今後、納入後20~30年を経過した更新需要が増加する見込みである。更新は現場の制約が多く既設メーカーが優位だが、市場を退出した他社メーカーが多いため、こちらもチャンスが広がっている。現場ごとに異なる搬入経路にあわせた設計や、バラ搬入・現地組立を求められることが多いため、新晃アトモスとの連携を強化しながら、他社メーカー製更新物件への営業を積極化していく。規模が115億円(1,850台)とされるヒートポンプAHU市場では、中小規模のビルの簡易な空調システムや、既設工場の環境改善、熱源追加・置き換えなどの需要が多い。同社はチャレンジャーのポジションにあるため、強みを持つ産業向けオーダーメイドを足場にほかの領域へ向けて市場浸透を図っている。同時に、モジュール製品の投入や熱源の置き換えが求められることから、新製品や既設製品のオプションとして、よりスタンダードな製品も開発する方針である。

(4) ESG経営の推進とSDGsへの貢献
ESG経営の推進やSDGsへの貢献も同社の重要な取り組み課題であり、社長を委員長、ESG担当役員である副社長を副委員長とするESG/CSR委員会が中心となって、社会的責任を果たすサステナビリティの実現を目指している。そのため、中期経営計画のなかで「ESG経営の推進/SDGsへの貢献」を掲げ、これまでのESG活動をマテリアリティ(重要課題)とアクションプランにまとめ、気候変動やダイバーシティなど分野ごとにPDCAサイクルを回すことで目標の達成を目指している。

気候変動への対応としては、もともと同社の水AHUは冷媒に水を使っている(フロンを使っていない)ため、環境への貢献は大きい。加えて、脱炭素を推進するため、一部製造拠点でCO2フリー電力への切り替えを完了した。ダイバーシティの推進に関しては、ダイバーシティ推進委員会を設置して活動を開始した。また、ガバナンスに関しては、過半数を独立社外取締役とする指名・報酬委員会を設置した。TCFD※については、同社はシナリオ分析に基づく事業インパクト(営業利益ベース)を情報開示している。それによれば、脱炭素社会への移行を想定する1.5℃/2℃シナリオ、経済活動を優先する4℃シナリオともに、同社の機会がリスクを上回ったということだ。このように、同社とってESG経営を推進することが、すなわち持続可能かつ安定的な収益を長期的に確保することにつながる。

※TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):気候関連財務情報開示タスクフォースのことで、企業活動における、気候変動へ与える影響についての情報開示推進を目的として作成された提言。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《NS》

 提供:フィスコ

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