貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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6098 リクルート

東証P
6,641円
前日比
+125
+1.92%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
28.9 5.25 0.35 3.42
時価総額 109,566億円
決算発表予定日

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サイジニア Research Memo(2):小売ECのデジタルマーケティングを支援


■会社概要

1. 会社概要
サイジニア<6031>は、ブランドやリテーラー※1といった小売企業のECを中心に、AI技術やビッグデータ解析技術を活用したデジタルマーケティング支援を行っている。事業領域は、DSP※2やターゲティング広告などネット広告サービス、サイト内検索やレコメンドなどCX※3改善サービス、ローカル検索最適化や店頭接客DX(Digital Transformation)などOMO※4推進サービスの3つで、顧客に有力小売企業が多いことや、小売にとって喫緊の課題であるOMOへの支援ができることを特長とする。強みは、AIやビッグデータに関する技術ノウハウと開発力、EC全般に対応する一気通貫したデジタルマーケティングサービスなどにある。現状、既存事業の収益改善やZETAの経営統合を機に、成長期入りするタイミングにあると言える。

※1 ブランドはアパレルなど自社商品(ブランド)のみを扱っている小売、リテーラーは他社商品も扱う小売またはマーケットプレイスを指す。前者の例はアパレルやSPA型小売、後者は品揃え型(編集型)小売やECモールである。
※2 DSP(Demand-Side Platform):広告主側のプラットフォームで、広告主の費用対効果を高めるサービス。
※3 CX(Customer Experience):顧客体験。商品やサービスを顧客視点で評価すること。
※4 OMO(Online Merges with Offline):オンライン(EC)とオフライン(実店舗)を融合させること。



シナジーと成長ドライバーが期待されるZETA経営統合
2. 沿革
同社は2005年、北海道大学大学院 情報科学研究科の准教授だった吉井伸一郎(よしいしんいちろう)氏によって創業された。2007年に小売のECサイト売上を拡大するサービスとしてレコメンデーションサービスを開始、その後、事業領域をネット広告分野に拡大し、レコメンデーション型のリターゲティング広告やDSP事業へと業容を広げた。2014年に東証マザーズに上場すると業容拡大のピッチは早まり、2018年にYextのパートナーとなってデジタルナレッジマネジメント事業を開始した。2020年には京セラコミュニケーションシステム(株)と共同で進めていたDSP事業のKANADEを承継するためデクワスを設立してDSP開発・運営を譲受し、2021年にはハイエンド向けCXソリューションのZETAを株式交換により完全子会社化した。なかでもZETAとの経営統合は、小売のEC事業支援という共通のフィールドで大きなシナジーが得られるだけでなく、中長期の成長に向けて弾みとなることが期待されている。同社は現在、創業者の吉井氏が代表取締役会長、ZETAの創業者である山崎徳之(やまざきのりゆき)氏が取締役社長として共同で経営を行っている。


事業領域はネット広告市場とデジタルマーケティング市場
3. 事業領域と市場
同社は事業会社3社で構成されており、同社が事業持株会社としてパーソナライズレコメンド事業やネット広告事業を展開、子会社のデクワスがDSP開発と運営を行い、ZETAがハイエンド向けCXソリューションを提供している。これを事業領域(サービス)別で見ると、潜在ユーザー層にターゲティングしてECサイトへと送客するネット広告サービス、ユーザーの購買体験を改善し購買を促進することでECサイトの売上を伸ばすCX改善サービス、ECと実店舗の垣根を無くし消費者の購買意欲を促すOMO推進サービスに分けられる。事業会社別と事業領域別の仕分けは、今後さらに整理されていくと思われる。顧客となる企業は、アダストリア<2685>や青山商事<8219>といったアパレル企業、ヤマダ電機<9831>や(株)イトーヨーカドー、SHOPLISTといったリテーラーなど小売企業が多い。昨今の小売企業はインターネットに流出する消費者を取り戻そうとEC事業を強化しているが、「ほしい商品に気づく」「ほしい商品が見つかる」「店舗へとつなげる」という小売EC事業の目的を同社のサービスがおおよそカバーしているため、同社へのニーズは日増しに強まっている。なお同社は小売以外にも例えばリクルートホールディングス<6098>向けに不動産分野のネット広告を取り扱っている。リクルート向け売上はかつて全社売上の6割ほどを占めていたが、グループ化や小売向けサービスの拡大などによって現在の構成比は半減したもようである。

同社事業の属する市場は国内インターネット広告市場とデジタルマーケティング関連ソフトウェア市場で、いずれも同社顧客が強化している国内EC市場と関連が深い。国内EC市場は、スマートフォンなどの普及を背景に成長を続けているが、足元では新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)の影響で拡大のスピードを加速させており、特に物販系分野においてオンラインシフトが進んでいる。経済産業省が発表した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2020年の物販系分野の市場規模は12兆円を超え、EC化率も8.08%となった。しかし、市場規模500兆円、EC化率18.0%という世界のEC市場から見ると、依然国内EC市場の伸びしろは大きく、国内経済の伸び悩みを横目に中長期的に成長を続けることが予測されている。

国内のインターネット広告費はコロナ禍の影響で一時的に成長が鈍化したものの、引き続き高成長が見込まれている。なかでも同社が関連する運用型ディスプレイ広告は、国内インターネット広告費の26%を占めるサービスで、国内インターネット広告費を上回る伸びを示している。将来、3PC規制※により一時的に伸び悩むことも想定されるが、EC市場の拡大を背景に中長期的に成長を継続することが予測されており、それに応じて同社も3PCに依存しないインターネット広告サービスを開発中である。デジタルマーケティング市場も、ECへの参入企業の増加やEC市場そのものの拡大に伴い、マーケティングツールの導入や周辺システムとの連携、データ統合などの需要が拡大しており、今後もさらなる市場拡大が予測されている。同社は、集客からCX改善、OMO推進まで一気通貫したサービスを提供できるため、こうした市場成長の恩恵を享受しやすい立場にいると言える。

※3PC(3rd Party Cookie)規制:3PCはウェブサイト閲覧者の行動をトラッキングできる技術で、広く普及している。しかし、ユーザーのプライバシー保護の観点から3PCの利用に制限が求められており、利用が制限された場合、多くのウェブマーケティング企業やターゲティング広告などのサービスに影響が及ぶことが懸念されている。ただし、世界的に大きなシェアを占めるウェブブラウザChromeの3PC利用停止措置が当初想定より大幅に遅れており、実施は2023年半ば以降と見られている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《ST》

 提供:フィスコ

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