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4471 三洋化成工業

東証P
4,115円
前日比
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業績
単位
100株
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時価総額 968億円
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決算発表予定日

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三洋化成 Research Memo(1):パフォーマンス・ケミカルスで社会に貢献する、ユニークな高収益企業を目指す


■要約

三洋化成工業<4471>は、社是に「企業を通じてよりよい社会を建設しよう」を掲げる化学メーカーである。様々な界面等で活躍するパフォーマンス・ケミカルス(機能化学品)を通じて、全従業員が誇りを持ち、働きがいを感じるユニークでグローバルな高収益企業に成長し、社会に貢献することを目指している。

同社は約3,000種のパフォーマンス・ケミカルスを国内外で幅広い産業向けに提供している。製品の多くを材料・添加剤等の形で提供しているため、報告セグメントは市場ドメインと連動した需要先別市場分類として、生活・健康産業関連分野、石油・輸送機産業関連分野、プラスチック・繊維産業関連分野、情報・電気電子産業関連分野、環境・住設産業関連分野他に区分している。大手総合化学メーカーとは一線を画したスペシャリティ・ケミカル企業として、潤滑油添加剤や永久帯電防止剤など独自技術をベースにした高機能・高付加価値製品の増産・拡販を推進している。また、2014年2月に同社初の医療機器となる新しいタイプの外科用止血材「マツダイト(ペットネーム:Hydrofit(R)、海外販売名:AQUABRID(R))」を発売するなど、中長期成長に向けた事業展開として、アライアンス・M&Aも活用しながら新製品開発や新分野事業化にも積極的に取り組んでいる。

1. 2024年3月期第2四半期の業績概要
2024年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比10.4%減の79,278百万円、営業利益が同46.9%減の2,020百万円、経常利益が同32.8%減の4,947百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同6.8%減の4,398百万円となり、減収減益であった。ナフサ価格が下落に転じたことや為替の円安などがプラス要因だったが、全体として需要が低迷した。特に、自動車関連や半導体・電子部品関連の高付加価値製品の販売数量が減少して売上ミックスが悪化したことに加え、固定費増加なども影響した。営業利益の前年同期比1,780百万円減の要因別増減分析を見ると、増益要因として原料価格効果が960百万円、為替効果が590百万円であった。減益要因としては、製品価格効果が730百万円、数量・商品構成効果が2,080百万円、コストダウン等が290百万円、固定費が230百万円であった。為替効果を含めた製品・原料売買バランスは合計820百万円増だが、数量・商品構成などその他要因が合計2,600百万円減となった。営業外収益では為替差益2,327百万円を計上したが、前年同期との比較では295百万円減少した。また持分法投資損益が差引601百万円悪化(前年同期は投資利益488百万円、2024年3月期第2四半期は投資損失113百万円)した。親会社株主に帰属する四半期純利益については投資有価証券売却益2,030百万円を計上したため、営業利益、経常利益に比べて減益幅が小幅に留まった。

2. 2024年3月期の業績見通し
2024年3月期の連結業績予想(2023年8月4日付で下方修正、同年11月6日付で売上高と営業利益を据え置き、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益を上方修正)は、売上高が前期比8.6%減の160,000百万円、営業利益が同38.5%減の5,000百万円、経常利益が同34.5%減の6,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同12.0%減の5,000百万円としている。前回予想(2023年8月4日付)に対して、世界経済や為替動向の不透明感を考慮して売上高と営業利益を据え置き、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益については為替差益や投資有価証券売却益を織り込み、上方修正した。自動車関連の需要が回復基調であるものの、半導体・電子部品関連の回復が鈍いため、全体として下期は需要が緩やかに回復基調となることを想定するが上期の減収影響をカバーするまでには至らず、本格回復は2025年3月期を想定している。上期の進捗率は売上高が49.5%、営業利益が40.4%、経常利益が76.1%、親会社株主に帰属する当期純利益が88.0%である。営業利益の進捗率が低水準だが、自動車関連の需要が回復基調であること、ナフサ価格が下落傾向でタイムラグ効果により売買スプレッド拡大要因となること、製造ライン再編などによる稼働率向上や生産性向上などの施策も進展していることなどを勘案すれば、通期会社予想の達成は可能だろうと弊社では考えている。

3. 成長戦略
同社は2030年のありたい姿に向けた羅針盤として、2022年3月に経営方針「WakuWaku Explosion 2030」を策定し、2023年5月には「新中期経営計画2025」を策定した。基本方針としては、事業戦略では「基盤事業からの展開」「基盤事の見直し」「グローバル展開」を、将来に向けては「新たな成長軌道」「社会課題の解決」「成長を支える仕組み」を掲げた。具体的な施策として、「基盤事業からの展開」では高付加価値製品群※1への設備投資と拡販の加速、「基盤事業の見直し」では基盤製品群※2の収益改善、「ものづくり大改革」によるサプライチェーン全体での効率化と収益改善、ウレタン事業とSAP(高吸水性樹脂)※3事業の構造改革、「グローバル展開」では海外での拡販推進を掲げている。業績目標としては、最終年度2026年3月期の売上高2,000億円、営業利益150億円を掲げている。中期成長に向けた戦略としては、独自技術やアライアンスを活用し、機能性タンパク質「シルクエラスチン(R)」、外科用止血材、アグリ・ニュートリション、匂いセンサーなどの新製品開発・新規事業創出を推進しており、今後の動向が注目される。

※1 カーボンニュートラル及びQOL(Quality of life:生活の質)の向上に貢献する注力5製品群のことで、特殊繊維用薬剤、特殊電子部品用薬剤、潤滑油添加剤、永久帯電防止剤、医療・医薬関連を指す。
※2 高付加価値製品群以外の製品群。
※3 Super Absorbent Polymer(SAP)のこと。自重の数百倍から1,000倍の水を吸収し、多少の圧力をかけても吸った水を離さない高分子材料。


■Key Points
・大手総合化学メーカーとは一線を画したスペシャリティ・ケミカル企業
・2024年3月期第2四半期は需要低迷の影響で減収減益
・2024年3月期も需要回復遅れで減収減益予想。本格回復は2025年3月期を想定
・成長戦略として、「高付加価値製品群拡販」「ものづくり大改革」「新製品開発・新規事業創出」などを推進
・2025年3月期の業績回復状況、中長期的な成長ポテンシャルに注目

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《SI》

 提供:フィスコ

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